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EP.1 異邦のアイドル、焔雷の支配者、太陽の騎士

「なに……これ……」


 砂埃が収まり、僕が目にした光景は、とても信じられないようなものだった。

 地面も、森も、狼も、何もかもが、消し飛んでいた。

 そして出来たクレータ、その中心に僕は座っていた。


「ほんとに……僕がこれを?」


 信じられないという気持ちが溢れ、思わず呟いた。

 でも、本能的に理解している。

 爆発が起きた時、狼が死んだ時、僕が体内から引きずり出したものとは別の、ナニカが自身に入り込むのを感じたからだ。

 あの時の自身が強くなるような感覚を思い出す。

 あれはまるで──


「レベルアップみたいだ……」


 となると、自身にに入り込んだナニカは経験値か。

 経験値が入る感覚、レベルアップによる自分が強くなる感覚。

 癖になりそうなほど気持ちがいい。


「うっ」


 一瞬、足がふらついた。

 何かがごっそりと抜けたような感覚がする。

 おそらく、この爆発を引き起こした体内のナニカはエネルギーのようなもので、それを一気に使ったから疲労感が凄いのだろう。

 魔力とか気みたいなやつなのかな。


「こっちだ! これは……」

「なにこれ……」


 そんなことを考えていると、2人の女性が現れた。

 片方は槍を携え深紅の騎士の鎧を着て、ピンクの長髪を靡かせる色んな意味で大きな女性。

 いやホントにデカい。

 それと凛々しくて、とてもカッコいい。


 もう片方は魔女っぽい恰好でカッコいい杖をグラマラスな体型の女性だ。

 黒いローブに身を包み、魔女の帽子を被っている。

 長髪は根本から毛先に向かって、黒、赤、黄色と言う風にグラデーションがかかっている。


「人がいるぞ!」


 騎士の人がそう叫ぶと、2人が近づいてくる。

 何故か顔を真っ赤に染めて、手で覆いながら。


「えっと、初めまして?」

「なんで裸なのよ!」


 あれ?

 ホントだ。

 あの爆発で制服も消し飛んだんだろうか。

 僕に傷一つないのは攻撃した本人だからか、それとも僕の頑丈さも上がってるからか。

 まあそれはどっちでもいいや。

 ああでも、星歌からもらったサバイバルキットも消えちゃったのか……。

 ごめんね星歌ちゃん、せっかく買ってもらったのに一度も使わず壊しちゃって。

 でも、大切なものは全部元の世界に置いてきてたからよかった。

 嫌な予感に従って、全部外してたからね。

 あれらが壊れたらショックで寝込んじゃう。

 形ある以上いつかは壊れるとは言え、まだまだ使えるのに僕の手で壊しちゃったとか耐えられない。

 そうならなくて本当によかった。


「さっきの爆発で服が焦げちゃって……なにか羽織るもの貸してくれませんか?」

「分かったから! 早くこれ羽織なさい!」


 魔女は自分の着ていたローブを脱ぎ、手渡してきた。

 なんかすごい、柑橘系のいい匂いがする。

 強化された嗅覚でバレないように匂いを嗅ぎながら、渡されたロープを羽織る。

 裸ロープ……なんか裸よりエッチな気がする。

 まるで露出狂みたいだ。

 今まで色んな人に出会ってきたけど、流石に露出狂はいなかったな。

 いや、もしかしたら僕が知らないだけで実は露出狂だったりするのかもだけど。

 そういえば、妖愛と陽華が負けず嫌いが変な方向に行って露出するはめになりかけてたな。

 懐かしい……と言っても1か月も経ってないけどね。


 それにしても、露出度高いな。

 魔女の人、ローブの下に着てる服がソシャゲに出てくるレベルで際どい。

 本人は気にしてないっぽいけど、僕にローブ渡したの不味かったのでは?


 ちなみに僕がローブを羽織っている間、騎士のお姉さんは顔を真っ赤にして手で隠していた。

 でも指を開いて僕のことをチラチラ見てる。


「ド、ドラゴン……!」


 ドラゴンって……何を見て言ってるのかな?

