第6話 アフターケアは丁重にその1
6–1 アフターケアは丁重にその1
「んむ…いい朝」
いつも通りの朝だ。
昨日は…色々散々だったな。
朝は麗華さんと街を歩き、午後は戦闘…。
「今日が月曜日ってだけで、軽くキツイのによ。まいるな」
勉強机の鞄を手に取り、階段を降りる。
「じいちゃん、おはよう」
「おお、ユズ。今日は早いな」
「今日も、な。先週からずっとだよ」
しかし、今日はいつもと違うことが一つある。
「昨日からずっと起きていたみたいでな…」
「…」
寡黙に座る彼女。
もう長らく座る人間がいなかった椅子に、誰かが座っているだけでも新鮮だ。
「自分の名前も思い出せないとなるとな…行くあてもないようだし…彼女がよければここに居てもらうのが一番じゃろ」
「そりゃ…そうだけど…」
もうちょっと配慮はねぇのか、俺に。
いきなり年頃の女の子と同じ一つ屋根の下に暮らすと言われても、はいそーですかって言えるもんじゃないだろう…
それに俺は女の子に対する免疫力はほぼゼロだ。
真剣な思いを伝えるときに相手からの目を気にしないのは同じでも、日常生活、会話となれば話は別。
「いいのかよ、彼女に聞かなくて勝手に」
「あたしは、なるべく迷惑はかけたくないけれど…もし居させてくれるならば…お世話になりたい…です」
ええー…
「だ、そうだ。何よりもうそれは昨晩決めたことじゃろうが」
うっ…く、くそ。
「そうだけどさ…」
「…柚月さんは…あたしのこと…迷惑ですか?…迷惑ですよね…怪我までさせてしまったし…」
「い、いえ!全然大丈夫ですよ!!!」
やれやれ。
抵抗はあっても、仕方ないよな…
彼女だって、被害者だ。 確かに彼女はあのオフィスを襲った犯人だとしても、それを責めるのは酷だ。
彼女の精神に漬け込み、利用した人間。
そいつこそが…本当の…
「ユズ、実はなぁ」
少し間が空いて、味噌汁に手を伸ばしたそのときだった。
「わし、少し用事ができてしまってな…」
「ん?用事?」
「うむ…ばぁさんが軽い風邪をひいたみたいでな。本人は大丈夫と言っていたが、拗らすと大変だ。歳だからな」
「そうか…それで?」
「ばぁさんが治るまで、看病しに行くことになった」
ブフォッ
味噌汁を衝撃のあまり吹く。
「きゅ、急すぎやしないか」
「仕方ないだろう。ばぁさんは一人暮らしだしな」
「くっ…」
なんてことだ。まさか同棲一日目から2人きりになるとは…
しかし、俺は今日から学校。
残念ながら彼女には一人でオルスバンしてもらうぜ。
「あと、今日学校に休みの連絡をしておいた」
今度こそはと持った味噌汁を股間にひっくり返す。
「はぁー、アッツォアアアォ!!!!」
「さっきから行儀が悪いぞユズ」
「なんてことを‼︎なんでだよ⁉︎」
「お前は骨折患者だろうが。今日は休んで病院へいけ」
クソがぁぁ…!
「ごめんなさい…あたしのせいで」
「ええ⁉︎気にしないでよ‼︎」
くっ、顔を見ると責めれないっ…!
「しっかり療養するようにな」
このジジイ!
浅間柚月、憂鬱な一日開始…
今回から第6話です。
少しギャグ強め?になっております。




