王女への夢
魔族が宣戦布告してきたのは大会の時でしたわ。
どこから情報がいったのかわかりませんが魔族の四天王が勇者様を狙ってきたのです。
しかし勇者様は見事野蛮な魔族を退けたのです!
その時のお姿は今でも目に焼き付いていますの。
魔族との戦争は苛烈なモノでしたわ…。
勇者様は我が国の帝(とても強い戦闘職の人)達を一部引き連れ見事下賤な魔王を倒してくださいました。
そうそう、加えてとても素敵な報告もあったのです!
一緒に召喚された勇者様のおまけが此度の戦いで死んだのですわ。
あの屑は何かと私たちに無礼なことばかりしていましたからね。
これは天罰というものでしょう。
いい気味ですわ。
「御綺麗ですよ姫様。」
「ふふ。そうかしら。」
私は純白の花嫁衣装をまとっている自分を鏡に映しました。
そこには幸せそうに立たずむ花嫁の姿。
そう、私は今日勇者様と結婚するのです。
そして勇者様はいずれこの国の王となるのですわ。
残念ながら元学友であった公爵令嬢たちも側室として入ることになるのですが…。
所詮側室。
私は正室にしてこの国の王妃。
何より勇者様は私に言ったのです。
『僕は…王女様。君が好きです』
頬を染め、そう言って下さったのですから結婚後も私への寵愛は確かでしょう。
私達は大勢の国民と貴族に祝福され結婚したのです。
それから二年が過ぎました。
私に子ができないまま。
ついにある日、側室…ナーシャに子ができたと。
勇者様自ら嬉しそうに報告してくださいましたわ。
そして言うのです。
子に名を付けてくれと。
それは最上級の祝福仕方であり、正式に王族の第一子と認めること。
それが男子ならいづれ王になるでしょう。
今後私に男子ができても、先に生まれる子を蹴落とさなければ王にはなれませんわ。
二人だけでと約束していた食事にナーシャを同伴させ、そんなことをいわれましたわ。
その時のナーシャの勝ち誇った顔といったら。
好きなのは、私ではないのですか?
いつも代わりに仕事に追われているのは私ですよ?
その夜、私は影に頼んでナーシャの子を殺すように言いましたの。
思い返せばいつもずるがしこく、勇者様に取り入ろうとしていたナーシャ。
きっと今回もそうなのですわ。嫌な女。
もっと早く王から遠ざけるべきでしたね。
いいえ。学生の頃、他の令嬢たちごとなんとかすべきでした。
私は王女なのでしたから、きっと出来たはずですから。
影がいなくなった王妃の部屋で一人、あの頃へ戻れたら…と涙を流しました。
「王女様、朝ですよ。」
「ぁ…あら?」
いつものように侍女に起こされる。
「寝ぼけておいでですか?学校に遅れますよ?」
夢、だったのね。
なら私はまだ間に合うのでしょうか。