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エンジェリック・マジシャン  作者: べべ
不死身の少女編
13/35

第4話 彼岸花その4

4–4 彼岸花その4


氷のレイピアが、白すぎるまでの少女の喉元に迫った。

「動かないで、大人しくすれば危害は加えないわ」

少女は「?」と首を傾げ、キョトンとした。

「動かないでって言ってるのよ。あなたの喉を突くぐらい、簡単に…」

少女は自分のその喉を、自らレイピアに顔を近づけ突き刺した。

「⁉︎」

「なにをするの⁉︎」

咄嗟にレイピアを引き抜く麗華さん。

凍った傷口から一筋の鮮血が流れ、黒い返り血で所々が染みたセーラー服に赤い印をつける。

「やっぱり…そんなに……効かない」

コホッ とまるで軽く咳き込むように血を吹き、喉元を撫でた彼女。

俺と麗華さんは、様々な念が脳を駆け巡りただただ驚愕し、言葉を発せなかった。


撫でた喉元は、まるで何事も無かったかのように再生している。

「そんな⁉︎ばかな⁉︎」

あの威圧感だ。

全てを突き刺す眼光。

「…」

無言で顔を見据える少女。

「うっ…うぁぁァァァあ!!」

半ば号哭しているにも近い絶叫で麗華さんはレイピアを少女の腹部へと突き刺す。

「…死なないよ…不死身だから」

そう一言発すると、「んんっ」と腹筋をねじり、氷のレイピアが根本から折れた。

「……‼︎そん…な…」

腹部から剣を抜き出し、その血みどろの氷柱を地面へと叩きつける。

「麗華さん!!!」

「くっ‼︎」

迫る拳を緊急生成したレイピアでパリィする。

パキィンと弾きぶつかり合う音が響き渡る。

しかし、切られた拳を物ともせず、連続でラッシュをかける少女。

「追いつかないッ…!」

遅かった。

「!!!」

レイピアを再生成するより速く、

横っ腹へのハイキック。

かつて俺が麗華さんに対してやったときとは比べ物にならない。

重みのある一撃の、甲冑ごと骨を叩き潰す生々しい音が聞こえた。

「うぐ…っ…が…」

そのまま横に倒れる麗華さん。

「麗華さん…ッ‼︎」

声が霞む。

腕が震える。


化け物なんだ、こいつは


「麗華さん!!しっかりしてくだ…」


う る さ い

刹那、少女の姿が目前に迫る。

この距離、約3メートル近くを一瞬のうちに詰められた。

しまったッ‼︎


外から聞く鈍い音ではない。

完全に内側から骨が折れる音を聞いた


「か…はッ…!」

1〜2m吹っ飛び、コンクリートの壁に激突した。

「…クソったれ…」

ゆっくりと一歩ずつ近づいてきた少女の足が、頭を踏みつけた。

口に込み上がる血を吐き出す。

「…消えろ…消えちゃえばいいんだ…」

「なん…だと…?」


いい加減…にしろよ



少女の足がコンクリートの地面にヒビを入れた。

上体を逸らして躱し、顔面に蹴りをぶち込む。

「うぉぁら!!」

瞬間、足が止まる。

硬い

顔面に蹴りを食らいつつ、なおも表情を変えない。

「けど、それで止めたつもりかッ」

直接触れた状態からの、電流。

バチバチとした青白い閃光が迸る。

「…くっ!!」

身を翻し、立ち上がる。

目を焦がした。

治すのに何秒あるか。

関係ない。

次の一撃を叩き込むのみッ!!

「うおおぉッ!!」

その瞬間。

「⁉︎」

一旦距離を取り、ハイキックを繰り出した。

間一髪、頭上をかすめる。

潰したのは片目だけかッ…!

「痛い…痛いよ…」

呟きながら拳が来る。

止めるか?ダメだ、砕かれるッ


「くっ…!!」

スウェーっで躱す

が、少女は腰を横に折って強引に蹴りを放つ。

まずい、避けられないッ!!



少女の攻撃は、またしてもコンクリートを直撃した。


「な…に…?」

「柚月く…ん…から…離れて…!」

さっきの砕けたレイピアの剣先。

そこから薄い氷が広がり…少女の足まで届いていた。

「滑ったのか…⁉︎」

滑って体制を崩した少女。

腰を折った反動で、立ち直るには時間がかかるッ!

今しかない!


右の手から目一杯の電流を流し込む。


éclair


全力放電だ、全身全霊の。


「ぅう…がッ…」


少女は口を開いたまま倒れこむと、シュウシュウと煙を立てた。


浅間柚月、氷室麗華。

骨折多数の怪我を負うも勝利。


謎の少女。

全身に電撃を浴びて気絶。

これで第4話は終了です。

次回、第5話に続きます。

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