異色コンビの出会い
深夜、とある商店街の外れの公園で真っ白のプロレスマスクを付けた巨漢の怪し男がひたすら樹を揺らし続けていた。
「君〜ちょっと良いかな〜」
偶然通りかかった、警官がこれぞとばかりに声を掛ける。所謂、職務質問である。
男はビクッと体を震わせ警官の方を向く。
「な、何でしょう…」
彼は怯えたように答え、後頭部を掻きながら警官に近付いて行った。
「お兄さん、そんな変なカッコして何やってんの?」
巨漢の男は木の上に座っている猫を指差しながら。
「猫が降りれなくなっちゃったみたいで…」
警官は一瞬、不思議そうな顔をして頭の中で何かを理解したように笑って。
「あ〜君が噂のヒーロー、Mr.ホワイトスカジャン?」
「え、噂って程でも…」
怪し男改めて、Mr.ホワイトスカジャンは嬉し恥ずかしそうに頬を緩めた。しかしマスクの下の笑顔など警官には分かるはずもなく変な人である。
「いや〜私はこの街に来たばかりでね、いろんな人から君の事を聴くんだよ、街のヒーローだって!」
警官はまるで街でバッタリ有名人に会った子供の様にMr.ホワイトスカジャンを見つめた。
「それで、今日は猫を助けるのかい?」
「ええ、でも僕の体で樹に登れば折れるし揺らしてたんですよ」
Mr.ホワイトスカジャンは困り果てていた。街のヒーローと言っても、商店街のお年寄りが運べそうもない荷物を手伝ったり、大学でストーカー被害にあっている女生徒を警護したりと力仕事などが主である為、器用な事は本当は専門外なのだ。
「なら私が手伝おう、僕の体なら登っても問題ないだろう」
三十代後半に見える痩せた警官は、制服の袖を捲り樹に登り始めた。
警官は猫を捕まえ、腕に抱きながらゆっくりと樹を下って、最後は綺麗にジャンプで着地した。
「ほれ、救出完了だ」
猫はミャーと一回鳴くと何処かへ走って行ってしまった。
「すみません、ありがとうございました。」
「いーや、気にする事ないよ!私だって街のヒーローでありたいからね!」
そう言うと警官は自転車に跨り行ってしまった。