表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最凶チート殺しの英雄迷宮  作者: 神楽 佐官
第一部『最凶チート殺しの内臓迷宮』迷宮編 第一章 不知火凶からアルブレヒトへ
21/54

021 美しすぎる少年

 その少年の髪は栗色の巻毛だった。

 カリアナよりもすこし背が小さかった。

 天使のように美しい。

 惚れ惚れするほどの美貌で、女性たちはしばらく言葉を失った。


「ねえ、こんなところで何をしているの?」


 少年は、ひどく怯えていたが、カリアナが声をかけると、味方がきたと思って、

「うわああん!」

 カリアナに抱きついた。

 突然のことにカリアナはびっくりしたが、

「吸血鬼に襲われて……。怖くて……」

「落ち着いて」

 カリアナが少年の巻き毛の髪を撫でた。

 やさしいお姉さんがいて、巻毛の少年も安心した様子だった。


「それにしても綺麗な子だね」

 フアナはまじまじと見た。

「見ていて吸い込まれるような美しさだよ。こんなにかわいい子を見たことがないよ」


 しかし、フアナはどうも腑に落ちない様子だった。


「あんたみたいな子供がどうしてここに?」

「僕も出場者なんです」

 フアナが呆れた顔をした。

「なんであんたみたいな子供がこんな危険な場所にいるわけ?」

「僕、お父さんが冒険者なんです」


 それを聞いたフアナは、

「だから着ているものがいいんだね」

「どういうこと?」

「見てごらんよ。これは絹の服だよ。上等で高価な代物さ。冒険者でうまくいけば儲かるよ。王侯貴族のような生活だって送れるさ。だからみんな命をかけて戦うのさ」


「でも、お父さんいなくなっちゃったんです」

 子供は急に沈んだ顔をして、

「冒険に出かけたきり、帰ってこなくなったんです。ギルドに問い合わせてわからないって……。僕が有名になれば、お父さんの居所がわかるかもしれないと思って……」


 そう言って、少年はうつむいてしまった。


「お父さんがいなくなって何年になるんだい?」

「三年です」

「それだけ経っても帰ってこないってことは、もうとっくに死んでいるんじゃないの? あるいは他に女を作ったか……」

「お母さん!」

 カリアナが怒鳴った。

 巻毛の少年は目に涙を浮かべていた。


「可哀相……」

 カリアナは少年の頭を撫でた。


「だからって、一角獣だけで吸血鬼と渡り合えるわけないよ! さっさと帰った方がいいわよ」

「ねえ、この子を一緒に連れていくことはできないの?」

 ねだるように カリアナは言った。

「予選通過者は人数制限ないでしょう? 全員通過したってかまわないわけでしょう?」

「そりゃ、そうだけど……」

「ねえ、あんたはどう思う? こんな子供が迷宮を歩くなんて危ないと思わない?」


 フアナはアルブレヒトに話を振った。


「受付の人は止めなかったの?」

「受付の人も心配そうだったよ。でも、僕が事情を説明したら『頑張って』といって認めてくれたんだ」



 十歳の少年の参加をよく認めたものだと思う。

 いちおう魔人武道会に出場資格はない。

 誰でも参加できる。

 だが、

(こんな子が戦えるわけがない……)

 というのは誰の目から見ても明白なのだ。



 しかし、それを言ってしまえばカリアナは十三歳だ。


「カリアナの場合はどうだったんだ?」

「あたしたちは魔女だからね。普通のお子様とは違うんだよ」

 フアナが口をはさむ。

「それを言ったら僕だってユニコーンがいるし……」


 ユニコーンは見た目よりも凶暴だ。

 穢れなき者にはおとなしいユニコーンだが、そうでない者は容赦なく頭の角で突き殺すという。


「でも、ユニコーンって吸血鬼よりも強いのかい?」

 少年は黙った。

 吸血鬼に勝てなかったから、こうして泣いているわけだ。

「たぶん、あいつらは怖がらせて楽しんでいるのさ。殺そうと思えたら殺せたんだ。考えてごらんよ。吸血鬼にかかったら、ユニコーンなんてとても太刀打ちできないだろう?」

「その点については俺も同意しますが」

「奥にはもっと恐ろしい怪物だっているんだよ? やっぱり帰らせた方が身のためじゃないのかい?」


「べつに連れて行ってもいいんじゃないのかい?」

 と言ったのは意外にも女砲兵だった。


「あんた、決勝進出者は一人でも少ないほうがいいだろう?」

「それはあくまでも強い奴の話」

 と、砲術士は言った。


「ユニコーン連れの子供なんか怖くないさ。レイウォン王に父親を探してくれっていうのも健気じゃないか。親子の絆は大事だよ」

「でも、食べ物はどうするんだい?」


 フアナはなおも食い下がる。

「僕、小食ですから」

 と、言った。


「もらった三日間の食事だけで十分です。皆さんで分けてもらって結構ですから」

 女砲兵は、フアナの顔色を窺うように見た。

 ここまで言われて、

「わかったわよ。好きにしなさい」

「よかったね」

 子供は心から嬉しそうな顔をした。


 だが、フアナは渋い表情をしている。

「あたしは反対したことをよく覚えておくんだよ」

「その子供が嫌いなのか?」

「違うのさ。その子が美しすぎるのが問題さ」

「……なんで?」

「あたしたち魔女の世界では、美しすぎるものは不幸を招くといわれているのさ。この子は綺麗すぎるんだよ。災いを呼ぶかもしれない」

読んでいただいてありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