EP.19 3人との模擬戦
盗賊退治から帰ってきた僕達は、盗賊に囚われていた女性を夢魔族の店に引き渡した後、ギルドの裏手にある闘技場へ向かった。
そこでイザベラ、ルル、クリスの実力を測るため、模擬戦をすることにした。
「まずは君たちの強さを見せて貰おうか」
自分自身にいくつかデバフをかけ、身体能力をBランク程度に制限した。
「来たれ、『不死なる怪物の黄金剣』!」
イザベラが自身の体から黄金の剣を取り出す。
そしてルルとクリスに隠れるように、一歩後ろに下がった。
「銀腕励起! 『偽典・輝ける光の銀腕』の力、見せてやるぜ!」
「魔装励起。限定展開、『Type:Gatling Gun』」
ルルの義手が光り輝き、蒸気が噴き出る。
それと同時にクリスの手元に重厚なガトリング砲が展開された。
うーん、やっぱり世界観おかしくない?
いや、どちらも魔力を感じるし魔導技術の結晶なのは理解しているんだけど、それはそれとしてして外見が完全にスチームパンクとSFなんだけど。
まあ教団の拠点もSFチックだったから今更なんだけどね。
「行くぞオラァ! 『灼拳』!」
「撃て!」
炎を纏った拳による連撃と、大量の銃弾が入り交じる。
槍を回転させ銃弾を弾きながら、ルルの攻撃を受け流していく。
この銃弾、一発一発が重い。
ガトリングというよりスナイパーライフルだ。
そうとう魔力籠められてるね。
弾くのも一苦労だよ。
そうして2人の連携により少しづつ追いつめられていく。
「換装『Type:Bazooka』」
「『弾薙』!」
クリスのガトリングがバズーカに変形する。
彼女が引き金を引くと、轟音が鳴り響く。
同時に僕は足を一歩踏み出し、槍を横に薙いだ。
「ぬぉっ!」
穂先と弾がぶつかり合う。
その瞬間、凄まじい爆発が起きた。
衝撃波が闘技場全体を揺らす。
爆風が吹き荒れ、砂埃が舞い上がった。
「『掌底』!」
砂埃で視界を遮られた所に、不意打ちで掌打を叩き込まれた。
「『蒸気駆動・煌輝掌打』!」
「っ!?」
掌打に併せ、掌から光が放たれる。
掌から放たれたそれは衝撃波となり僕を吹き飛ばした。
「喰らいやがれ! 『蒸気駆動・煌輝光線』」
「『瞬歩』!」
追い打ちをかけるように、ルルの掌から放たれた閃光が僕を撃ち抜かんとする。
闘気を足に集中させ、加速することでギリギリの所で回避した。
これは光属性の……。
成る程、アガートラムはケルト神話の神、ヌアザの異名。
そしてヌアザは輝ける剣や光の剣を意味するクラウ・ソラスの担い手。
だからこれにも光属性の魔術式が刻まれているのだろう。
蒸気駆動、という名前から察するに、蒸気機関により魔術を増幅する機構も組み込まれている。
「教団製の義手かい? それ。この世界にも蒸気機関があるとは思わなかったよ」
「へへっ、逃げる時に腕斬られちまったからな。かっぱらってきたんだよ。ま、その時に充填されてたエネルギーを使い果たしたから自前の魔力で扱える程度に制限されてるんだけどな」
ああ、あれだけの技術力を持つ教団から、巫女という最重要ともいえる立場の人間が無事に逃げ出せるのかと疑問に思ってたけど、そういうことだったのか。
ルルはそこまで魔力が多い方じゃない。
というかむしろ少ない方だろう。
その自前の魔力だけでこれだけの威力を出せるのなら、事前に充填されてた魔力量によってはなんとかなるのか。
「クリスのも教団製かな?」
「こ、これは自作ですぅ。換装『Type:Pile Bunker』。叡智の結晶を喰らうといいのですぅ!」
彼女の銃がガントレットに変形する。
それには、杭が埋め込まれていた。
彼女はこちらに一直線に駆け出す。
「早くない?」
後方支援かと思ってたけど、普通に前衛でもやっていける身体能力だ。
「鍛えないと銃の反動に耐えれないのですぅ!」
でも、身体能力はともかく、戦闘経験は少ないのだろう。
動きが単調で読みやすい。
これなら十分避けれる範囲だ。
「『回──」
「させるか!」
回避しようとすると、いつの間にか僕の背後回っていたルルに腕を掴まれた。
「はぁ……! バン、カァー!」
クリスが拳を振りかぶる。
僕の槍にぶつかり合う、その瞬間。
爆音と共に、手甲から杭が射出された。
「──ごふっ!」
全力で後方に下がったが、完全に衝撃を逃がすことは出来ず勢いよく吹き飛ばされてしまった。
「はぁ……はぁ……おぉ、いったぁ……!」
胸がズキズキ痛む。
多分肋骨何本か折れてるねコレ。
2人共思ってた以上に強いなぁ。
これなら一週間あれば十分なんとかなるかな。
それと、イザベラはさっきから動きを見せないけど、何をしているんだ?
