EP.17 盗賊退治
今日はギルドマスターに呼び出された。
「盗賊討伐……?」
悪人とはいえ積極的に人を殺すのはなぁ。
いや、まあできるけど。
僕もこの世界にだいぶ馴染んだ。
善人ならともかく、悪人ならやろうと思えば何の躊躇いもなく殺せる。
というより、躊躇うとしたら人を殺すことそのものより、その結果馴染たちに嫌われることだ。
まあ、適応力の高い馴染達の事だし、彼女達もこの世界に適応して悪人は容赦なく殺してもおかしくないけど。
というか、平原の調査しないといけないんじゃなかったの?
これになんの関係が……?
「これは教団の隠れ蓑になっている可能性のある盗賊団のリストだ」
なるほど?
つまり僕はこいつらを手あたり次第に潰していけばいいわけだ。
そして教団の情報を集めろと。
「それでだが、一緒に連れて行って欲しい冒険者がいる」
「それは別にいいけど、巻き込んじゃうよ?」
教団に狙われるハメになっても知らないからね?
「それに関しては問題ない。入ってこい」
「し、失礼します」
そうして3人の少女が入ってきた。
なんだこの子たちは……。
ローブを着ている1人を除いて、極まったソシャゲの馬鹿みたいな服を着てる。
露出度90%くらいのシスター服だ。
おっぱいは暖簾みたいな布で辛うじて隠れていた。
激しい動きでも捲れないように布越しにロザリオがくっついたチクピで留められている。
誰だよこの服考えた奴。
考えた奴も採用した奴も着てる奴も狂ってるでしょ。
2人ももっと恥ずかしがろう?
羞恥心どこかに置いてきた?
「……僕はライ、よろしくね」
「よ、よろしくお願いします! ライさん! 私はイザベラです! し、Cランクの冒険者です!」
イザベラは銀髪で耳が長く尖っている。
森人族らしい。
「アタシはルルってんだ! よろしくな! ライの姉御!」
ルルは金髪長髪でヤンキー風の少女だ。
右腕には銀色に輝く義手を付けている。
「ルル、ら、ライ様は男だよ。わ、私はクリスです。よろしくお願いします、ライ様」
クリスは黒紫のローブに身を包み、フードを被っている。
ローブの隙間からチラチラ肌が見えるから、多分この子も露出度高い服着てる。
「よろしくね、イザベラ、ルル、クリス。僕のことはライでいいよ。貴族相手ならともかく、冒険者同士じゃ正直敬語とか使わない方がいいし」
舐められるんだよね。
特に女性とかだと尚更。
僕はもう有名人だし定期的にライブやってるからたまにしか喧嘩売られないけど、それでもゼロじゃないし。
外見で相手を判断する馬鹿な冒険者の多いこと多いこと。
この世界スキルとか魔術とかあるしあんま外見あてにならないのは分かってると思うんだけどなぁ。
「で? なんなのこの子たち。わざわざこの依頼に連れて行けってことはただの冒険者達じゃないんでしょ?」
「あぁ、教団の巫女とその護衛だ」
へぇ、魔神の巫女かぁ。
巫女は聖女と違い、神毎に1人存在する。
聖女は聖属性を司るが、巫女はそれぞれの神の属性や権能に特化した能力を扱うことが出来る。
そして巫女は神との距離感が近い。
専属の神相手であれば交信や降神も可能らしい。
それにしても珍しいね。
森人族は精霊信仰、世界樹信仰が基本だ。
精霊神であるメイニング以外の神を信仰することはほとんどないって言うのに。
邪神として信仰されている魔神の、しかも巫女とかいう超重要ポジションだなんて。
「疑わないんですか?」
「疑わない疑わない。人を見る目には自信があるんだ」
まあ、見る目というより勘の方が割合高いけどね。
直感的にアリス達が善良であることは理解できた。
ならそれで信じるには十分だ。
違ったら違ったらでその時考えればいいさ。
というか僕的には教団変態説の方が気になる。
そのシスター服教団製ってことでしょ?
周りは何も言わなかったのか。
愛神である女神タイライトの信者の服装は際どいのが多いらしいけど、邪神って別に司る権能の中にそういうのなかったよね?
「じゃあ早速行こうか」
3人を連れてギルドを出る。
そのまま街を出て、軽く自己紹介を兼ねた雑談をしながら街道沿いに歩いた。
「この辺りだったかな?」
盗賊の目撃情報があったのは。
おっ、それっぽい奴見つけた。
「ぐへへへへ」
「金目のものと体を差し出せば」
「命だけは──」
「死ね! 変態!」
「「「ぐはっ!」」」
現れた3人の盗賊を槍で薙ぎ払う。
盗賊達はあっさりと地に伏した。
なんだこいつら。
下っ端なんだろうけど、あまりに小物過ぎない?
