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治天のうさぎ  作者: 末人
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第4話 法務相からの通知

部屋に入り、封筒を開けるとそこには一枚の紙が入っていた。内容はこんなものであった。



 営業法抵触の疑いによる処置について

 法務相


 望月様の販売する羽織等の繊維・衣類製品に多数の不備が確認されました。これは市場が今後不安定になる要因として重い問題と本相は判断いたしました。つきましては九月一日から十一月一日までの二か月間、御社の営業及び製品の販売を停止する措置を取ります。本通知に従わなかった場合はそれ相応の対応をいたしますのでくれぐれもご注意ください。


以上。

 

 八月末日




 俺はこの手紙を読み寒気がし、まるで天地がひっくりかえったような感覚に襲われた。まさか、見華月が?その思考が一瞬巡ったが、ここまではしないだろうと考え自分を落ち着かせた。俺はこの夜悩んだ挙句、父、母、兄を集め家族会議をすることにした。


 その日の夕食はずっと手紙のことばかり考えていたせいでろくに喉に通らなかった。ちなみに望月家の今晩の献立はポップコーンならぬポップちんげん菜だった。要するにちんげん菜を揚げたものだ。下級貴族にとっては人参などは高級品で誕生日に食べる程度だ。

 そしてついに家族会議を始めた。封筒の手紙を見たのは俺だけで父、母、兄は何も知らない。全員がテーブルを囲い、静まった空間で俺は重い口を開いた。

「聞いてほしいことがある。今日区長からこんなものを渡されたんだ。」そう言って向かいにいた父に封筒を手渡すと不審な顔をして読み上げ始めた



 「ご注意ください。以上。八月末日―」。読み終えたのち一瞬時間が止まったが間髪入れず父が叫びだした。

 「一体なんやこれは!うちの製品にそんな、不備があるやなんて!」父には焦ると関西弁になる癖がある。一家どもども似たような癖が感染しているのだろうか。

「そんなこと今日初めて聞いたわ。今までお客さんからそんなことも言われたこともない。ちょっと、店の在庫みてくるわ」。母の口癖は普通。テーブルに肘をつき頭を抱えながら念仏を唱え始めた兄、何度も手紙を音読する父、場は混とんとしている。


「確認したけどどこにも不備なんてなさそうよ」やはり裏で手引きしている奴がいるのかもしれない。思い当たる節はある。

「じゃあ、なんやねん不備って!誰かのいたずらか?」

「父さん落ち着いてくれ。ちょっと話したいことがある。」そういって俺は三日前会見で起きた出来事をありのままに家族に伝えた。


 離し終わるころには母までうつ伏せて念仏を唱えてしまっていた。唯一違ったのは父だった。初めは沈黙していたのでどうしたのかと聞こうとしたその時だった。

「政志!俺は感動したぞ!お前の勇気!行動力!すばらしい!確かにここ最近の税率には疑問を持っていた!父さんと一緒に政府の闇を暴こう!ハハハッ↑」言葉を聞けば褒めているように見えるが残念ながら父はこんなこと絶対に普段言うタイプではない。どっちかというと面倒ごとは避けたいタイプだ。現に目の焦点があっておらず目がぐるぐる回っている。動揺のしすぎでみんなの頭がパンクしたことで俺は寝室にいった。明日の朝、冷静さが戻ってからもう一度言おう。そう覚悟して眠りについた。 


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