第5話 VIVAN《変態》と呼ばれた男(後編)
危なかった。この話を始める前に本来なら注釈を入れるべきだったことを思い出した。この第5話を前編と後編に分かれたのも、もしかしたら天の計らいだったのかもしれません。
話の都合上、ここから、ドラマ『VIVANT』のネタバレのオンパレードです。一応見ていない方にもわかるようには書いたつもりですが、ドラマを見てから読むと、「あぁ~」って思うと思います。多分今回は感動も関心もあまり感じないかな。ただ、「あぁ~」って思うだけかと。ただもしかしたら、もう一度見返したくなる気持ちになるかもしれません。それでは、後編をどうぞ。
毛利「そこまで言うのなら聞かせてもらおうじゃないの。あんたの推理ってやつを。」
ホームズ「かしこまりました。作者の苦肉の策である謎ディーに引っ張られてしまったため、今回は影山風バージョンで推理していくことをお許しください...お嬢様。」
毛利「あなたにお嬢様と呼ばれるとなんだかゾッっとするわね。まぁいいわ。私も作者の気まぐれに付き合ってあげるわよ。Sっ気はあったほうがいいわよね。」
ホームズ「御心遣い感謝申し上げます。ではお嬢様、VIVANTにおいて、なぜ登場人物に数字を振り分けることが重要であったのかを説明するにあたって、まずVIVANTでもこの5話前編の冒頭でもヒントが提示されていたことにお気づきになりましたか?」
毛利「もしかして、あのセリフ?...『アマテラスオオミカミ、イエスキリスト、アブラハム、アッラーヤ...誰でもいい...助けてくれ。おれはこんなところで死にたくねぇ~。』この冒頭のセリフのこと?」
ホームズ「左様でございますお嬢様。このセリフこそが今回のトリックの要。普通の視聴者では、乃木がただただ助けを求めていたこのシーンこそ、このドラマの最大の仕掛けが施されていたのです。」
毛利「ホームズ...その程度の説明じゃ、この作品の読者にはわかっても私にはわからないわよ?」
ホームズ「そこは、このホームズ...抜かりはございません。ゆっくりと説明していきましょう。まず、アマテラスオオミカミは太陽神なので、太陽は英語でSUN。つまり、数字の3が付与されていることになります。次に、イエスキリストですが、彼は33歳で亡くなっていることから、33の数字が付与されております。最後にアブラハムなのですが、信仰の父と謳われている人物...つまりは父さんからの13(とうさん)であるので、数字の13が付与されております。」
毛利「ふぅ~ん。その難癖にも似た考察...嘗て学生時代に”彼”と覇を競ったときから変わらない様ね。なんだか懐かしいわ。で...ホームズ...何回も言うようで悪いんだけど...結局それがなんだって言うの?」
ホームズ「お嬢様...あなたが仮に『VIVANT』のドラマを見ていないのであれば、分からなくても当然でございましょう。ですが、お嬢様が、もしこのドラマを見ていらっしゃるのでしたら・・・やはり、お嬢様の目は節穴でございますか?」
毛利「はぁあああ~あたしのどこが節穴だって言うのよぉ~。子供の頃から目だけはいいんだから!」
ホームズ「失礼しました。確かに節穴は言い過ぎでございました。」
毛利「そうよ。撤回しなさい。」
ホームズ「大変失礼しました。ですが、お嬢様の観察力不足は否めません。しばらくの間引っ込んでいてくださいますか?」
毛利「引っ込んでて....引っ込んでろ?あんたこそ引っ込んでろっつうの。一人でも当てて見せるわよ!」
偽澤「まぁまぁ、毛利君...落ち着いて...ここは彼の話を聞こうじゃないか。」
ホームズ「お気遣い感謝致します。今回、このVIVANTのドラマにおいては、この冒頭のセリフに出てくる。アマテラス・イエスキリスト・アブラハムは、各章のオチとしてドラマ内に利用されております。先ほど説明した数字のトリックを利用して...ね。」
そういうとホームズは伊達眼鏡をくいっと持ち上げ、静な口調で淡々と説明し始めた。
ホームズ「まず、第1~4話で誤送金事件の犯人である山本巧にはイエスキリストの付与された数字と同様に33が付与されています。」
