第5話 家族会議
翌朝、もう一度話し合おうと考えていると父のほうから呼び出された。
「政志、昨日言ったことは事実なんだな。その…下弦の守に物申したっていうのは。昨日は気が動転していてもうよく覚えていないんだが」
「…そうだよ」
「確かにお前がしたことはまっとうなことかもしれない。だが政府の闇は今に始まったことじゃない。私たち国民が知らない間に、今まで何十年何百年と知らぬ間に違法な取引はされているだろう。政志、よく聞け。これが現実だ。仮にお前一匹が政府に立てついたところで彼らは痛くも痒くもない。対して家は営業停止の通知で生活が苦しくなるばかりだ。だからまさ…」。
「だからって見過ごしていいのか!」俺は耐えきれず、いつの間にか口は開いていた。もはや口の制御はできそうにない。
「今回の件には明らかに裏がある!それも自己利益のためのものだ!俺は確信している!何が現実だ!こんな現実が当たり前のように成立しているのは今まで誰も変えようとしなかったからじゃないか!政府の力は巨大で俺は虫けらかもしれない、けど、変えようとすることはできるはずだ!今の状況を打開できずとも打開する努力はできるはずだ!ならばそれをするのが国民の義務じゃないのか!もし現状を見て見ぬふりをしろというなら父さんも同罪だ!」俺は心の奥底にあったものを言い切った。言い過ぎたかも知らないと自分でも動揺していると父さんがにやにや笑い始めた。昨晩の様にねじがまた飛んだのかと思うも今日は目の焦点が合っている。
「ハハハ!政志お前ならそう言ってくれると信じていた。お前は父さんにないものを持っている。いいだろう。ならば俺はお前に賭ける。政府の奴らにぎゃふんといわせてやれ!」
「いいのか!父さん」
「ただし条件がある。今日から一か月以内だ。それなら今までの貯蓄で生活していける。もし一か月以内に解決できなければ、謝りに行くこと。その時は俺も一緒に土下座してやる」
「分かった。俺は自分を信じるよ!」そう言って大月にメールをする。その後ろで父は
「お前はまだ若い。思いっきり飛んでみろ」そうつぶやいた。
三十後。巻き込まれに巻き込まれている大月誠がやってきた。家族の同意を得たことを聞くと
「お前もこの一家もすごいよ。俺にはそんな度胸ないし、二秒以内に土下座しに行ってただろうよ。」とあきれた様子で言った。
「けど、こんな政府に立てつく大問題を抱えた俺に易々と会うお前も相当度胸あると思うぞ」と俺がいうと確かに、といって笑った。すると、誠が一枚の紙を取り出して見せてきた。それはメールの内容を印刷したもののようだった。送信先は誠の妹、大月若菜、送信元はなんと例の区長、恩納月である。誠はにやりと笑って言う。
「もう後戻りできないぞ」
「望むところだ」俺は決意するとプリントを読み始めた。メールタイトルは「恩納月の誕生日オフ会招待のお知らせ」だった。怪しさマックスだ。