 いやナニを見てるのかは分かるけど。

 初対面で一言目がそれでいいの?

 第一印象って大事だよ?

 まあ、それを言ったら二人からの僕への第一印象が大爆発の原因で尚且つ全裸の変態露出狂とかいう超危険人物兼変質者になるんだけど。

 あんまり過ぎる、僕が何をしたというのだ。


「お姉さん、どこを見てたんで「む、まだ自己紹介をしていなかったな私は」……いや、流石にそれは無理がありますよ?」


 流石にそれで誤魔化せないですよ、騎士のお姉さん。

 もう第一印象がムッツリスケベで固定されてるから。


「ええい! うるさい! 私は何も見ていない! 見ていないったら見ていないのだ!」


 か、かわいい。

 何この人あざと過ぎない?

 尊死させる気かな?。


「……気を取り直して、私はハーレン・ガヴェスターという。そしてこっちが」

「アリスフィア・ニコラエルよ」

「ガヴェスターさんに二コラエルさんですね? 僕は越魔蕾っていいます。越魔が苗字で蕾が名前です」

「その名前……東方の国の者か。貴殿がこの爆発を引き起こしたのか?」

「多分?」

「多分とはなんだ歯切れの悪い」

「あんまよく分かってなくて。狼に襲われて必死にどうにかしようとしたら爆発して……」

「へぇ、魔術が暴走したのかしら。うーん、確かに貴方の魔力量は多いけど、でもそれにしても……」


 やっぱり魔術とか魔力だったのかさっきのやつ。

 となるとこの世界なら僕でも魔法使い──魔術って言ってるし魔術師? になれるのかな。

 なれるのなら僕は自分の体を増やす魔術を覚えたい。

 忙しくて体が足りないんだ。

 楽しいし幸せではあるんだけどね。


「この辺りで狼と言うと、狩猟狼族(ハンティング・ウルフ)か。……貴殿はここで何をしていたのだ?」

「えっと、いきなり魔法陣? みたいなのが現れて、目が覚めたら森の中にいて……」

「召喚魔法……この強さ、まさか勇者の仲間?」

「勇者?」


 もしかして他のみんなは勇者として召喚されたのかな?

