第10話 光芒その1
10−1 光芒その1
「色々…聞かせて欲しいんだけどさ」
そう切り出すと、真未ちゃんはまるで当たり前のように依然として同じ席に腰を下ろした。
「そうだね、色々と」
食器の洗い物はまだだが、どうせじいちゃんの分もあるしなぁ。
そう思いつつ、目の前に目線を戻す。
ぱっちりとした二重まぶたは相変わらず。
ボブカットの髪の毛も特に荒れている様子はない。
「どうして急にいなくなったんだよ、三週間も」
「うーんとね、実はユズ君のおばあちゃんのところでお世話になってたの」
「ばあちゃん家で?」
「うん、私は最初反対したんだけどね。危険じゃないかって」
黙って頷く。
「でも、おじいさんが安心しろ、もうじきに隠れる必要もなくなるって」
「必要ない?」
「扉のことね。扉を守る必要も、もうすぐなくなるって言ってたの」
「私は最初意味がわからなかったし、教えてもくれなかったんだけどさ」
「うん?」
「敵を叩く。ってことじゃないのかな」
敵を叩く…。
彼女の口から発せられる敵という言葉は重みがある。
そう感じた。
「あくまで、推測だけど。いい加減、このまま好きにさせとくわけにはいかないでしょ」
強い口調で、彼女は続けた。
「扉を狙う者たちと、直接対決に移る。だから隠れる必要はない、そういうことじゃないのかな」
意志の強い目に、僕は惹かれるように魅入ってしまった。
咄嗟に目をそらした僕を軽く揶揄う彼女。
「とにかく、俺はじいちゃんからなんも聞かされてなかったからさ、びっくりで。多分じいちゃんも2人揃ってから詳しくこと話すつもりだったんだろう」
「そうか、今おじいさんどうしてるの?」
「真美ちゃんを探すって言ってけど、おっせぇなぁ」
やっぱ、おでん温めなくて正解だったかな。
仕事が終わり、やっとのこと帰路に着くことができた。
篠宮真妃瑠は1人夜の街を歩いていた。
時間帯的にまだ賑やかな街を外れ、少し落ち着いた雰囲気の歩道を進む。
まばらに流れていく人々の中に、見知った顔を視界の端に見た。
「…あれは…」
法之さん…と?
スーツに身を包んだ長身の男。
私の知らない顔だ。
友人の類にも見えない。
隣の老人とはかけ離れた空気に違和感を感じた刹那、それが別のものだと知った。
魔力の奔流だ。
法之さんとは違う、あの男からだった。
それも、肌を刺すような…まるで〝幻魔の扉〟のように鋭く重たく、まとわりつくような嫌悪感がある。
咄嗟に、身体を向けていた。
ポケットに手を入れ、スマホを取る。
こういうとき、あの自称〝情報屋〟を頼ってみるか。
仕事の疲れも忘れ、真妃瑠は目の前の目標を追いかけた。
次回に続きます!




