第8話 降臨その3
8–3 降臨その3
今の柚月の魔力は恐ろしいまでに高まっている。
直撃だけは避けなくてはならない。
「まったく…なんなのよ…」
能力の相性で言えばクララが有利。
水の攻撃を直撃させれば、恐らく柚月の体に蓄積されている電気が放電すると考えた。
水飛沫を上げながら距離を詰めて行く。
「正気に戻って!!」
柚月の手から雷が放たれる。
「んんっ!!!」
まるでレーザー砲の様な雷撃。
水をシールドの様に噴射してそれをかき消す。
「やはり、威力が落ちてる…魔力も底無しじゃないってことね」
反撃と言わんばかりに水の弾丸を撃ち込む。
「当たった!」
効いている。
明らかにダメージは通った。
「くッ…」
よろけて体勢を崩した。
「くらぇえええ!!」
右腕を前に突き出し、左手で支える。
次の瞬間、高圧の激流が発射された。
「…」
柚月もそれに対応するように手を伸ばし、抑え込む。
ジリジリと押され、地面が削られる。
「クッ…!!!」
堪らず弾かれ、後ろへ吹っ飛んでいく。
「やった…?」
直撃、電気は分散したはず…!
倒れた柚月に近づいた刹那、クララの視神経はその光を捉えた。
「!!しまっ…!!」
柚月の体が眩く輝く。
まるで爆発のような衝撃と閃光。
地雷に雷でも落ちたようだった。
とてつもない衝撃で辺りの水溜りが蒸発した。
シュウウウ…
「危なかった…」
完全にアウトだった。
足元には雷の跡というより、隕石のクレーターのように抉られた地面があった。
「あの放電を喰らったら、完全にあたしは…」
身が震えた。
恐ろしい程の底知れない魔力だった。
しかし、今はもう感じられない。
「…」
乾いた泥を踏みながらゆっくり近づいていく。
柚月は安らかな寝顔を晒していた。
眠ってるのか?
「さっきのは、明らかに落雷による魔力の暴走だけじゃない…なにか別なものが”現れた”ように見えた…」
「浅間柚月…とても興味深いわ」
恐らく彼の今の不思議な力。
きっと”幻魔の扉”に関係しているに違いない。
「くっ…ゲホッゲホッ…」
泥から起き上がった麗華は辛うじてダメージはないようだ。
「大丈夫?彼はもう大人しくなったわ」
「そう…一体これはどういうことなの?あれは確かに柚月君ではなかった…」
「ええ、私もとても興味がある…だからあなたにも来てほしいわ」
「…どこに?」
「教えてあげる。扉の座標を」
次回に続きます