 ならよかった。

 勇者なら多分待遇もいいだろうしみんなも無事だろう。

 王様が悪人って可能性もあるけど……。

 まあ、当分は大丈夫だろう。

 だって僕の勘がそう言ってるから。


「ふむ、であれば……貴殿が暮らしていた国の名前を教えてほしい」

「えっと、日本って言います」

「やはりか」

「ってことは召喚に失敗した? いえ、召喚に成功したことは公表されている。召喚されたのは20人。ならこの子だけ弾かれた?」


 うん、やっぱりみんなは無事っぽいね。

 逸れたのは僕だけらしい。

 凄く安心した。

 みんなならそう簡単に死ぬことはないだろうけど、それでもこんな世界で1人だったら心配になるし。


「異世界人ならこの世界のことは分からないわよね?」

「うむ、説明するべきだろう」


 そうしてガヴェスターさんたちにこの世界のことを教えてもらった。

 この世界は魔物やスキル、ステータスがあるファンタジー世界。

 そして長年人類と魔族で戦争をしてきた。

 魔族の上に魔王がいて、さらにその上に大魔王が存在する。

 今代の勇者を除けば、この世界の人間じゃ魔王を倒すのでギリギリ、大魔王には絶対勝てない。

 今代の勇者は滅茶苦茶強いから魔王程度なら簡単に倒せるけど、それでも大魔王には勝てないらしい。

 そして大魔王の封印が解けかけている為、今度は封印ではなく討伐するために神託に従って異世界から勇者召喚をしたそうだ。


天命の書(ソウルブック)……は持ってないわよね。あれがあれば貴方のステータスを確認出来るのだけれど……」


 天命の書(ソウルブック)……。

 ステータスオープンとかプレートとかじゃなくて、本でステータスを確認するのか。

 異世界モノでもあんまり見ないパターンだね。


「町に行けば発行出来るが……。オチマ殿、貴殿は恐らく行く当てがないのだろう?」

「はい……」


 王都に行けばワンチャンあるかもしれないけど、多分門前払いになるよね。

 いきなりやってきて勇者の仲間だ、なんて怪しすぎるもん。

 教室の外に投げ飛ばされてたし、みんなだって僕はこの世界に来てないと思ってるんじゃないかな。

 会えたらトントン拍子に話が進むだろうけど、そもそも会えなかったら意味がないからなぁ。


「であれば私たちが面倒を見よう」

「っ! ありがとうございます!」

「いいのよ。私たちもこんなに可愛らしい子と一緒にいれるんだから。役得よ役得」

「やだなぁ、こんな美しい人達にそんなふうに言われたら照れちゃいますよ」

「あら、お世辞が上手いわね」


 お世辞じゃないよ。

 2人共とっても素敵な女性だよ。


「二コラエルさんは魔術師なんですか?」

「えぇ、そうよ。私偉い魔術師なの。凄いでしょ?」

「『焔雷の支配者』。アリスの二つ名だ」

「焔雷の、支配者……! かっこいい! 凄いです!」


 厨二病心がくすぐられるいい二つ名だ。

 火と雷を使うのか。

 アリスの髪は赤髪で先端が黄色だけど、この世界は髪色と属性が関係あったりするのだろうか。

 でもハーレンはピンクだし、どうなんだろう。

 もし関係あるんだとしたら、ピンクは何属性なんだ?

 まあいいか。


「ふ、ふふふ。そ、そうでしょ! もっと褒めてくれていいのよ!?」

「凄い! かっこいい! 可愛い! 美人!」

「かわっ!?」

「わ、私も凄いのだぞ! 『太陽の騎士』と呼ばれてる!」


 太陽の騎士!

 なにそれいいなぁ。

 2人共凄くかっこいい二つ名持ってるじゃん。

 厨二病再発症しそうだ。 

 僕もそういうの欲しいなぁー。


「ガヴェスターさんも凄いです! かっこいい! 可愛い!」

「ぐふっ! 笑顔がっ眩しいっ!」


 そうして2人を30分程褒め倒した。


「はぁ……はぁ……」

「ぜぇ……ぜぇ……」


 褒められ続けた2人は羞恥心で悶え続け、息を切らしている。

 ちなみに僕はまだ全然余裕だ。

 後1時間は2人の外見のいいところ語れる。

 初対面だし、中身はまだ無理だけど。

 いくら僕でも初対面の相手の中身は褒められない。

 ただ、悪い人では無さそう。

 むしろ僕の面倒を見てくれるしお人好しだと思う。

 僕の勘が2人を信じても大丈夫だと言っている。


「ああそうだ、私のことはハーレンでいい。さん付けも不要だ」

「私も、アリスで呼び捨てでいいわ。それと、敬語もいらないわ」

「分かった! じゃあ僕のこともライって呼んでね! アリス! ハーレン! よろしく!」

「さて、それじゃあ……まずは町へ向かいましょう。蕾も疲れてるだろうし、ゆっくり休ませてあげたいし」

「ありがとう、アリス」

「ふふっ、いい子いい子」

「えへへ」


 アリスに頭をなでられて少し照れくさいけれど、悪い気はしない。


「行こう、ライ。私たちが今拠点にしている、ハイメリアの町へ。まずは服をどうにかして、それから天命の書(ソウルブック)の発行だ」

「はーい!」


 そうして僕は、アリスとハーレン、2人の女性と行動を共にすることになった。

【真名】ハーレン・ガヴェスター

天職(クラス)太陽騎士(サンナイト)

【性別】女性

【身長/体重】213cm/143kg

【属性】秩序・善

【特技】槍術、槍舞、料理

【趣味】ぬいぐるみ蒐集

【好きなもの】可愛いもの、ドラゴンステーキ、パフェ

【嫌いなもの】不義理、不忠

【苦手なもの】弱く壊れやすいもの

【備考】

誠実で不義理を嫌う、誇り高く勇壮な騎士。

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