EP.10 星灯祭
今日は2人とデートだ。
『星灯祭』という祭りがおこなわれているらしい。
この町の近くには星灯花と言う珍しい花の花畑があるらしく、星灯花は年に1度だけ咲き、夜になると宙へ浮かぶという特徴がある。
その日の夜を星灯夜と呼ぶそうだ。
それに合わせて行われるのが『星灯祭』。
古くは『遠く離れた者同士の心を結びつける夜』とされ、恋人や家族、友との絆を願う祭りとして定着した、と言う由来があると言っていた。
「それじゃあ、行こうか。エスコートは任せてよ」
そう言って2人に手を差し出す。
「ウフフ、楽しみね。期待してるわ」
「デート……デートか……ふふふ」
「ハーレン? トリップしてるわね……」
デートに浮かれてトリップしてるハーレン可愛いよ。
アリスも頬を赤らめてるし照れてるのかな?
可愛いね。
「この体格差だとデートって言うより親子ね」
「うぐっ」
僕、身長低いからね。
最近ちょっと伸びて145になったばかりだし、どう見ても小中学生なんだよなぁ。
しかも見た目ほぼ女子だし。
元の世界でもデート中に親子だとか姉妹だとかに勘違いされることが多かった。
「お兄さん! オススメの星蜜焼き3本ください!」
「おう嬢ちゃん! オススメだな? それだとこのオーク肉の星蜜焼きだな。3本で大銅貨6枚だが……3枚にまけてやろう」
「えっ、いいんですか?」
3枚って、半額だよ?
しかも大銅貨だし結構な額だと思うけど……。
「おうよ、『陽焔の雷華』には世話になってるし、なによりあんたら別嬪さんだからな」
やっぱり可愛いって正義だよね。
「ありがとうございます! お兄さん!」
「お、おぅ……」
「はい!」
「ひーふーみー、よし、ちゃんと3枚あるな。ほいよ、熱いからしっかり冷ませよ!」
「ありがとうございました!」
トテトテと2人の元に戻り、串を渡す。
「はいどうぞ」
「ありがとね」
「ありがとう」
「はふはふ……熱っ! ふー、ふー。もぐもぐ、やっぱりアリスもハーレンも有名なんだねもぐもぐ。うん、美味しい!」
オーク肉に甘辛いタレがかかっていてとっても美味しい。
星蜜焼きには星灯花の蜜が使われているらしいからタレは蜜と火炎果のすりおろし、それと緑癒草も入ってるのかな。
オーク肉って結構歯応えがあるんだけど、これは柔らかいね。
まるで溶けていくようだ。
蜜の効果かな?
かけてるだけじゃなくて漬け込んでいるのだろう。
「美味いな……迷いなく行ったが、あの屋台を知っていたのか?」
「うん! ミリアちゃんが教えてくれたんだ!」
今日のデートに備えてこの祭りについて聞きまくったかいがあったよ。
「次はあっちに行って見よう」
人だかりを掻き分けると、太ったピエロが玉乗りしながらジャグリングをしていた。
「あれは……大道芸人か」
「なんでも有名な大道芸人らしいよ? なんでも魔術もスキルも使ってないことを証明する為だけに奴隷紋を刻んだんだって」
確か……『享楽の道化師』だったっけ?
楽しむことに人生を懸けてるから、面白そうだったらなんでもするらしい。
「覚悟決まり過ぎてない?」
「狂人と呼ばれる類の人間だろうな」
「それにしても、本当にすごいね。まるで魔術みたいだ」
大道芸人は器用に体を動かし様々な芸を披露している。
「見ていて興味深いな。体の使い方ならば私よりも上だろう」
「そこまでなの?」
確かに元の世界でもここまで器用なのは妖愛くらいしか見たことがない。
妖愛は機械顔負けの精密動作が出来るからね。
なんなら一度したことはどんな条件下でもミリ単位でまったく同じ動作が再現できるし。
あの大道芸人も流石に妖愛ほどじゃないけどかなり器用だ。
「面白かったわね。次はどこ行くのかしら?」
「次はね──」
そうして僕たちは食べ歩きしながら色んな所を見て回った。
「おや、ライ坊ちゃんじゃねぇですか」
「あれ? マーチさん?」
話しかけてきたのは同じ宿に泊まっている商人のおじさん、マーチさんだった。
一緒に食事をすることも多く、それなりに仲を深めている。
マーチさんの扱う商品は回復薬や魔力回復薬といった薬系、そして携帯食と言った冒険の必需品が多く、どれも品質が高い。
そして何より味が美味しい。
ポーション系は不味いのが多いから美味しいポーションってだけで価値がある。
でも──
「今日は全然違うものを売ってるんですね」
屋台には髪飾り、指輪、イヤリングなど、色とりどりの装飾品が並べられていた。
