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EP.8 ギルドで絡まれるのはテンプレだよね

 ある日のこと、アリス達と依頼を受ける為にギルドに来ると、おじさん2人に絡まれた。 

 片方はゴツいハゲ……いや、スキンヘッドのおっさんで、もう片方はチャラくて語尾がッスとかつけてそうなシーフのおっさんだ。


「おいおい、こんなガキが冒険者だって?」

「うっわ」


 ホントにいるんだ、こんなテンプレ冒険者。


「オイオイ死んだわアイツ等」

「『陽焔の雷華』のこと知らないのかよ」

「あぁ、アイツ等よそ者だもんな」


 言いたい放題だなあっちの冒険者たち。

 確か僕が初めて来た時に百合がどうのこうので言い争ってた人達か。


「あ゙? 俺達はBランクの『血狼の戦刃』だぞ? テメエ等みたいなガキと女程度ボコボコに出来るんだからな?」


 荒れてるなぁ。

 それにしても、Bランクなのか……。

 それなら……。


「まあまあ落ち着いて。ほら、一杯どうです? 何かあったんでしょう? 悩みがあるなら聞きますから、グイっと、ね?」

「悩みがあるだぁ? なんでそう思った」

「Bランクからは試験があると聞いたので。実力だけでなく礼儀とかも見られるらしいですね」

「あぁ、お貴族様と関わることも増えるからッスね……」

「そのBランクが何の理由もなく女性2人と子供1人に絡むほど粗暴とは考えにくいので、何かあったのではと」


 それにしてもこんな荒れるって一体何があったんだ。

 ギルドのルールとか無視して決闘とかせずに殴りかかってきそうな勢いだったよ?

 なんならアリス達の殺気に全く気づいてないし。

 Bランクとは思えない最低の振る舞いだ。


「そうだとしてなんでお前に……」

「僕たちは赤の他人です。だからこそ話しやすいこともあるでしょう? ほらお兄ちゃん達、酒を飲んで口を軽くしちゃってください」


 そうして彼らを言いくるめてお酌をする。

 そして酒に酔わせ、悩みを聞いてあげた。

 『どしたん話聞こか? 応用編』だ。

 アリスとハーレンは不満そうだったが、なんとか説得した。

 アリスとか魔力練ってたし。

 2人とも好戦的過ぎる。

 今度何か埋め合わせしないとね。

 何がいいだろうか。

 そんなことを考えながら話を聞く。

 そして、お悩み相談が一時間も経ったころには、


「う゛う゛っ、お゛ま゛え゛、い゛い゛や゛つ゛た゛な゛ぁ゛」

「あ゛り゛か゛と゛う゛っス゛!」


 という風に号泣されてしまった。

 絵面が酷い。

 ごついおっさんたちが少女にしか見えない子どもにお酌してもらいながら号泣してるんだよねこれ。

 普通にキツくない?


「ところで、この町へは何しに?」


 なんとか2人を泣き止まし、質問をしてみることにした。

 僕だってただ悩みを解決するだけじゃない。

 何かいい情報が得られないか、試してみないと。


「あぁ、護衛依頼でな。商人をこの町へ連れて来たんだ」

「へぇ、商人を」

「ただ……あの商人、変人だったなぁ」

「っすね。ずっとフード被ってましたし。今思えば、顔が思い出せないですし、認識阻害でも付与されてたんッスかね」

「かなりやり手の商人なんだろうよ。信用第一の商人で、あんな怪しい恰好してるのにもかかわらず、認識阻害が付与されたローブが買えるんだからな」

「それかお忍びでやって来たお貴族様かだな」


 そういうのって信頼できる騎士とかを冒険者に変装させるものなんじゃないの?


