第7話 幻魔の扉その3
7−3 幻魔の扉その3
雨はパラパラと降っている。
水溜りはグランドには無く、薄い雲から日光が透けている。
傘は…いいかな。
麗華さんに報告に行く。
つもりだったが、やめた。
彼女…クララに説明もしてないし、よく考えたら麗華さんのクラスを知らない。
「おまたせ、どうしてここに?」
「まってないわ。それは、私の能力に関係するの」
「能力?」
まだ聞いていないかった、彼女の能力。
当然彼女も能力者の筈だ。
「そう、扉についての話よね?その前に一つ条件があるわ」
「条件?」
「シュリュッセル家には代々、扉は力を認めた者にしか語ることは許されない。という決まりがあってね」
な、なにぃ〜⁉︎
おい、聞いてないぞ。
「私に力を示してくれるかしら?能力者としての」
力を示すと言ったって…
何をすれば?
「どうしたらいいんだ?」
「そうねぇ…鬼ごっこ…っていうのはどう?」
「鬼ごっこ⁉︎」
「日本では、ポピュラーなゲームなのでしょう?」
「ま、まぁ…」
高校生がやってるのはあまりみないけど。
「あなたが私に触れることができればあなたの勝ちよ」
「わかった」
「じゃあ…よーい…」
「ちょっとまて!どうしたらクララの勝ちなんだ?」
「…そうね…。“あなたが追えなくなったら“かしら?」
ほーう。
足には自信があるってか。
「いいね。始めよう」
「よーい……ドン!!」
距離は約3メートル。
女子に追いつくなんて訳ない。
「訳ないって…思った?」
「何⁉︎」
瞬間、冷たい感覚が身体中を襲った。
「つめたっ!!」
これは…水?
「今のは…!」
「私の能力。水を操ることができる能力。もちろん、これだけじゃないわよ?」
彼女の手から、水が発射された様に見えた。
なるほど、雨の中なら、この能力は威力も増すって訳か。
「最初から手の内を見せるのは賢くないね。これは“鬼ごっこ“だろ?」
「ええそうよ。捕まえられるもんなら捕まえてみなさいな」
泥を跳ねながらグランドを疾走する。
雨脚は少しずつ強くなっている。
「いつまで、追ってられるかしら?」
思いの外、速い。
華奢な体からは想像つかない程機敏に、翻弄するかの様に駆けていく。
泥の跳ね返りも気にせず走るのも意外だ。
「さて、どうしようかな」
普通に追っても、彼女は能力を使って守るだろう。
なら、こちらも能力を使うしかない。
「追うだけじゃ、捕まえられないよ!」
水の弾丸がこちらに迫る。
「くっ…」
なかなか効くな…
だが…!
「この雨の中、能力が活きるのはこっちも一緒だ!」
足を止めて、掌を地面に押し当てる。
「ちょっとだけ痛いぞ」
地面の水に向かって電撃を放つ。
「⁉︎足が!」
動きが止まった!
「痺れたぁ……けど、まだまだ!」
周囲の水溜りが吸い寄せられていく。
大きな水球が浮遊し、更に肥大していく。
「おいおい…これは鬼ごっこじゃねーのか…」
「えい!!」
流石に、躱せないか。
直撃を覚悟したその時。
水球はその形のまま地面に落下した。
「え?」
「これは…凍ってる…?」
「まったく…」
聞き覚えのある透き通る声。
「事情説明して。柚月くん」
「れ、麗華さん⁉︎」