「ええ、今日は祭りですのでね。冒険者たちも休んでる人が多いのですよ。せっかくですのでこの祭りにちなんだ装飾品を売ってます」
「なるほど……ならこれとこれください」
僕が選んだのは星灯花をモチーフにした髪飾りだ。
「それなら銀貨2枚ですね」
「はいどうぞ!」
「ありがとうございました。どうぞこちらを」
お金を払って髪飾りを受け取る。
「アリス、ハーレン。これあげるね」
2人にしゃがんでもらって、アリスには白い髪飾りを、ハーレンには翠の髪飾りを着けた。
「うん、似合ってる。2人とも可愛いよ」
「感謝する、ライ」
「ふふふ、嬉しいわ」
2人の笑顔がとても眩しい。
この笑顔を見られただけで今日は大満足だ。
それと、日が暮れてきたしこっちも暗くなる前に渡しておこう。
「今日は2人にプレゼントがあるんだ」
「今の髪飾りじゃなくて?」
「それは偶々見つけて2人に似合いそうだったから買っただけ」
魔術鞄から黒犬のぬいぐるみを取り出す。
「ハーレンにはこれ、ぬいぐるみ!」
「っ! なっ、にゃんでっ……!」
「ハーレンの部屋にぬいぐるみあったから、好きなのかなって」
この慌てようだとぬいぐるみ好きな事は隠したかったんだろうな。
まあ隠せてたかというと全然隠せてなかったけどね。
割とバレバレだったよ。
多分今までは隠す必要のないアリス相手と2人きりで行動してたから、隠すの慣れてなかったんだろうけど。
「くぅっ……! ……だが、感謝する」
ハーレンの反応がいちいち加虐心を刺激するようなものばっかりなんだよね。
凄くからかいたくなる。
「アリスにはこれだよ!」
次は分厚い1冊の本を取り出した。
「本? 題名は……イーリアス?」
「そ、僕の世界の英雄譚!」
「それはとても嬉しいのだけど……貴方、荷物全部消し飛んだんじゃなかったっけ」
「まあそうなんだけどね。内容全部暗記してるから」
先生がそーいうの好きだからね。
僕も勧められて、叙事詩とか英雄譚とか色々読んでたんだ。
この世界、スキル名に元の世界の英雄や神の名前が使われてることもあるし、この知識も何かの役に立ちそうなんだよね。
「白紙の本を譲ってもらって僕が全部書き写したよ」
「この厚さを? 凄いわね……」
『転写』はまだ習得してなかったから全部手書きで大変だった。
基本的に今習得してる魔術は戦闘系ばっかりだからね。
死んだらそこで終わりだからね、戦闘力を上げることを重視して便利系の魔術は後回しにしてるんだ。
「ちなみにハーレンにあげたぬいぐるみも僕が作ったよ。名前はバーゲストっていうんだ」
「何? 手先が器用なのだな、ライは。かなり品質が高いが、元の世界ではそう言う仕事に就いていたのか?」
「いや? ただの学生だよ?」
いや、ただのと言うには人間関係がだいぶアレだけどね。
「恋人の1人に裁縫とかが趣味でぬいぐるみをよく作ってる子がいるから、その子に教えてもらったんだ。陽華って言うんだけどね」
陽華は手芸限定なら妖愛にも匹敵するレベルで手先が器用なんだ。
感覚派だから教えるのは下手っぴだけどね、僕ならそれでも問題ない。
「ふむ、ヨウカ殿か。それは私と話が合いそうだな」
陽華は明るいし誰とでも仲良くなれるタイプの人間だから、ハーレンともきっと仲良くなれると思うよ。
というか妖愛みたいにからかわれそう。
「っと、そろそろかな」
もう完全に日が暮れて真っ暗だ。
「花畑はあっちの方角だったかしら?」
「うん、そうだよ」
外壁の向こう側から、色とりどりの光がふわりと浮かんでいき、空に昇る。
まるで星のように光を灯すその花が、夜空に広がり辺りを照らした。
星灯花だ。
「……綺麗だね」
「これが星灯夜か。想像以上だな」
「ええ。まるで星のようね」
僕らはしばし言葉を忘れ、ただその幻想的な光景に見入っていた。
人々の喧騒も耳に入らなくなる。
「……一生忘れられない想い出になりそうだよ」
「ふふ、私もそう思うわ」
「ああ。そうだな」
来年はみんなも連れてきて、一緒に見たいな。
【真名】佐々木伊織
【天職】剣星
【性別】女性
【身長/体重】172cm/55kg
【属性】混沌・善
【特技】剣道、刀装具作成、料理
【趣味】彫刻、人形制作
【好きなもの】はちみつ、刀剣、戦い
【嫌いなもの】外道
【苦手なもの】幽霊、物理攻撃で対処できないもの。
【備考】
剣道にひたむきで努力家な戦闘狂。




