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初っぱなから異世界スタート!?

咲「ここは、どこだ?」


真っ白な何も無い空間。

ん?お前は誰かって?

俺は成宮咲(なるみや さき)18歳だ。


名前が女の子?それいじょう言わないでくれ。結構気にしていることなんだよ。


???「やっと目を覚ましたか」


後ろから声!?

後ろを見ると俺と同じ位の年の男が。


咲「上半身裸…。露出狂か!!?」


???「違う!!変人だ!!!」


咲「ほぼ同じ意味じゃねえかっ!!」


このテキトー野郎なんかイラつくぞ。


???「テキトー野郎ではない!!神様だ!!」


咲「だからほぼ同じ意味だろうが!!!」


ん?今神様って…?


神「そう!!俺は皆から愛されてるこの世で最も偉い神様だ!!」


何を言っているんだこいつは…!?


神「あー、もういいよ、その反応。お前は死んだ。キャンユーアンダースタン?」


…は?俺が死んだ?


咲「いきなり死んだって何だよ!!?」


神「だーかーらー。お前は川に溺れていた子をたすけようとして死んだんだよ。その子は助かったが、お前はその後足を滑らして頭打って、そのままお陀仏さ」


嘘だろ…


神「まあ、俺の手違いで死んだんだけどなー」


咲「…はああぁぁぁ!!?この野郎!!!」


だが、殴ろうとした場所に神様はおらず、俺はたたらを踏んでしまう。


神「そこで死んだのは偶然。だから、可哀想に思った俺は転生話を持ってきたんだぜ?しかもお前のお望み能力ありで。」


咲「…」


よくマンガやアニメで見たこの展開。待ちに待った展開ではあるが、自分がいた世界に未練は無いとは言い切れない。


神「それも能力でどうにかなるし」


本当かよ!!?

てか、また心の声覗きやがって。プライバシーってもんがこっちにはあるんだぞ!!!


…でも俺はもう決めた。


咲「能力はな…」






ここは…


咲「異世界なの…か?」


だだっ広い草原のど真ん中って、気を失っていた時誰かに襲われたらどうすんだよ。あいつ場所まで考えてなかったな?


グルルルッ


この感じはもしかして…


ガアアアア!!


魔物、ですよね~

とりあえずここは、


咲「にげろおおぉぉぉぉっ!!」


能力使い方復習してないのにいぃぃぃ!!


魔物の数は…うん、ざっと100は超えてるな、大量大量…なんて呑気に考えてる場合じゃない!!


魔法、魔法の出し方ってえっと…全身の魔力を指先に来るよう意識して…来たっ!!!