偽澤「ちょっと待ってくれホームズ君。そもそも山本さんに33の数字を一体どうやって当てはめるというんだね?」
ホームズ「第4話で山本巧が黒須にとらえられた際に、逃亡用のパスポートの場面をみてほしい。そこで使用されている偽名の名前は、『三上健三』....つまり、数字の33が付与されている。まぁ、この場合は隠されているといったほうがいいでしょうね。」
毛利「三上健三の”三上”の3と”健三”の3で、33だって言いたいわけね。でもホームズ、逃亡用のパスポートを使ってまで、どうして数字を付与しようとしたの?」
ホームズ「このVIVANTのドラマの各章の見せ場は、それにかかわる登場人物の数字の総和になるようにできています。はじめは偶然かとも思いましたが、アリ編を見て、これが作為的であることを確信いたしました。まず、山本を追い詰める際に、公安、黒須、乃木が関わっていきます。公安は基本的には数字の0が割り振られておりますので、どの事件に関与していても、数字の総和に関与できなくなっておりますのが、このドラマの巧な点でしょう。」
毛利「でも、ホームズ...公安が0なら、乃木と黒須で総和は23にしかならないから、あなたの推理は間違っているんじゃない?」
ホームズ「そうなのですが、お嬢様。このドラマはある強引な手法を使い、この場面に限り数字の10を付与することに成功したのです。」
偽澤「もしかして、十字マンの演出は...」
ホームズ「左様でございます。あそこで十字マンを登場させることで、公安+乃木+黒須+十字マンで総和の33を満たすことができるのです。このように、他の章の見せ場でもこれと同じように、数字のトリックが使用されています。」
毛利「ちょっと待ってホームズ。イエスキリストの件はそれでいいとしても、アマテラスの件はどうなるの?数字の3よ3。総和どころか登場人物一人でも登場したら超えちゃうじゃない。」
ホームズ「お嬢様、物事とは考え方、見方次第で変わることがございます。確かに数字の3では超えてしまうかもしれませんが、ローマ数字のⅢなら、見方を変えれば・・・条件を満たすことが可能なのです。」
偽澤「ローマ数字のⅢ...まさか、あのアリの家族の首吊りのシーンは・・・」
ホームズ「偽澤様は気づかれたようですね。あのシーンの狙いに、私も当時このドラマを見て、このトリックに気づいたとき、鳥肌がたった記憶にございます。あの場面での登場人物は、アリの家族、アリ、乃木、黒須でした。この場面のオチとなるアリの家族の首吊りのシーンで、このドラマは成功したのです。画面上にⅠⅠⅠを作りだすことを。」
毛利「ⅠⅠⅠ?どうゆうこと?」
偽澤「首吊りでのシーン、アリの家族が一人ずつ吊るされていくんだが、最後の娘が吊るされそうになるときに、アリが白状し中止になる。前の3人は首吊りになっているから、画面上ではロープが3つ映っている・・・つまり、画面上の演出で111を作り出しているということか。」
ホームズ「そう...このシーンは、視聴者に全く気取られることなく、登場人物での総和を満たしている。アリに付与されている数字は88(アリババのババ)、黒須の10、乃木の13・・・総和は111であり、見方によってはⅠⅠⅠ...つまり、アマテラスの数字の3を満たしていることになる。」
偽澤(あ~だからあの演出にしたのか。)
ホームズ「残るアブラハムは簡単です。VIVANT最終話でのベキと乃木の一騎打ち、13と13の戦い。一対一であるため、総和は13...見事に条件は満たされている。こうして見ていくと、脚本がある程度完成したときに、最初のシーンのセリフが急遽差し込まれたのではなかろうかと勘繰ってしまいますね。」
毛利「でもホームズ...ここまで、用意周到なドラマで、なんでアッラーヤだけ数字が付与されていないの?」
ホームズ「それはお嬢様・・・実を言うとこの作者でさえアッラーヤについて解けていないのです。調べてみてもまるで分かりませんでした。ただ、ドラマを見返して、唯一これなのではなかろうかと思う仮説を見つけました。ただ、アッラーヤと関連付けが不可能なように思うのですが・・・」
偽澤「とりあえず話してみてくれないかな。」
