第9話 扉の鍵その1
9−1 扉の鍵その1
「おい…いつまで待たせんだ」
男は男に問うた。
「…〝ルーク〟のことか?」
読んでいる本から目を離さず、口だけを動かして応えた。
「あぁそれと!!扉の座標だ…!」
「座標がわかっていれば苦労はしないさ…それを探っているのはお前もわかっているだろう?」
「ケッ…あんなん信用できんのかよ…」
乱暴に腰をかけると、今度は本を読んでいた男が立ち上がった。
「…彼は我々の味方だ。それに私は、彼を私情を殺して任務に就くことが出来る人物と評価している」
「そうかい…。んで、ルークの件は?」
「…頃合い…と見るかな」
腰を掛けた男はハッ!と笑う。
「んなら俺に行かせろよ。どうせクイーンもナイトも行く気はねぇだろうが」
「私が行ってもいいのだが?」
「キング様はそこで読書してな。そういう仕事は俺のもんだ」
「ふっ…。だが、もう当てはある。悪いな」
「当て?」
「座標と共に、土産を待とうか」
ーーー
「うぅむ…?」
ボヤつく視界がゆっくり晴れると、刺激の暖かい蛍光灯の光が見えた。
「ここは…保健…室?」
「起きたかしら」
シャッとカーテンを開けたのはブロンドの女の子。
クララだ。
「えっと…確か…俺は鬼ごっこを…」
そうだ。
何故か彼女と鬼ごっこしていた途中から記憶がない。
「…あなたったら、急に意識を失って倒れるんだもの。びっくりしたわ」
「急に…倒れた?」
「ええそうよ」
「柚月君たら、もう大丈夫?」
「麗華さん。大丈夫ですけど…本当に俺…」
この部屋に先生はいないらしい。
「今は無理しないで。座標のことなら大丈夫」
そうだった。
大事なことを忘れていた。
「そうだ!クララ、扉のことだけど…」
「安心して、心配いらないわ。私も、あなた達に協力することに決めたから」
「なんだって?いいのか、鬼ごっこは…」
「彼女が示してくれたわ。なにより、今は事を急ぐのでしょう?」
「あ、あぁ」
だったら最初からやるなよ、とも思う。
「柚月君、今日は一度家に帰ろう?雨も上がったみたいだし、また後日情報を共有してからの方がいいと思うの」
麗華さんが手を貸してくれて、ベッドから起き上がる。
なんだか、筋肉痛の様な鈍い痛みがする。
「そう…ですね。クララもそれでいいのか?」
「ええ、構わないわ」
外を見ると、雲の切れ目にまだ薄い夕日が漏れている。
確かに雨は上がっているようだ。
「じゃあ、また」
「ええ」
こうして俺たちは、帰路に着いた。
長いようで短いような1日は閉じた。
次回に続きます。