咲「魔物ども散りやがれ!!マッドハンドッ!!」


地面から土で出来た巨大な手が魔物どもを大きく横に薙ぎ払う!!魔物の端から端へ土の手が払うと魔物は散り散りに大きく飛ばされていく


咲「・・・凄まじいな」


なんて呟いていたら、残りの魔物がこっちにつっこんできてるじゃん。

なら、


咲「ロックハンド!!」

自分の足元に巨大な手を出し上空へ昇っていく。

咲「からのっ!」


地面に火の紋様を浮かべそこから火柱を全方向に打ち上げていく。


それらは付近にいた魔物どもを木っ端みじんにしていく。

だがまだ空中の魔物の攻撃がある。しかしそれらの魔物も空を上手く飛べずに次々と地面に落ちていき下にいた魔物と同様に火柱に当たり燃えていく。


実は飛ばした火柱の中に小さな尖った石を仕掛けておいた。空中にいた魔物はバランスを崩し下に落ちていく。魔物共の叫び声が響き、やがてその声は聞こえなくなっていく。


…どうやら魔物どもは全滅したらしい。


咲「はあ。おっそろしいな」


バキッ。


あ、やべ。


ロックハンドの持続時間が切れてしまったようだ。


咲「ちょっ、うわああああああっ!?」


ズドン!!、と地面にあいさつをするハメに。


咲「くっそ、いてぇ…」


とにかく痛みがなくなるまでこのままじっとしていよう…。



ある程度痛みがなくなり、今の状況整理が何とかできそうだ。





この大陸アイルノードには5つの都市がある。


まず初めにメニスタ。ここは魔物を何か有効活用出来ないかと研究している都市らしいが、

あんな魔物どう有効活用しようとしているのだろうか…


二つ目にマライブ。ここは先ほど俺が使っていた魔法をあらゆることに使い生活を豊かにしようと研究している所らしい。


三つめはソライブ。よくある剣や槍、鎧などを主に生産している所で色々な金属や魔物の皮など使いアクセサリーなども作っているそうだ。


四つ目はメライブ。機械や車などの部品を作っている。特にロボット開発に力を入れているらしい。


最後にキブス。今まで挙げた都市の主な流通をしている所でいわば都市自体が大きな郵便局の仕事を担っているそうだ。


とまぁこんな所か。地図を見ながら自分の居場所を確認する。どうも、この大陸には山は一つしかなく都市もそれぞれ分かりやすいところにあるみたいだ。


マライブは西の海の近くに。ソライブは大きな山の麓に。メライブは東の平原に。メニスタは南の小さな草原地帯に。キブスは大きな山の頂上にあるとのことだ。


神様「という所だったかな?あー説明だる…」


咲「…それ本当なのか?」


神様「なんだ?神様を疑うのか?信仰心のない奴め」


咲「寝ながら菓子食ってマンガ読んでいるやつなんか信じられるかっ!!そもそもみたいーとか、らしいーとか、全部情報が曖昧じゃねぇか!」


こんな奴が世界を動かしていたなんて信じられねぇ…


神様「大体情報は合ってるから気にするな。それよりも、せっかくお望みの能力というのに全てといわずそんなものしか選ばないのな。」


咲「良いだろ別に。」


神様「色々言いたいことはあるが、面倒くせぇから一つだけ」


気怠そうに話す神様だが、真剣な口調で一言俺に言い放つ。


神様「一歩間違えるとお前は世界を破滅に追い込むからな」


そう言い終えると俺の足元に黒く大きな穴が出現する。


神様「まぁ、滅ぼさねぇよう頑張れよ。あ、それと―」


何か言っていたようだがここで俺の意識は途絶えた。


神様「あーあ、やっちゃった。ま、大丈夫か。さて、マンガの続きっと…」




…さてこれからまずどこへ向かおう。

俺は周りを見渡してみる一面草原地帯のようだ。遠くに建物のような物も見える。

ということはあれがメニスタだろうか。


咲「まずあそこによってもうちょっと情報収集でもするか」




咲「…どういうことだよ、これ」


道中、魔物に遭うことは無くすんなりとメニスタには着けたのだが…


人がいない。というよりも都市として機能していない。


咲「誰かいませんかー?」


…返事がない。ただの廃墟の都市のようだ。


咲「いやいや待てよ!?さっそく来た都市が廃墟って何だよ!?」


頑丈な石造りの家が色々とあるが、あちこち石の隙間から草が生え窓は割れ、扉なんて蹴破られているわで色々と破損している。


咲「あの神様の情報なんてまともに信じなければ良かった」


はぁ、とため息がつい出てしまう。


咲「とりあえず、ここから近い都市といえば―…ん?」


そこら中草だらけにも関わらず遠くに一箇所だけ花が咲き乱れている所がある。



………ガサッ




…嫌な予感がする。

こういう時、大体当たるんだよなぁ…

そろーっと後ろを振り返ると、


キシャャャャァァアアアッ!!!



俺よりも倍近い体格のカマキリがいた。


ああ、ですよねー…


はいでは。回れ、右、よーい


咲「デジャブかよぉぉぉ!!?」



全速力で逃げるしかない!


攻撃しようとも考えたが、魔法が出ない。どうにもまだ完全に扱いきれないらしい。

俺の叫び声を聞いたからか草むらから魔物が現れてきているみたいだ。


後ろで先ほどのカマキリらしい鎌の音、魔物の声も聞こえてくる。


キシャァァァァアアアアッ!!!



距離は離れてきているらしいがどうにも俺の足も限界に達しているようだ。


咲「クソッ!!」


気が付けば目の前にはあの花畑が近くにあることに気づく。

その時―――


ガッ!!


