第11話 センリツその1
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センリツその1
「はぁ、はぁ、たしかにここなのかよ!?」
駆けながら大声で問う。
「ええ、たしかにこの先にあの魔力の奔流の痕跡があるわ」
非常階段を登りながら芽衣は不吉なオーラを感じとっていた。
あの扉を見た時と同じような心を包み冷たく染み込んでくるような感覚。
これが真妃瑠の言う魔力の奔流というやつか…。
嫌な予感、とでも言える。
「ここか…!!」
階段を登りきって、風の中を見た。
まず目に飛び込んできたのは、血溜まりの上に横たわる老人だった。
足が止まる。
「…じじい…?」
芽衣が立ち竦んでいる間に真妃瑠が駆け寄り、手を触れた。
「法之さんは私の能力を受けるのは初めて…だから…。きっと、きっと助かる…」
声が震えている。
真妃瑠の能力は、使う度に効果が薄くなる。
与える生命力が弱まってしまい、何度も使うと傷を治すのは困難になってしまう。
「それにしたって…この状況は…!」
ひしゃげた手摺。
ひび割れたコンクリート。
明らかに、激しい戦闘があったことを感じさせる。
しかしおかしい。
「じじいのやつ、どうやって…何と戦っていやがったんだ!?」
「どう考えてもあの男しかいないわよ!」
手から魔力を放ちながら焦燥の眼差しで法之を見つめる真妃瑠。
彼女の顔には普段の落ち着きがまったく失せていた。
「扉を狙う、敵ってわけか!?にしたって、敵とわざわざここに来るのは変だろ!?なんの連絡も無しに!」
「わからないわよ!とにかく、法之さんに聞くしかない!」
芽衣には、もう一つの疑念があった。
明らかに、激しい戦闘の痕がある。
一方的な攻撃だけで、ここまでの破壊が起こるだろうか。
それに、じじいが倒れていた場所以外からも血痕が見て取れる。
つまり敵も、多少のダメージを負っているはず。
ならば何故?じじいの魔法は記憶を操る能力のはず。
「隠していた…能力…?」
「法之さん!!わかりますか!?真妃瑠です!しっかりして!!」
真妃瑠が叫ぶ。
法之の体に傷は無く、呻きながらも目を薄く開きはじめた。
「おい、じじい!!」
「ぉ…まえ…たち…」
それだけ言うと再び目を閉じ倒れ込んだ。
「じじい!!」
「大丈夫、おそらく気絶しているだけだから。それよりも、早く家に行って柚月くんに知らせなくては」
「お、おう」
法之を抱えて起こすと、絶対障壁を蹴りつけた勢いで飛び上がり、空を飛んでいく。
真妃瑠もツタを手摺に絡ませながら、植物で足場を組んで駆けていく。
夜の空なら、目立たずに飛んでいけるだろう。
連続して空中に浮かべた絶対障壁を足場にしながら蹴りつける。
スカイウォークしながら法之の呼吸を確認し、安堵とぬぐいきれない不安を胸に、柚月の元へと2人は飛んだ。
「おいおい…まじかよ?」
両腕を下げた牡丹を見て、男が訝しい目をする。
「何があったの?あなたが…ここまでの傷を?」
黒い髪の女が、これも怪訝そうな表情で問うた。
「…やられたよ。正直必死だった」
「タイマンでやるこたぁなかったのに。オレでも連れてきゃここまではなんなかったろ」
「…だろうな。でも、あの場で決意したんだよ。ビショップは堕ちた。もう駒は四つしかない」
ゆっくり腰を下ろすと、虚ろな目で埃が舞う宙を見つめる。
「…てことは…もう退けねぇな」
「ああ」
「私達は、行くとこまで行くしかない。最初からそうでしょ?」
「そうだな…。あと、少しだ。そうすれば…」
残る駒は、あと四つ。
チェックメイトは目前へと迫る。
次回に続きます。




