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日常崩壊

「はぁ……眠いな……」


桃莉(とうり)は真っ青な空を見上げる。


退屈な授業に、眠くなるような丁度いい気温。


窓際の一番後ろでカーテンで遮っても日差しのせいであくびが止まらない。


「おい。あくびしすぎだろ」


幼馴染の奏雨(かなめ)が呆れたように言う。


「だって、眠いんだもん」


またあくびをする。


「まだ1時間目だぞ。そんなんで大丈夫か?」


奏雨は今までの経験から絶対今日はどの授業でも寝るなと確信する。


既に眠る体制に入りつつある桃莉を見てため息を吐く。


体を使うことなら誰よりも熱心に動くのに頭を使うことになるとどうもサボり癖がある。


正確に言うと勉強にだけ。


人を馬鹿にすることに頭を使うなら話は別だ。


何度その天才的な発想に多くのものが恥をかかされたか……


奏雨はこれ以上は知らないと思い、授業に集中する。


桃莉はようやく奏雨からの視線が外れたことで眠りにつこうと机に突っ伏して寝ようとしたら突然強い風が吹いた。


カーテンの裾が天井につくくらいの強い風が。


少しして風がおさまり窓際の人たちだけ隠すようにカーテンが落ちてくる。


'まぶしっ!'


風でカーテンが上に上がったせいで急に明るくなったせいで目をギュッと瞑る。


少しすると慣れてゆっくりと目を開け、外の景色を見ると夢でも見ているのかと錯覚してしまうものを見た。


空に模様が浮かんである。


アニメや漫画で出てくる結界や魔法陣のような模様だ。


'夢だな……'


そう思いながら、思いっきり頬をつねる。


「痛い……」


夢じゃない。


そう気づいたときには遅かった。


模様が下まできて、学校全体を覆う結界が完成した。


桃莉は何が起きているのか、何が起ころうとしているのかさっぱりわからなかったが、これだけは確信していた。



今から大勢の人が死ぬ!と。



体育の授業で外にいる生徒たちと先生たちは空の模様に気づいていないのか、普通に授業を続けている。


嫌な予感がする。


外にいたら絶対に駄目だと頭の中で警報が鳴る。


このままではまずいと思い、早く中に入るよう叫ぼうとしたとき変な音が部屋中に響いた。



ピロンッ!



[おめでとうございます!皆さまが住む地球は新たにレベルアップする機会を与えられました」



音がして少しクラスからざわめきが起こり、何が起きたのか確認するためカーテンを思いっきり後ろに引っ張る。


遮られた視界から解放され、一番最初に目に入ったのは巨大なウィンドウだった。


よくアニメやゲームでみる、あのウィンドウだ。


ゆっくりとウィンドウに書かれた内容を読む。


「……ふざけてんのか?」


誰かがそう呟いたのと同時にまた変な音が鳴る。



ピロンッ!



[ですが、タダでレベルアップすることはできません。試練に通過しなければなりません。今から行われるのは、そのための第一歩です。今から4つのゲームが発生します。全てクリアできれば皆さまの勝ちです。生き残った者たちには活躍に見合った報酬が授けられます。ぜひ頑張ってください]




「はぁ?ふざけてんのか?」


廊下側の1番後ろにいた綾瀬俊太(あやせしゅんた)が机を蹴る。


ドンッ!


大きな音に数人のクラスメイトたちはビクッと肩を揺らす。


「ねぇ、これってよくハンター小説とかで使われる設定に似てない?誰かが面白半分でやってるのかな」


「確かに、そうかも」


双子の如月(きさらぎ)姉妹がフフッと笑う。


クラスメイトたちの反応は様々だが、誰もこのウィンドウの内容を本気だと思っていなかった。


ただ一人を除いて。


桃莉だけがわかっていた。


命をかけたゲームが始まると。


「奏雨。いつでも動ける準備しといて」


「動けるって、これは誰かの遊びだろ」


そう言いながら桃莉の方を見るとあまりにも真剣な顔つきに奏雨はゴクンッと音を立てながら唾を飲み込む。


「桃莉」そう名前を呼ぼうとしたとき、窓の外から眩しい光が発せられた。




『ああ?聞こえますか?私はローリエと申します。この度、ここら一帯のゲームの進行役になりました。遅くなって申し訳ありません。他の場所で少しトラブルが起きまして』


突如現れた帽子と中世ヨーロッパ貴族の貴族が着るような服を着た変な白ウサギが宙に浮かんだまま話し始めた。


中にはまだ、これが誰かのイタズラだと本気で信じている者もいたが、ほとんどの者がこの異常事態を警戒し出していた。


『では改めまして簡単にルール説明をさせていただきます。先程ウィンドウにも表示されましたが、これから4つのゲームをしてもらいます。難易度は徐々に上がっていきます。全てのゲームにクリアするとこの世界ではスキルという者が付与されます』


ウサギは両手を横にバッと広げる。


どうだ、嬉しいだろ、と言わんばかりの顔で。


『あ、一つ言い忘れてました。ゲームが発生している間はこの結界から出ることはできません。出るには4つのゲームを全てクリアするしかありません。これから起こることはこの世界のゲームのようなものですが、一つだけ違うことがあります。それは死んだらリセットができないということです。ですから、どうか死なないよう気をつけてください。これから皆さんがどう生きるかは今からのゲームに全てかかっています。検討を祈ります』


ウサギは帽子を脱ぎゆっくりと頭を下げる。


まるで貴族のようなお辞儀に腹が立つ。


ウサギは頭を上げ帽子を被るとニヤッと笑う。


『では、ゲームスタートです』


パチンとウサギは指を鳴らすと姿を消す。


他の場所で同じように結界に閉じ込められた人たちのところに移動し今言った事を一句一字違えず言うために。



「これは……!」


ウサギが消えたの同時にそれぞれの目の前にウィンドウが表示された。



ピロンッ!



[リハーサルクエスト]


4つのゲームをクリアしろ!



[報酬]


各自に見合ったスキル、守護神



最後まで見ると新たなウィンドウが表示される。


それを確認すると桃莉はハッと笑ってしまう。



ピロンッ!



[ファーストクエスト]


今から出てくるモンスターから逃げてください。


制限時間残り:03:59:59



「どんなモンスターかもわからないのに、リハーサルクエスト?ふざけてるわね。あのクソウサギ!」


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