咲「うおっ!?」

石畳から外れた石に気づかず、そのまま花畑に転がり込んでしまう。

すぐに立ち上がろうとするがどうも足を挫いたらしく立つことがままならない。


咲「くそ!こんなところで!!」


後ろを振り向くと先ほどのカマキリが一匹追いかけて来ている。

魔法を出そうとするが、出る気配すらない。


カマキリがだんだん近づいてくる。

魔法も出ず俺は顔を隠し、目をつむる。


ふとここで気づく。



――あれ、あのカマキリ一匹だけだったっけ?――



シャキンッ



何か切った音がする。

切られたにしては痛みが小さい気がする。

薄く目を開けると、そこには俺に背を向けひたすらに何かと戦っているカマキリがいた。


咲「どういうことだ…?」


目を開けると、カマキリは他の魔物と戦っていた。

ふと足元を見ると魔物の上半身と下半身が分かれたものがあった。


うっ、と小さく声をあげてしまう。ふと暗くなり上を向くと先ほどのカマキリがいた。


襲われると思い気を引き締める。しかし、


キシュゥゥゥ…


カマキリはどうにも戦う意思はないようだった。

魔物が俺を助けた…?


なぜだ?食べるために?他の魔物に横取りさせないために?


ふと気づくとカマキリは遠くで何か切っている。魔物を寄せ付けないようにしているのか?

何にせよ、今がチャンスだ。立ち上がって逃げようとする。


ズキンッ!!


咲「っつ!!」


足をくじいていたのを忘れていた。

今の声に気づいたらしくカマキリが近づいてくる。


…よく見ると鎌の側面を使って器用に大量の草をのせている。


キシュッ!キシュッ!


咲「使えと言っているのか…?」


そう呟くとカマキリは頭を縦に振る。

どうやら言葉も分かるらしい。

疑いつつも挫いた所に草をあてる。すると先ほどまでズキズキ傷んだ足首の痛みが嘘のように引いていく。


俺を助けた…?


渋い顔をしていると、カマキリはまだどこか痛むのかと焦っているような素振りをする。


…悪い魔物じゃないのかな?


緊張の糸が解けたのか、つい笑ってしまう。

何にせよ襲われることはなさそうだ。


だいぶ落ち着き、これからのことをどうするか考えることに。

神様の言ったことが嘘の情報の可能性が出てきたので、もしかしたら都市全て滅んでいる可能性が出てきてしまった。

東の平原にあるというメライブだが、ここから見る限りでは中央の山が伸びてきているらしく、山越えの必要があるようだ。西のマライブは山越えの必要は無さそうだ。


咲「となるとマライブに行くのが一番楽か…」


スリスリ


咲「森とはいえメライブ行くよりは幾分かマシだよな…」


キシュ―


咲「…」


キシュー♪


咲「あのさぁ…いつまで顔こすりつけて来るんだよ」


あとはこのカマキリなんだよなぁ…

危険ではないことは分かったが、ずいぶんと懐かれてしまった…。


向こうの言葉は分からないが、どうもこっちの言葉は理解できるらしく、ある程度の会話は出来るようだ。まぁ、向こうが頷くとか、首を振るとかそういう程度だけど。


でも、どうしても理解できないことがある。



どう見ても明らかに人間によって傷つけられた跡があるのに、襲う意思を持っていないということだ。




普通のカマキリと比べ大きさも違うが、色も全体的に淡いピンク色だった。

そのこともあるのか傷が余計に目立つのだ。特にお尻?部分が。

獣の傷なら爪痕というのは分かるのだが、やけに一本一本長い斬り跡がある。

そんなことをされたなら人間を恨んでも良いのに、なぜかこのカマキリはこうもすぐ俺に懐いてきた。そもそも魔物って人に懐くものなのか?

もしかして、誰かと一緒に過ごしていた?

だとしたら…


咲「お前、名前か何かないのか?」


キシュ?キシュキシュ!!


咲「…まさか、キシュ?」


キシュキシュ!!


そうだと言わんばかりに首を縦に振る。


咲「名前付けた人テキトー過ぎやしないか…?」


何か別の名前……そうだ


咲「花を守る、フラワーディフェンサー…フラーフェってどうだ?」


キシュ―…キシュッ!キシュッ!


