『#物書きのみんな自分の文体でカップ焼きそばの作り方書こうよ』追加パターン
『#物書きのみんな自分の文体でカップ焼きそばの作り方書こうよ』便乗作品です。
上記の企画とは関係ありません。
女の子バージョンです。
ショートショートです。
超テンプレです。
意外と長くなってしまったのと、ちょっと毛色が違うので別投稿にしました。
これとは別の3パターン+おまけを投稿しております。
くぅとお腹が鳴ってしまいました。
「っ――!!」
恥ずかしさのあまり、顔が真っ赤になってしまいます。
目の前には、憧れの先輩がいるというのに、ああ、もうこんな食い意地の張った姿を見られるなんて、嫌われてしまったらもう生きていけません……。
「何だお前、腹へってんのか」
同級生の男の子がわたしをからかうように言ってきます。
あんまりにも大きな声でいうものですから、驚いてしまって、キッと非難するように睨んだのでした。
他の人に聞かれたらどうするんですか……。
腹ぺこの女なんて噂が流れたら辛すぎます。
「僕、カップ焼きそばなら持っていますよ!」
後輩の男の子が、通学用のリュックの中から取りだしたのでした。
ああ、気を遣わせてごめんなさい。
相変わらず、くりくりとした可愛らしい瞳をしています。小動物みたいで、いつまでも眺めていられます。眼福です。
「なんだ、カップ焼きそばかよ……」
「何ですか先輩。購買も閉まっている時間に何か代わりの物が用意出来るっていうんですか?」
「はぁ、俺はただ、こんなしけたもんを喰わせるのかって言っているんだよ」
ああ、喧嘩が始まってしまいました……。
わたしのお腹なんかのせいで……。
同級生はちょっと怖いのです。
茶髪もそうですが、ちょっと鋭い眼も、筋肉質な身体も怖いのです。
そしてわたしのやることなすことに文句を言ってくるのです。
「まあ、そんなこと言わないで。ほら、仲良くしよう」
先輩はとっても優しいです。
柔らかい髪が、ふるふると揺れています。
穏やかで、頭が良くて、部活でもわたしのことを助けてくれる、そんな憧れの先輩なのです。
「ちっ、つってもよー」
「ほら、焼きそばなら僕も持っているから」
先輩はそう言うと、カップ麺を三つ取り出したのでした。先輩の鞄にはいろいろな物が詰まっています。とてもそんな容量がないと思うのですが。謎です。
「あの、わたしなんかのために先輩の貴重な食料を減らさなくても良いんですよ」
「そんなに卑下しないで。ほら、お腹が空いてると悲しい気持ちになったり、怒りっぽくなるから。みんなで食べよう」
「せ、先輩……」
ちょっとだけ、みんなの気持ちがひとつになった気がしました。
「あ、なら僕がお湯を沸かしてきますよ」
「お前だけで大丈夫か? ママがいないと何にも出来ないんじゃないか?」
「は? 先輩とは違うんですよ」
「何だと!? それなら、俺の湯沸かしスキルを見せてやろうか!」
「上等です!!」
湯を沸かすのに、技術もなにもいらないと思うのですが……。
食堂の給湯室へと競い合うようにして向かっていきました。
「じゃあ、僕は箸を取ってくるよ……」
「そんな、そこまでして頂くなんて悪いですよ! わたしが取りに行きます!」
「ん、でも、お腹空いているんでしょう。待ってて」
そんな甘い声で囁かれてしまったらどうしようもありません。
わたしは、借りてきた猫のように大人しく待つことにしたのでした。
そうこうしているうちに湯が沸いたのでした。
内線までなみなみ湯を注がれるシーンを見せられると、こう、意地汚い気持ちが込み上がってくるのでした。
「おい」
「え、なに?」
「お前の湯、捨ててきてやるって言ってんだよ!」
「え、自分で……」
「はっ、こないだそれで火傷しただろう。俺がやってやるつってんだから、大人しく”はい”って言えばいいんだよ」
「う、うん」
「そんな言い方しなくてもいいじゃないですか! 相変わらず先輩はがさつですね!」
「ふふふ。みんな仲が良いんだね」
そんなやり取りをしながら、わたしたちは昼からはまだ早い食事を取るのでした……。
くぅ――。
「ぅっ――…………!!」
「ほら、先輩がごちゃごちゃ言うから」
「俺のせいだって言うのかよ!」
「はい、この箸を使って」
空気の読めないお腹の音なのでした。
読んで下さってありがとうございました。