ホームズ「私が当時ドラマを見ていたとき、恐らくはこの人がラスボスではなかろうかと疑った人物がいました。それが、長野利彦...丸菱商事の専務です。当時ドラマを見ていた方もこの人がラスボスではなかろうかとみていた方も多かったのではないでしょうか?ここからは私の妄想でありますが、もしVIVANTの続編がある場合に、長野専務がラスボスもしくは中ボスにあたる存在になるのではないかと疑っています。それは、長野専務がブルーウォーカーとの連絡に使用していたメールアドレスがFOX.777...これがどうにも私には何か暗号めいたものに見えて仕方がなかったのです。」
偽澤「暗号?」
ホームズ「このFOX.777もやりようによっては作り出せてしまうのです。まるで、アナグラムにも似た手法を用いればね。」
毛利「登場人物の総和ってこと?」
ホームズ「この暗号だけは、総和だけではなく、パズルのように組み立てていく必要があります。そして、その鍵となるのが、主人公の乃木憂助のもう一つの人格『F』です。
偽澤「・・・まさか!?」
ホームズ「そう...そのまさかなのです・・・乃木のもう一つの人格『F』と公安の『O』、黒須の『X』でできてしまうのです・・・FOXという文字が・・・あとは777を作ればいいと考えてみましたが、どう捻っても777は作り出せなかったので、私は見方を変えてみました。777は7+7+7ではないのかと、21ではないのかと...そして、21が合っているのであれば、一応は作り出せる...テントの20と柚木薫の1で...21の数字を。つまり、長野専務が捕まるとき...それは、乃木、黒須、野崎、テント、薫の主要人物のほとんどが関わってくることになるのではなかろうかと考えました。ただ、偽澤さん...あなたの反応を見る限り...どうやら私の考えすぎだったようですね。」
偽澤「面白い仮説の一つだね。もし続編を作るときには参考にさせてもらうよ。それにしても、恐ろしい推理だったよ。少し妄想に頼りすぎている部分は否めないが、あながち否定できないものでもあるように見えてしまう。さすがはVIVANと言ったところかな。」
毛利「申し訳ないのですが、偽澤さん。恐らく彼の話はまだ終わっていません。」
偽澤「えっ...」
ホームズ「さすがはお嬢様。よくご存じで。実を言うと本題はここからです。」
偽澤「えっ...」
毛利「もし彼がここで終わるような男なら、VIVANの中でもとりわけ”変態”と畏れられていないわ。」
ホームズ「偽澤さん・・・あなたはいったい・・・どこまで読み解いていたのですか・・・"ワンピース"。」
そういうとホームズの眼つきは鋭さを増して、どこからか警告音のようなものが聞こえてくるのであった。
VIVAN《変態》と呼ばれた男(後編) 完
この第5話は、ただただ私が話したかっただけの話でございます。次回、第6話でこのVIVANT編は終わりを迎えます。第6話で遂に私がたどり着いた...いや...たどり着かされた『Dの一族』についての考察が炸裂します。そして、今回もキャラ補足説明シリーズを後書きでやります。もちろんこの方。
毛利 麗子
VIVANのコードネーム 毛利・S・ルブラン(VIVANより、SleepingBeauty》の称号を与えられている。
VIVAN学生時代編で、活躍する登場人物の一人。毛利恭四郎とエリークイーンとの間に生まれた日本人とフランス人のハーフ。初期設定では、容姿端麗・才色兼備であり、VIVANいちの美女と謳われている彼女。性格は苛烈で、謎解きはディナーの後での主人公・宝生麗子と元カレの遺言状の剣持礼子を足して2で割ったような性格をしている。また、容姿もゼロスーツサムスをモデルとしているため、スタイル抜群でめちゃくちゃ美人である。すれ違うだけで、同性・異性ともに魅了する彼女は学生時代はまさに憧れのマドンナ的存在であったが...その美貌を以てしても落とせない唯一の例外がいた。そう”あの変態”だけは・・・こんな感じの物語でふわ~と思い描いてます。
次回は、6月29日か7月13日を予定しております。あくまで予定ですからね。これ以上遅くなることはあっても早まることだけは決してないと言っておきましょう。それでは、また~