どうやら気に入ってくれたようだ。


咲「さて、名前も決まったことだし、マライブに向けて行くか」


フラーフェ「…キシュッ!」


…この場所がいかに重要な場所なのだと知ることになるのは随分と後のことだった。



マライブへ行く途中フラーフェがどうしても歩かせたくないのか、お尻部分に乗れとしつこくジェスチャーして来て、今俺は座らせてもらっている。案外柔らかく座り心地は申し分ない。


まさか、カマキリのこんな部分に座ることがあるとはなぁ…


そう思いつつもやはり頭に浮かんでくるのはあのテキトー神様のことだ。

下手したら全部の都市廃墟の可能性があるじゃねぇか。そうだとしたらこれから一生人と出会うことは無いのだろうか…

それはそれで嫌だなぁ…


そう思った矢先フラーフェの足が止まる。


咲「ん?どうした?」


フラーフェの見ている方向を見ると人らしき姿が見える。


お、現地の人か?


幸運だな。今ここらへんの状況を聞いてみよう。


そう思い降りようとすると、フラーフェが奇声を上げる。

え?と思い振り向くと俺らに向けて火球が飛んでくる。


フラーフェ「キシャァァァアアアッ!!」


フラーフェが勢い良く身をひねるように避ける。


俺もフラーフェに合わせ避けるが、バランスを崩しそのまま地面とまた挨拶をすることに。


咲「いってぇ…またかよ」


鼻を押さえつつ火球が来た方向を見てみる。


人は人でもどうやら盗賊団のようだった。

盗賊頭「ゲヒャヒャ。ようやく見つけたぜぇ、この魔物めが」


盗賊の一人が嗤い声をあげる。服装も一人違うことから盗賊の中で一番偉い人物なのだろうか?

フラーフェが奇声を上げているが、震えているようにも見えた。

もしかして、こいつらに傷つけられた痕だったのか?


咲「ちょっと待ってくれ!!」


すかさず俺は前に出る。フラーフェが驚きの声を上げるが、命の恩人の危機を見過ごすわけにもいかない。


盗賊頭「あぁ?人間だと?」


盗賊は驚いた顔をする。しかし


盗賊頭「お前、魔物と一緒にいるとはどういうことだ?」


咲「こいつに命を助けてもらったんだ。どうか見逃してもらえないか?」


盗賊頭「見逃すぅ?そうだなぁ…」


その時後ろから盗賊の一人が俺に切りかかってくる。


ガキンッ!


フラーフェが音に気づき、間一髪の所で俺を助けた。


これが合図だったのか、他の盗賊も切りかかってくる。


盗賊頭「見逃すわけぇねぇだろぅが!!やれ!!奴らともども殺してやれ!!」


クソッ!!やっぱり駄目か!

人に攻撃するのはどうにも怖いようで体が震えている。でもフラーフェを殺させるわけにもいかないっ!!


――集中しろ。


奴らには当たり、フラーフェには当たらないように。


目をつむると全方位の景色が見えてくる。フラーフェの居場所や敵の位置が鮮明に、輪郭に沿って明るく見える。



盗賊は…前に5、後ろに3…

更に集中力が高まるのが分かる。そしてイメージする。無数の岩の塊。


…来た


咲「ロックガンショット!!!」


俺を中心に岩の塊を四方八方へ飛ばす。


詠唱をしていたことに気づいていたのか盗賊は素早く避けていく。


盗賊「あめぇんだよ!!」


盗賊はにやりと笑い俺に剣を突き刺そうとする。


だが――避けてくれることこそ一番の目的だったんだよ。


盗賊「…がはっ」


次々と盗賊たちは倒れていく。


だが、唯一盗賊頭だけは読んでいたようで耐えていたようだった。



盗賊頭「てめぇ…嵌めやがったな」



咲「…それはお互い様だろ?」

先ほど飛ばしたのはただの岩じゃない、岩の中に火の玉を隠し死角から時間差で爆発させただけ。いわば岩の花火爆弾のようなものだ。

もちろん俺とフラーフェには当たらずに透けるようしている。


咲「おまえらがさっきやったことの仕返しだよ」


盗賊頭「このっクソガキが…!!」


何か唱えている。あいつも魔法が使えるのか…?


盗賊頭「こいつらは役にも立たねぇ、クソどもだ。てめぇらもろとも塵になれや」


発動した瞬間、奴が放とうとしているものが何か分かった。火の玉だ。

しかし先ほどのものとはケタ違いだ。誰でもわかる、ここら一辺焼き尽くすほどの威力だと。


咲「お前仲間も巻き込むつもりかっ!!?」


盗賊頭「仲間ァ?知らねぇよ!!んなもん、てめぇらが死ぬならどうでもいいことだ!!!」


あいつは仲間のことなんて気にもしていない!?