「まあ、普通はそうなんだろう。でもたまーに護衛依頼をだす人もいるんだよ。理由は知らねぇし、知る気もねぇがな」

「深入りしてもいいことないッスからね」


 まあ、普通じゃないってことは、何かしら訳ありなんだろうし。

 確かに深入りしていいことはないか。

 貴族の闇とか巻き込まれたら普通に消されそうだし。


「絡んで悪かったッスね。お陰でスッキリしたッス。あっしはトラスって言うッス」

「すまねぇな、迷惑かけて。俺はバゲッジだ。もし何かあったら、俺達『血狼の戦刃』が協力すると誓おう。これでもBランクパーティーだからな、ガンガン頼ってくれ」

「はい! その時はよろしくお願いしますね! あっ僕はライです」

「口が上手いわね、貴方……」

「商人目指した方がいいのではないか?」


 まあ伊達にハーレム作ってないよ。

 言いくるめと説得とAPPには自信があります。


「まあ一番は、彼らがいい人だからだよ」


 そう、これが上手くいったのはあくまでこの人達が偶々荒れてただけの善良な冒険者だったからだ。

 これが純粋に粗暴な集団だったら、こうはならなかっただろう。

 そうなったらもう暴力しかない。

 アリス達はAランクだし、周囲の被害を出さずに何とか出来るだろうけど、そもそもの話暴力沙汰なんて起きない方がいいに決まってる。

 平和主義なのだ、僕は。

 某ゲームでは不殺ルートしかしてないしね。


 でも、有益な情報は集められなかったな。

 貴族だったら僕には関係ない話だし、商人でもそうそう関わることはないだろう。

 認識阻害がある以上、探しても見つけられないだろうし。

 あ、でも2人には関係あったりするのかな?

 Aランクだと貴族と関わることも多いらしいし。


「まあ、それなりに有益ではあると思うわよ」

「そもそも、情報なんていつ役に立つか分からない。自分には関係ないと思っていても、意外なところで役に立つかもしれないぞ?」


 それもそっか。

 確かに、今有益じゃないからってこの先もそうとは限らないよね。

 蓮にも言われてたのに、忘れるところだった。


「それにしても、これだけ口が回るならさぞモテるだろうな……」

「彼女が沢山いるって言ってたけど、何人いるの?」

「21人だよ」


 僕がそう言うと、みんなが凍り付いたように固まる。

 まあ、当然の反応だね。

 元の世界じゃ周囲の人が慣れて何も言われなくなってたから、この反応は懐かしく感じる。


「……?」

「馬鹿じゃないの? 本当に馬鹿じゃないの?」

「えっと……21股ッスか?」

「言っておくけど浮気じゃないよ? 僕は浮気とか大嫌いなんだ。ちゃんと全員納得してるし……なんならみんなの方がノリノリで僕にハーレム構築させようとしてるから」

「なぁ、それはどこまで進んでるんだ?」

「それはもう深ーい繋がりが。全員抱いたよ」


 そう言えば全員まとめて抱き潰してからだっけ、みんながハーレム拡大に積極的になったの。

 もともと星歌とか一部の彼女達は惚れさせたなら責任とってガンガン彼女増やしていけみたいなスタンスだったけど、あの夜以来全員が乗り気になった。

 全員抱き潰してなお元気な僕を見たからかな?


「えぇ……?」

「可愛い顔してやってることえげつないわね」

「最近の子どもはマセてんだな……」


 マセてるとかそういう問題かな?

