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最凶チート殺しの英雄迷宮  作者: 神楽 佐官
第二章 黒水晶のダンジョン編 邪神・大松清明
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041 『俺たち最強伝説』

 アルブレヒトとトーライム卿は唖然としている。

「そんなの社会が許さないだろう」

 やっとのことでアルブレヒトが口を開いた。


「お兄さまとは血がつながっていないので問題ないのですわ。私はもともと孤児だったのを父上に拾ってもらったのですわ」

 と、リウィアは哀しげに言った。

「しかし、理解できない。どうして君がライトゲープ伯と結婚することと魔人武道会で優勝することがつながるんだ?」

「あたし、お兄さまに求婚しましたの」


「なんだって……」

 驚いて二の句も継げないとはまさにこの事。

「そうしたらこの魔人武道会で優勝すれば考えると仰ったのよ」

「ユリウスの奴、とんでもないことを言いおった」


 呆れたようにトーライム卿が言った。


「きっと断ろうにも断れずにそんなことを口走ったのじゃろう」

「まさか……」

「どうする? このじゃじゃ馬と一緒に冒険するつもりか?」

「彼女がそれを望んでいる様子なので」



 ※



 というわけで、リウィアとともに迷宮を潜ることになった。

「言っておきますが」

 いきなり振り向いて、アルブレヒトを指差した。


「あたしの足手まといになることは許しませんことよ」

 はいはい、とアルブレヒトは辟易した表情で答えた。


「ついでに倒れることも。あなたはあたしが決勝で倒すのよ」

 はい、そうですか、としか答えようがない。


(魔女の次は格闘家か……)


「あなた、私を|梟の瞳≪アウル・アイ≫で強さを測ろうとしているでしょう?」

 と、釘をさす。

「最初に言っておきますわ。私のレベルはだいたい200から250ってところですわ」


 その言葉が本当なら相当強い。

 あのヴァンパイアロードのイサキオスとも一対一で戦えるほどの強さである。


「でも、レベルだけで強さがはかれるとは限りませんわ」

 一般的にレベルの差が倍までは、

(必ず勝てるとは限らない……)


 強くても気を抜けばやられる。


 それに一般的に、魔術師は大多数同士の戦いには強いが、

(一対一の闘いにはむかない)

 と言われている。


 武道士の戦闘には特徴がある。

 敏捷性の追求、である。

 武器もなければ鎧もない。

 攻撃力も防御力も戦士に劣る。


 だが、身軽な分先手が取りやすい。


 逆に魔術師は近接戦闘が大変に難しい。

 魔術師の魔術は人間とは思えぬほどの力を得る。

 一般的に近づかれたら終わりである。

 アルブレヒトにこれだけ態度が大きいのは、必ず勝てるという自信があるからだ。


 もちろんアルブレヒトの身体がオリハルコンでできているなどということは知らない。

「ん?」


 二つの集団が戦っている。


 双方ともその数は六人ほど。

 傍目にはどっちが出場者だかわからない。

 だが、アルブレヒトにはわかった。


 出場者に見覚えがあった。

(あれは……)

 王子、と呼ばれた人物である。


 お互いに統制は取れている。

 その剣捌きは見事に尽きる。


 女教官もいた。長い金髪を振り乱しながら戦っているが、こちらも見事なものだ。

「放っておきましょう」


 酷薄ともいえる口調でリウィアが言った。


「振りかかる火の粉は自分で払いやがれですわ」


 戦況をみると王子たちの方が優勢である。

 これはおそらく勝つだろう。


 だが……。

「いけませんわ」

 リヴィアはすぐに前言をひるがえした。


「すぐに彼らを助けなければいけません」

「なぜ?」

「あなたみたいな一般庶民には縁がないでしょうけど、あれはジェームズ王子ですわ! どうしてこんなところに……」

 王子と呼んだのを覚えているが、

(まさか本当に王子だったとは……)

「パルニスの同盟国エセルリアの王子ですわ! こんな場所で怪我をしたら大変ですわ……」


 疾風のごとき速さでリウィアが動いた。


 速度が命の武道士である。


 敵の戦士に拳を叩き込む。


 みしり、と、イヤな音がした。 

 戦士は鼻血を出して、

「ぐうう……」

 と、倒れる。


 残りの五人もあっという間に片付けた。

 武勇に自信があるだけにたいしたものである。


「王子ご無事ですか?」

 

 よく見るとジェームズ王子以外、彼の味方の五名はすべて女性であった。


 ――文字通り、ハーレムであった。 


「王子、お久しぶりです」

 リウィアはその場に片膝をついて頭を下げた。



 しかし、アルブレヒトはジェームズ王子には見向きもしなかった。

 アバラを押さえてもがき苦しんでいる冒険者たちに近寄って腰を下ろした。


「大松清明について聞きたい」

「し、知らない……」

「そんな話は通らない。君たちの頭領だろう?」

「本当に会ってないんだから」


 魔術師は痛みに顔を歪ませながら答えた。

 嘘をついているようには見えなかった。


「俺たちは入団テストの最中なんだ。たら『俺たち最強伝説』に入れるって……」

「『俺たち最強伝説』?」

「大陸最強のギルドだよ。あんたは知らないのか?」


 大松清明がつくったギルドについては蜷川仁太から聞いている。

(ふざけた名前だ)

 怒りさえ覚えてくる。

(あの男らしいといえば、あの男らしい……)


「それに俺たちは入団希望者だ。まだ正式な団員じゃねえんだ……」

「正式な団員は、どれだけの数がいるんだ?」

「それもまだ……」

「何も聞かされていないんだな? 正式な団員はどこにいる?」

「主力は八十階より下さ……。そんなことよりも助けてくれ……」

「俺たちは君らを殺す気はないよ」


「そうじゃないんだ。『俺たち最強伝説』から助けてほしいんだ?」

「なに……?」

「この試験は失敗したら死ぬしかないんだ。敵に負けたら『殺す』だと伝えられている」


「そんな無謀な試験、よく受けたな?」

「この世知辛い世の中、生きていくんだって大変なんだ。単なる冒険者じゃ食っていけないのさ。『俺たち最強伝説』みたいな強大なギルドに所属するしか生きていく道はないんだ」

「大丈夫。そのふざけた名前のギルドは今日で壊滅する」

 冒険者たちはまじまじとアルブレヒトを見た。

「そんな馬鹿なことできるのか……」

「そのつもりだ」

「そうなったら俺たちは死なずにすむが……」

「じゃあ、そうなるよう地上で祈っていてくれ。いまから呪文で脱出させるから遠くへ逃げるといい」



 |逃走の翼≪エスケープ・ウイング≫で入団者たちを脱出させようとした。

 が、途中で詠唱を止めた。

「ダメだ」

 アルブレヒトは首を横に振った。

「結界が張られている。きっと大松清明の仕業だろう」

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