神様の言葉が蘇る。世界を破滅に追い込む――


不安はあるが、使うしかない。

大丈夫だ。今の俺なら、出来る――!!


盗賊頭「死ねやぁ!!!」


意識を集中し、放つ!!


咲「グラビティホール!!」


あいつが放つ巨大な火の玉の目の前に大きな真っ黒い球体が浮かび上がる。

それは地面や空間、そして火の玉も飲み込み小さくなっていく。バチッ、バチッと何か弾ける音が響く。それは段々小さくなり、やがてそこには丸くえぐられた、ぐにゃりと歪んだ空間が残った。


盗賊頭「なんだ、と…!?」


盗賊は唖然とするが、すぐさま逃げて行ってしまった。


咲「あっ。…逃げられたか」


周りの盗賊共も気が付くと、全員怯えているのか蜘蛛の子を散らすように逃げ去っていく。


…何にせよ、ひとまず助かったか。


余計な道草を食ってしまったがこのままマライブに向かうとするか。そろそろ、夕暮れ時も近いのか空がオレンジ色に染まりかけている。

俺はフラーフェの背中に乗り、目の前に見える森の中へ進んでいく。



???「あの魔法は一体…?ううん。それより…」


彼らより遠く離れた丘で少女は独り呟く。そして何か答えが出たのだろうか、咲達と同じ方向へ追いかけていくことにしたようだった。


しかし、彼女の後ろにも追いかけていく影があった。

彼女は感知能力が高いのかそれに気づく。


???「もうっ!!まだ諦めていなかったのね!そんなに追いかけてもこれを渡すわけには――-」


…どうやら追いかけて来ていたのが違っていたらしい。


???「…あはは。さすがに、これは…」


顔から血の気が引いていく。彼女は咲達を追いかけていく、いや助けを求めに走りだした。




森の中は外から見た雰囲気と違い、起伏が激しいようだった。所々小川のような水の流れる音もする。


何か生き物もいるようだが、この世界ではどれも魔物に区別されるらしくうさぎやカエルの様に見えても何かしら能力があるらしい。


咲「早めに抜けないと、夜のこういう所はどんな魔物がいるのか分からないから危ないな…」


周りに色々な果物らしい実もある。食べられそうなのだが、小さなトカゲらしき魔物が近づくとその実はパックリと口を開け、むしろそのトカゲを丸ごと飲み込んだ。


果物がトカゲ食べるとかどんな生態系になっているんだよ…。

フラーフェは所々でひょいと拾って食べているみたいだ。

俺にも分けてくれるが、でもなフラーフェ。さすがにとれたてピチピチの動いている魔物を人間は食べたらいけないと思うよ?


キシュ?


食べないのって目で見られても、すごく困る。


咲「あー…腹減ったなぁ」


そんなことを呟いていると、後ろの方から人の声らしき叫び声が聞こえてくる。


咲「な、なんだ!?」


フラーフェは叫び声で場所が分かったのか、その場所へと走っていく。


そこには人の姿はなく大きなクマがいただけだった。

俺たちに気づいたのかこちらに振り向き襲い掛かってきた!


咲「フラーフェ!避けろっ!!」


フラーフェは横に素早く避ける。

すかさず魔法を唱える。


咲「ロックショット!!」


尖った小さな石つぶてを当てる、しかし当たったもののそれは飲み込まれていくように消えていった。


咲「効いてない!?」


クマは態勢を整えまた突っ込んでくる。先ほどと同じように横に避ける。これを何度繰り返したことだろう。多分あいつは俺がいたあちらの熊と比べこちらのクマは頭が単細胞らしい。突進しかしてこない。


また同じように突っ込んでくる。


咲「これならどうだ!!ファイヤショット!!」


火の塊をクマに向けて数発放つ。

効いているのか苦しんでいるように暴れだす。


咲「フラーフェ今だ!!」


フラーフェに呼びかけ、鎌で首めがけて思いっきり斬りつける!!


バチンッ!!


クマの首は落ち胴体は横に倒れ――ない?


佇んだまま動かない?でも、動かないのはチャンスだ。

今のうちに俺たちは急いでその場を離れ、マライブへと向かった。

辺りが薄暗く、足元も見えなくなる頃、ようやくマライブの城門へとたどり着いた。


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