実力も冒険者換算でDランク……の下の方だろう。
よく今まで無事だったね。
偵察とか見張りとかならともかく、実際に襲う役ならたった3人とか返り討ちにされるだけだろうし。
いや、普段はもっと大人数で襲ってるのかな。
僕達の見た目で弱いと勘違いして3人でもイケると判断したのかもしれない。
実力も人数も負けてるのに。
まあ、特別な理由とかなく盗賊堕ちするような馬鹿だからしょうがないけど。
「あっ……」
そういえば僕、スキルで警戒心解いてるじゃん。
だから僕達を狙ったのか。
完全に忘れてたよ。
馬鹿は僕でした。
まあ謝る気は微塵もないけどね。
「テメェよくも!」
「ぶち殺──ひっ!」
槍の穂先を盗賊の首に突き付け黙らせる。
まともに相手をするのは時間の無駄だからね。
「生きたいかい? 君たちのボスの元に案内してくれれば命だけは許してやる。それとも、仲間を売ったりしないなんて盗賊に似つかわしくない高尚な精神でも見せて自害するかい? 好きに選ぶといい」
「あ、案内します! だからどうか命だけは」
「お、おい! そんなことしたら!」
「うるせぇ! 断ったらどうせ死ぬだろ!」
「よく分かってるじゃないか」
物分かりのいい子は好きだよ。
まあ、盗賊という事実がそれを帳消しにするんだけど。
盗賊なんて所詮は底辺の人間の寄せ集め。
仲間意識なんて命の前では吹けば飛ぶようなものだ。
「とまあこんな感じだよ。こいつらはクズだから容赦はいらない。呵責なく、加減なく、温情なく、ってね」
そもそもどのみちこいつら詰んでるんだよね。
盗賊捕まえて突き出したら奴隷堕ちか死刑かの二択だし。
多分この感じだと死刑だろうね。
「本当に容赦がない……」
「まあ盗賊なんてそんなもんだよな」
「命が軽いですぅ」
そうして盗賊たちを縛り上げた後、引き出した情報を元に歩きだす。
10分程すると、洞窟のある崖にたどり着いた。
洞窟の入り口には、盗賊が2人が呑気そうに突っ立っていた。
どうやらここが根城らしい。
「今回は魔術師として行ってみようか」
──性質付与、魔術師
「『麻痺』」
その一言で盗賊の動きが止まる。
そのまま膝から崩れ落ち、倒れ込んだ。
「ぅ……ぁ……?」
「っ!? おい! どうしたんだ! おい!?」
盗賊は必死に立ち上がろうとするが、痙攣を起こすのみで指一本動かない。
「なんだテメェら! テメェらの仕業か!?」
「麻痺」
もう1人の盗賊も同じように崩れ落ちた。
「これでよし」
「あの! 次は私たちにやらせてください!」
「おう! 見てるだけって言うのは性に合わねぇからな」
「なら任せちゃおうかな」
洞窟に入り、盗賊たちを蹂躙していった。
イザベラは黄金に輝く剣を振るい、ルルは格闘術で薙ぎ倒し、クリスは巻物から魔術を発動させる。
そうして洞窟の奥まで進んでいくと、異臭が漂い始めた。
「この先、凄い臭いですぅ」
確かに……これは……ああ、なるほど。
「『盲目』」
「ら、ライの姉御!?」
「な、何も見えないですぅ」
「ルル? クリス? どうしたの?」
あー、イライザには効いてないのか。
巫女だしデバフへの耐性でも持ってるのだろう。
困ったなぁ。
まあ、直接手で目を覆えばいいか。
「悪いね。流石にこれは見ない方がいいと思って目隠しさせてもらったよ」
「あの、何が……」
「胸糞の悪い光景が広がってる。盗賊が攫った女性をどうするか、知ってるでしょ?」
そこには牢獄があり、中にはボロボロの布切れを着せられた複数人の女性が縛られて、雑に放置されていた。
全員体液に塗れ、ベタベタしている。
──性質変化、聖職者
「槍と貴方から凄く神聖な気配がしだした?」
ああ、聖属性を感じ取ってるのか。
巫女だからそういうことも出来るのかな?
