表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エンジェリック・マジシャン  作者: べべ
目覚め編
5/35

第2話 融けた心その2

2–2 融けた心その2


「…まだかな…」

初夏の陽射しが体を照らす。

白いワンピースがヒラヒラと花弁のように揺らめく。

「ごめんなさい!待たせてしまって」

「もう、柚月くん!…仕方ないなぁ」


いつもと違う彼女の後ろ姿は、とても美しく絵本から出てきた姫君のようだった。

靡く髪が視線を揺らし、心を引く。

「昨日、じいちゃんと何してたんです?」

「…私の記憶を見てもらったの」

「!そんなことが⁉︎」

「えぇ、おじいさんによると、まだハッキリ見える訳ではないけれど、私の探している能力者について見てもらったのよ」

「そ、それで」

「まだ、ぼんやりとしかわからないって。ただ、背格好からして学生くらいだと…」

「学生…ですか」

「ええ、また見てもらうわ。私も、頑張らなきゃ……」

「……」

「ここよね?おじいさんの言ってた場所」

「はい、入ってみましょう」

そこは、草木に覆われた古家屋だった。

「ごめんください、篠宮さん?」

「あら、柚月君…話は聞いてるわ。入って」

相変わらず独特な雰囲気だ。

「早速だけど、二人に話すことがあるわ」

昼間なのに薄暗い家だ…

「例の犯人、とは限らないけれど、この町には私たち以外にも能力者はいる」

「‼︎…」

この町には、一体何があるっていうんだ?

「殺人犯について…よ」

殺人犯がこの町に〝いる〟

そして自分達が標的になりかねないという事実。

だが、それを止めることができるのは自分達しかいないのも事実だ。

「私の知り合いに情報屋をやっている奴がいるのだけど、彼によれば、新たな能力者の情報が入ってきたらしいの」

「能力者…」

「えぇ、先日、指定暴力団のあるオフィスが襲われた」

ここら辺のヤクザといえば、近所の暴走族からチンピラを牛耳る奴らだ。

たまにニュースでも取り沙汰されている。

「けど、そんなの抗争とかじゃ…」

「抗争ね…拳銃の弾丸約8発を受けて、12人の組員を10数分の内に惨殺、挽き肉にされていた」

「っ…‼︎」

「これは能力者による犯行だと、私達は目星をつけたの。二人には会っておいてほしいの」

「わかりました、麗華さん大丈夫ですか?」

「うん、大丈夫よ」

「真妃瑠さん、案内してもらえますか?」

「いいけど、私は会いたくないわ」

「え?」

「嫌いなのよ、あいつ」

「まぁいいんじゃない?私達二人で」

「は、はい…」

少し麗華さんがムッとした。

「じゃあ、行きましょうか」

外はまだ日差しが強い。

元気すぎる太陽を恨めしく思いながら、篠宮宅を後にした。




商店街のはずれにある、薄暗い路地裏。

細い日光が刺しこむ通路に、パーカーを着た男が壁を背に立っていた。

「桜、菊」

男は静かに呟いた。

「蓮、篠」

真妃瑠さんの言っていた合言葉。

意味はわからなくても、聞かれたら答えろと聞いていた。

「お前らが真妃瑠の言ってた能力者か」

「はい、菊地芽依きくちめいさんですよね」

「ああ、同じ能力者なら互いに知り合っていた方がいいと思ってな」

スッとこちらを向き、誰何するような目でこちらを見た。

「浅間柚月と言います、彼女は…」

「氷室麗華です。よろしくお願いします」

無言のまま、彼は両の手をポケットから差し出した。

左手での握手は違和感がある…

そう思った矢先。

「今からお前らを試してやる。能力者であるかぎり、お前らの能力も知っておきたい」

「試す…?」

「そうだなぁ…俺を一歩でもここから動かしてみろ。それができたら、例の事件現場に連れてってやる」

微妙な距離から差し出された手は、握手ではなかったようだ。

掌をこちらに向けている。

つまり、なんらかの予備動作。

もしくはそれ自体が…

「どうします、麗華さん」

「やるしかないでしょう、こう言っているんだから」

「二人同時でもいいんだぜ?俺は」

その発言に、麗華さんがピクッとなったのを俺は見た。

「一人じゃなきゃ…意味がないでしょう。私から行くわ、柚月くんは下がって」

やはり麗華さんは、責任感が強い。

しかし、それでは俺がいる意味がないような…

「嬢ちゃんからかい…女だからって手加減するとでも…」

「始め」

「え?」

始め、の声と同時に駆け出す麗華さん。

菊池さんは遅れて反応していた。

「ちょ、ま」

氷のレイピアで麗華さんが突きを繰り出す。

そう、不可能だ。

あの麗華さんの攻撃を、動かずに受けきるだなんて。

避けなければまず、傷を負う。

「なーんてね」

「⁉︎」

パリィンと、氷が砕ける音が響いた。

麗華さんは、ポカーンとして、折れた氷を再生成することも忘れている感じだった。

「一体何を…」

「レイピアねぇ…なかなかいいんじゃないの。俺には効かないけど」

レイピアが菊池さんの目前まで迫った瞬間、何かに阻まれてレイピアは砕けた。

菊池さんが手を前に突き出す。

今度は顔の正面だ。

「絶対障壁。これが俺の能力さ」

掌から半透明の正五角形の板のようなものが現れた。

「さぁ、来いよ。〝二人とも〟」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