貴女との出会い
メニスタの北西部にある小さな森の中。そこに岩の裂け目から広がる大きな空洞がある。そこは私にとっては懐かしくもあり苦くも幸せな時を過ごした思い出の場所でもある。
今は昔と違い草木に覆われ入り口は分かりづらくなっている。
エンダイト「貴女との出会いもここから…」
彼女との出会いに後悔は一つもない。彼女のおかげで私の灰色の世界は虹色に色付いた。いくつもの忘れていた世界の輝きを彼女は見せてくれた。
彼女はかつての私と同じだった。人々から虐げられ遠ざけられた存在。だが私と違いそれに悲観などしていなかった。独りでも彼女は笑顔を決して絶やさなかった。私はいつからかそんな彼女に今まで感じなかった様々な感情を生み出していった。
エンダイト「…貴女がいなければ今も冷め切った岩の中で独りだったのだろう」
彼女には色々なものをもらった。だが、私はそれらを今から捨てなければならない。私は怪物にならなければならない。
ならなければならないのに――
エンダイト「…」
手のひらを見つめる。
彼女との思い出を消すことが出来ない。彼女からもらった力があるというのに。
だがそれをすれば彼女を裏切る。彼女を永遠に殺してしまう。残った微かな良心が記憶を消すことを拒む。
…私には彼女だけが唯一の世界だった。
エンダイト「私は…」
ただ貴女と一緒にいたかっただけなのに――