「『広域治癒』、『清浄』、『精神安定』」
「四節級を詠唱破棄!?」
傷を癒し、汚れを落とし、精神を癒した。
旗のお陰で治癒魔術の出力が10倍になってるから、盗賊に凌辱された心の傷も、ある程度は癒えるだろう。
後は本業の人に任せればいい。
確か教会の近くに夢魔族が経営する精神治療の店があった筈だ。
あそこに連れて行こう。
「待っててね。必ず助けるから」
再び性質を魔術師に戻し、奥へ進んだ。
そこに居たのは十数名程の盗賊たちと、ひときわガタイのいい筋骨隆々の男だった。
地べたに座り込み、酒盛りをしている。
「あ゛ぁ?」
頭領であろう男が不機嫌そうな声を上げながらこちらを向いた。
「お頭、侵入者っすか? あっしが殺しておくんでそのまま楽しんでてくだせい」
「いんや、俺が殺してやろう。ガキとはいえここまで来れたんだ。他の奴らは殺されてるだろうよ」
そう言って頭領は立ち上がり、壁に立てかけられたバルディッシュを掴んだ。
「殺してはないよ。殺してはね。僕はランマ、ギルドからの依頼を受けて君たちを捕らえに来た」
「たまにいるんだよなぁ、こういう勘違いしたガキ。ちょっと力を持ってる程度でなんでも思い通りになると思い上がって。決まって正義感拗らせて命を落とす羽目になるんだがなぁ!」
うるさいなぁ。
ああ、気分が悪い。
さっさと終わらせよう。
「『鎌鼬』」
風が吹き荒れ、頭領を斬り刻む。
その暴風は余波でさえ、盗賊たちを一瞬でサイコロ状の肉片へと変貌させるのには十分だった。
やっぱりダメだね。
感情が全然制御出来てない。
殺すだけなら『風刃』で十分だった。
「これで全員かな?」
その時だった。
奥の方から誰かがこけたような物音がした。
「やべっ」
「ちょっ!? 何やってるのよこのバカ!」
声のする方へ向かうと、そこには2人の男女がいた。
「あ? 君たちは……」
コイツらの顔見たことあるぞ。
ああ、そういえばあの似顔絵のか。
「ひぃっ!?」
「お願いします! なんでもするので命だけは! た、助けて……!」
「まさかこんな所で出会うなんてね」
「知り合いですか?」
「いや、知り合いじゃないよ。こいつら、お尋ね者になっててね。ほら、ギルドに似顔絵が張られてるの見たことない?」
「あー、そういや確かにこんな奴見た覚えあるぜ」
しかも僕にも関係ある。
何を隠そう、アリアを見捨てて逃げた冒険者たちなのだ。
あの後、冒険者資格をはく奪され、盗賊堕ちしたらしい。
「ち、違うんです! 私たちは脅されてて……! ねっ、トラッシュ!」
「あ、ああ……! ラビッシュの言う通りだ! 仕方なかったんだ!」
「……僕、君たちが見捨てたアリアの、恋人なんだよね」
まあ恋人になったのはこいつらが見捨てた後の話なんだけど。
「あ……あぁ……!」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」
2人の顔が絶望に染まる。
どうやら理解したようだ。
もう言い逃れは無理だと言うことを。
「僕もさぁ。盗賊堕ちしてなければある程度の制裁だけで済ますつもりだったんだよ」
確かに見捨てたのは許せないけどさぁ。
まあ小鬼族とはいえ数が多かったし自己保身に走るのは仕方ないかなって思ってたんだよ。
君たち弱いし。
でもさぁ──
「盗賊堕ちしちゃったらさぁ、もう殺すしかなくなっちゃったよ」
「嫌っ! やめっ! そっ、そうよ! コイツは殺していいから! 私だけでも! ね!? ほら! 私のこと抱いていいから! ほら、こんなに可愛い女の子抱けるなんて嬉しいでしょ!? ねぇ!」
「なっ!? ふざけんなよ! このクソビッチ!」
「はぁ!? 何よ! このヘタレ!」
「僕の彼女の方が断然可愛いし、そもそもいくらガワが良くても中身が、ねぇ? というか君より僕の方が可愛いんだけど?」
あまりに醜い。
醜すぎる。
なんて醜悪なんだろう。
僕の彼女達の爪の垢を煎じて飲ませたい。
「取り敢えずさっさと殺しちゃうね」
生かしておく理由もないし。
どうせお前らも悪事に加担してたんでしょ?
2人に向かい手を翳すと、たちまち焔が立ち昇る。
巨大な炎の顎が、何の抵抗も許さず2人を呑み込んだ。
肉の焦げた臭いが鼻を刺激する。
何かを掴むかのように手を握ると、炎はさっと掻き消えた。
洞窟に残ったのは、揺らぐ空気と微かな熱だけ。
その後には、まるで最初から何も存在しなかったかのように、灰すら残らず消え去っていた。
「さ、みんな。次に行こうか」
【真名】ソフィア・フォン・クラウリウス
【天職】女王
【性別】女性
【身長/体重】
【属性】秩序・善
【特技】家庭菜園、解読、政治交渉
【趣味】庭園の手入れ、読書、花をめでる
【好きなもの】平穏な時間、香草茶、子供の笑顔
【嫌いなもの】権謀術数、裏切り
【苦手なもの】駆け引き
【備考】
27代目カルディア王国女王。




