第2話 融けた心その3
2-3 融けた心その3
俺は駆け出していた。
「麗華さん、俺もやりますよ」
麗華さんは不意をつかれたように、きょとんとした
「でも…!」
「カッコつけさせてください。俺もいるんですから」
これから俺たちは一人じゃない。
みんなで戦っていくんだ。
「麗華さん、もう一度攻撃してください!」
「ええ、わかった」
なにかあるはず…あのレイピアが砕けた理由が。
「何度やっても同じだぜ?」
再び絶対障壁に阻まれて、レイピアはバラバラに砕け散る。
「まだまだ‼︎」
続いて再生成した氷で攻めたてる麗華さん。
しかし、まるで予見したように手を動かして、絶対障壁はレイピアを阻む。
「くっ…」
「氷の魔法か…確かに強力だが、消耗も激しいだろう…」
…?なぜ手を動かす必要があるんだ?
「覚えておけ。強力な魔法は、その魔力と引き換えに持続力が弱い。いつまでも使いっぱないしってわけにはいかねぇのさ」
消耗…
‼︎まさか…!
「麗華さん、わかりました」
「え?」
「俺が右から、菊池さんに触れて電気を流します。麗華さんは左から、甲冑で防御しつつ攻撃してください」
「?わ、わかった」
「なんだぁー?こそこそとよぉー」
「行きます‼︎」
同時に駆け出した二人。
狙いに気づいたのか、菊池さんの眼つきが変わる。
「ちっ、これでもくらえ‼︎」
菊池の手から投げられた4つの銀色の玉。
あれは…
バシィィン
麗華さんのレイピアが割れたときのようなあの音が響いた。
おそらく絶対障壁の音。
それと同時に、隣で鈍く何が砕けた音がした。
「パチンコ玉ならぬ“パチンコ弾”だ」
パチンコ玉を、絶対障壁の反射で高速で打ち出したのだった。
麗華さんのレイピアも、反射の能力で破壊されたに違いない。
麗華さんの甲冑は直撃弾を受けた。
それでも、前進をやめない。
「なに⁉︎」
そう、わかっていた。
菊池さんが確実に麗華さんを狙うことを。
あらかじめ甲冑を装備させたのはそのため。
おそらくあの絶対障壁は、あの掌から。
あの大きさの一枚だけしか生成できない。
麗華さんと俺が同時にくれば、まだ能力がわからない俺より、確実に来るレイピアの一撃を潰そうと菊池さんならするだろうと俺は踏んだ。
そして、読みは的中した‼︎
「氷の甲冑は、割れることで衝撃を吸収する。一点に対する物理攻撃なら効かない!」
再生成される氷の甲冑に気づき、再びパチンコ弾を発射させようとポケットに手を入れる。
そして、そこまで迫った柚月が目に入った。
「くっ…!」
蹴りをかまそうと突き出してきた脚を、抱え込む。
「なに⁉︎」
そう、菊池さんは俺の能力をまだ知らない。
ショック死しなきゃいいけど…
抱え込んだ脚へ、全身から目一杯の電流を流し込む。
「!!!!!あぁぁぁぁべべべぁあわぁ!!!!!」
突然の電撃で吹っ飛んだ彼は、路地裏のアスファルトの上でのたうちまわっている。
「麗華さんのおかげです」
彼女の方を向いてそう言うと、彼女も笑顔でこう返した。
「…ええ、こちらこそ!」
菊池芽衣 戦闘不能
浅間柚月&氷室麗華 コンビネーションで勝利
これで2話は終了です。次回3話に続きます。