 これも全て星歌の洗の……調きょ……教育の賜物だよ。

 僕が積極的になるまで、主人公が中々手を出さないせいで寝取られる系NTR同人誌を無理矢理読ませられ続けたからね。

 あれのせいで脳が粉々にされた。

 元々地雷ではあったけど、あれ以来浮気だの寝取られだの聞く度に怒りが抑えられなくなる。


 僕を浮気相手にしようとしてラブホに無理矢理連れ込んできた女子に16時間説教してその子の彼氏にドン引きされたこともあるし。

 でもそのお陰でその子は心の底から反省出来たし彼氏にも許してもらえたらしいし、結果的にはよかったのかな。

 いやよくないか。

 16時間拘束とか正気の沙汰じゃなかったね。

 間違ってもそこまで仲の良くない相手で拘束していい時間じゃない。

 そらドン引きされるよ。

 初対面でラブホに拉致ってきたあの子も大概だけどね。

 まさか僕があっさりと引きずられる馬鹿力を持ってるとは思わなかった。


 よくよく考えたら現代日本でハーレム作ろうとか思うようになったのも星歌が原因だ。

 僕の今の人格はほとんど星歌によって形成されている。

 まあそれ程前の僕が酷かったっていうのもあるけど。

 あの時、逆光源氏で強制高校デビューさせられなかったら今頃どうなっていたことか……想像もしたくない。


 星歌は僕の彼女達の中でトップクラスに愛が重い方だ。

 星歌曰く、『蕾死す時それすなわち私死す時』らしいからね。

 僕が死んだらホントにノータイムで自害しそうなの止めて欲しい。

 確かに僕は死んだ後も一生想い続けて欲しいとは思ってるけどね、後追いして欲しいとは思ってないの。

 元の世界ならそうそう死なないから問題なかったけど、この世界は命の価値が軽いから大変だ。

 命が72個あってよかったよ。


「というか、やっぱこの世界でもおかしいのか」

「一夫多妻自体は珍しくないわよ? 貴族とかやり手の商人とかは妾がいることが多いわね」

「複数人に好かれる魅力があって、それを養える甲斐性もあるってことだからな」

「だから一度ハーレムが出来ると人数が増えやすいっていうのは聞きますッスね。でも多くても5、6人程度ッスよ。現実的に考えてそれ以上は養えないッスからね。子どもを産み育てるならなおさらっス」

「21人なんてそれこそ王族ぐらいのものだ」

「つまり……?」

「「「「ライはおかしい」」」」


 そんな声を揃えて言わなくても……。

 否定は出来ないけど。


「というか今更気づいたが、この2人『陽焔の雷華』じゃねえか」


 ホントに今更過ぎるね。


「え? ホントっスか?」

「ええ、そうよ?」

「気づくのが遅すぎないか?」

「マジで俺達何やってんだ。Aランクの中でも上位の2人に喧嘩売ってんじゃねえか」


 うん、ホントに何をやってると言いたいレベルだった。

 Bランクである2人が実力差を見抜けないはずがないんだからね。


「ライの兄貴がいなかったらホントにあっし達終わってたんじゃないっスか?」

「ライに感謝するのだな」

「私たち、基本的に売られた喧嘩は買うタイプだからねぇ」


 アリス達って結構血気盛んなんだよね。

 あと根に持つタイプだから絶対敵に回したくない。


 それから会話の内容は雑談へと移行し、日が暮れる頃に解散した。


「時間とらせて悪かった。本当にありがとな」

「また会いましょうっス!」

「はい! また今度!」


 2人に手を振り、酒場を出るまで見送った。


「今日はごめんなさい、依頼を受ける予定だったのに」

「いいわよ、別に。悪いのは絡んで来た彼らの方だし、貴方のやり方の方が良いのは確かだしね」

「うむ、平和主義なのはとても好ましい。まあ、私たちにあのやり方は出来ないしする気もないのだがな」

「そう言ってもらえると嬉しいよ。でも、やっぱり何か埋め合わせしたいな」

「そうねぇ……なら1つ、ライに提案があるの」

「提案?」

「アイドルとして働いてみない?」


【真名】金換(カネカエ)(レン)

天職(クラス)錬成賢者(クラフト・セージ)

【性別】女性

【身長/体重】171cm/41kg

【属性】混沌・善

【特技】交渉、鑑定、詐欺

【趣味】投資、AIチャット

【好きなもの】お金では買えないもの

【嫌いなもの】すぐ騙される人間、浪費

【苦手なもの】親

【備考】

がめつい守銭奴系女子。

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