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最凶チート殺しの英雄迷宮  作者: 神楽 佐官
第一部『最凶チート殺しの内臓迷宮』迷宮編 第一章 不知火凶からアルブレヒトへ
15/54

015 大会委員長トーライム卿登場

 クロエがやってきた。

 アルブレヒトとパピルザクの目が合った。


 そのパピルザクの顔が、以前不知火凶の近所にあった

(愛想の悪いコンビニの店長そっくり……)

 なのだ。


 アルブレヒトは嫌な気分になった。

「パピルザクと会うのは初めてですよね。かわいいでしょ」

「こ、これが、かわいい……?」

「そうです。愛嬌があって」

「ふうん……。それよりもどうしてここへ? 君も出場するの?」

「とんでもない! あたしは魔人武道会は好きじゃないと言っていたじゃないですか。商売ですよ」

「商売?」

「飲まず食わずで生きていけるアルブレヒトくんには関係のない話ですよ。えへへ……」

 クロエはにこにこと無邪気に笑っている。

「それよりもさっきの子は誰ですか?」

 母親と一緒に出場する魔女だと説明すると、

「へえ……」

 なんともいえない複雑な表情をうかべた。

「気になるの?」

「いや、何でもないですよ。えへへ……。おや、そろそろ大会が始まるみたいですね」



 トーライム卿が、迷宮の入り口の前に設置された壇上に上がっていた。

「よくぞ集まってくれた!」

 野太い声が響きわたる。

 数百人もの参加者たちの視線がトーライム卿に集まった。

 トーライム卿は壇上から一同を見回す。

「うむ」

 トーライム卿はうなずいた。

「いい顔をしとる」

 じつに満足そうだった。

「魔人武道会は二回目となるが、前回よりもはるかに大変だぞ。諸君らの検討を祈る」


「張り切ってますよね。トーライム卿」

 クロエが壇上のトーライム卿を指差した。

「トーライム卿はこの大会に人生かけてますから」


「パルニスって、個人の武勇では最強だって言われていると聞いたけど?」

「でもトーラム卿が言うには『昔はこんなもんじゃなかった』そうです。父王のときは訓練がいまとは比較にならないほど厳しかったらしいですよ。十人に一人は死ぬと言われるほどの厳しい訓練だったそうです。レイウォン王が止めさせたんですが」


「ルールは簡単じゃ。最下層まで降りたら予選通過じゃ」

 だが、選手の一部からざわめきの声が上がった。

「十階までじゃないないのですかな?」

 参加者の一人が訊ねた。

 金色の鎧に大盾、金槌を装備している大男だった。

「誰がそんなことを言ったか知らんが、百階まであるのにそれを使わんわけにはいくまい」

「しかし、レイウォン王には十階しか使わないと言ったはずだ!」

 トーライム卿は、金色の鎧の男を睨んだ。

「それは貴様の知ったことではない」

 トーライム卿は素っ気ない態度だ。

「たしかにレイウォン王にはそう言った。しかし、予定を変更した。せっかくの巨大迷宮じゃ。全部使わんというわけにはいくまい」

「黒水晶の迷宮は最下層まで歩くと五日かかるんだぜ……」

 黒水晶の迷宮はたいへん巨大で、一日で一番下の階まで行けるものではない。迷宮の中は奥に行けば奥に行くほどピラミッド状に広がっていく。

 もともと黒水晶の迷宮は邪神が住んでいた。

 レイウォンの父王が自ら軍を率いて討伐に当たった。

 その数、五千。

 怪物を退治しにいくような数の軍勢ではない。

 国家を相手にするような大軍だ。

 そのうち三割が死んだ。

 この戦いで、とくに活躍したのがトーライム卿である。

 三十年も前の話である。

「何の準備もなしに迷宮に入れば飢えてしまうだろう。あとで食料を渡す」

「武器は?」

「各自が持ち込んだものでかまわん。武器のない者には用意してある」

 親衛隊が武器の入った大きな袋を何個を引きずってきた。

「武器は好きなものを渡す。剣も槍も斧も弓矢もある。どれでも好きなものを持っていけ」

 参加者たちが袋の中の中身を見る。

 たしかにトーライム卿の言うとおり、様々な武器が入っている。

 しかし……。

 剣を手にとってみると重い。

「これ、ひょっとして真剣?」

「当然じゃろ。真剣じゃなかったら使い物にならん。ああ、矢はその中には入っとらん。欲しかったら係に言ってくれ」

「……刃は潰してないのか?」

「そんなことしたら斬れんじゃろうが」

 皆、トーライム卿の言葉に戦慄した。

 前回の魔人武道会では、死傷者が出るほど激しいものだったと聞いている。 

 しかし、武器はすべて木の剣だった。

 審判もいた。

 戦闘は模擬戦闘だった。

 だが……。

「これでは俺たちに冒険者の仕事をしろと言っているのと同じではないか?」

「それこそが今回の予選の目的だ」

 死ぬかもしれない、という生易しい話ではなかった。

 実戦である。

 確実に死人がでる。

 

 ※


(うわぁ……。これはこれは)

 不知火凶は苦い顔をした。

「まさか、迷宮に潜り込むとは思わなかったな」

 漫画では、こういう話をよく読んだ。

 しかし、一つだけ決定的に違うところがある。

 それは迷宮探索をするアルブレヒトこと不知火凶自身が、『迷宮』であることだ。

「皮肉だよな。『迷宮』にされた俺が、迷宮探索するなんて……」

 読んでいただいてありがとうございました。

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