何か嫌な予感はする。
大規模魔術でも発動するつもりだろうか。
でも魔力の動きは特にないんだよね。
「旧き神の呪詛は瞳に集い、万象固める魔眼と成す」
イザベラが詠唱を始めた。
莫大な魔力がイザベラの眼に集中していく。
どういうことだろうか。
明らかにイザベラの魔力量を超えている。
さっきまで動かなかったのはこの為か?
「これこそ蛇の女王、その憎悪、怨嗟、慟哭也。我が魔眼は嘆きも叫びも許さない」
これは無理だ!
即座に魔力を放出し、それを身に纏う。
全力で『魔力纏衣』を行うことで対魔力防御を極限まで高め、守りを固めた。
「さぁ、石の檻に縛られよ! 『石化の邪視』!」
動きが鈍る。
指先から四肢が固まっていく。
そして首から下が、完全に石となった。
「石化の呪いか……」
それに加え、麻痺、魅了、狂気も混ざってるらしい。
この内魅了と狂気は完全に抵抗出来たが、石化と麻痺はある程度しか出来なかった。
しかもこれ一度じゃなくて継続して発動してるから一瞬でも『魔力纏衣』を緩めたらたちまち石化されてしまう。
多分普通の魔術じゃない。
スキルで強化してるのかと思ったけど、詠唱が十節を超える長さだから多分固有魔術だろう。
石化という効果と旧き神や蛇の女王、魔眼という詠唱。
メドゥーサとかゴルゴーン辺りかな。
「どうですか? 石化してるなら今なら簡単に砕けますよ。これならいくらライでも──」
「それならこうだ」
──聖職者
「『魔女否定す復権聖母』」
それがこの旗、『奇蹟起こす白百合の旗』のスキルの名前だ。
主な効果は味方へのバフ、治癒魔術の効果10倍、デバフの解除。
これなら石化も解除できるだろう。
たちまち体が軽くなる。
固まり、灰色になっていた肉体が本来の色と柔らかさを取り戻していった。
「嘘でしょ!? それも解除しちゃうの!? とっておきだったのに!」
「うん、こんなところにしておこうか。大体実力は把握出来たよ。なかなか凄かったよ。本当にCランクかい?」
火力面で言えばBランク上位、あの呪いはAランク下位に匹敵するだろう。
ただ3人とも闘気も魔力も使い果たしてるところを見るに、継戦能力は低いね。
瞬間火力は高いけど、技量は低いから……。
Cランク最上位からBランク最下位の間ってとこかな。
それじゃあ、これからの事を話そうか。
「3人はどこの宿屋に泊まってる?」
「えっと、ギルドの宿舎を借りてます」
あー、そっか。
そういえばそんなのあったっけ。
ずっと宿泊まりだったからすっかり存在を忘れてたよ。
確かに教団から守るって意味でも監視の意味でもあそこが一番か。
「それなら僕の泊ってる宿屋に移動できない? 『春の黄金鹿』って言うんだけど」
監視は僕がやればいいし、僕のスキルの結界もあるから安全だし。
拠点レベル上げたから宿屋全体に結界貼られてるんだよね。
結界自体もⅣまで強化してるからCランクの魔物と同レベルまでは敵意を持つ者の侵入を防げる。
おまけに『生命再生』と『魔力再生』の効果ですぐ回復するから訓練も効率的に行える。
いいことづくめだ。
「あっ! あの宿屋ですね! 知ってますよ!」
「食堂の料理がうめぇよな」
「よ、よく行ってますぅ」
分かる。
アリアの料理美味しいよね。
評判が良くて何よりだよ。
「お金は僕が払うから、そこに移って欲しいんだよね。僕が泊ってる宿屋で、これから訓練する上で都合がいいんだよ。ギルマスには僕から言っておくからさ」
「そういうことなら分かりました!」
「ってことはこれから毎日あそこの飯が食えんのか。やったぜ!」
「う、嬉しいですぅ!」
おぉ……ここまで喜ばれるといいね。
やっぱり恋人が褒められるのは嬉しいよ。
「そういうことは本人に直接言ってあげると喜ぶよ」
励みになるからね。
じゃんじゃん褒めてあげて欲しい。
ミリアちゃんとたった2人であの宿屋と食堂を切り盛りしてるしてるからね。
僕もたまに手伝ったりしてるけど、ホント凄いよ。
「女将さんと仲がいいんですか?」
「うん、とってもね」
なんせ恋人だもの。
「さあ、それじゃあ早速行こうか。みんなも疲れたでしょ?」
「ああ、腹減ったぜ」
「お、お肉食べたいのですぅ」
【拠点名】春の黄金鹿
【レベル】3 祠
【次レベルまで】2/9
【解放済み機能】
『結界Ⅳ』
『ストレージⅣ』
『解体Ⅰ』
『生命再生Ⅲ』
『魔力再生Ⅱ』
【管理者】越魔蕾




