第2話【竜撃者レイア】
竜撃ギルドが創設されてから、私の友人が何頭か討たれてしまった。
私が知る限りでは、竜を撃てる人間は三人しかいない。
その内の一人は、すでにこの世に存在しない。
数少ない竜撃者を愚かにも、人間自らが処刑したのだ。
「アンタ、女だてらにどうして竜撃を?」
剣士風の男が、声を掛けて来た。風貌こそは剣士であったが、腕輪型の魔力ブースターを付けている。
恐らく、魔術を使用するタイプの剣士なのだろう。
「人を探している。気安く話し掛けないでくれ」
素っ気なく答えると男は一瞬、顔をしかめはしたが仲間たちの元へ帰っていった。
どうして人間と言うのは、こうも愚かしいのだろうか
彼女の時もそうだった。
かつて私には、人間の友が居た。彼女は竜である私から見ても、美しい女であった。
想わず見惚れてしまうほどである。
彼女の名は、レイア。
高潔な心を持った素晴らしい友だ。私は彼女の事が好きであったし、きっと彼女も同じ気持ちであったに違いない。
誤解がないように、彼女に言った事がある。
――私はレイアが好きだ。だが、それは友としてだ。人間で言うところの恋だとか、愛と言う物は、我々には存在しない。
驚いたような顔をしてはいたが、彼女は直ぐに大笑いをしていた。
見識な彼女の事だ。私が言うまでもなく、理解し得れた事ではあった。浅はかな発言をしたと、珍しく羞恥の念を覚えていた事を記憶している。
それに彼女はヴァリアンテの王妃であり、王の子供を身籠っていた。
王を心の底から愛しているように思えた。
ところがその王は、愚かしくも彼女を処刑した。私と逢っていた事が原因だ。
彼女は私と手を結び、王国を乗っ取ろうとしていたと懸念したのだ。
彼女は娘が産まれたその日に、王達に処刑された。
怒り狂った私は、彼女の娘を奪い、王国を滅ぼした。
彼女の娘に私は己の魔力と名を分け与え、育てる事にした。
娘は清らかに育ち、彼女に瓜二つに育った。そして今日、娘は二十歳の誕生日を迎えた。
「竜が出たぞ!!」
直ぐ近くで、怒号が鳴り響いていた。
火竜の鳴き声で在った。
船の外を見ると、溶岩の中から火竜が姿を現していた。
「全員、戦闘配備に着け!!」
この船の船長らしき初老の男が、鬨の声を上げる。