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竜撃のロキ  作者: 81MONSTER
プロローグ【始まりの福音】
1/2

第一話【竜撃船】

 近年になって、竜による被害が増大したと言われている。



 二十年前にもある王国が、竜に滅ぼされた。

 王国は三千年もの間、栄え続けるほどの大きなものであった。




 栄華を極め、人々の技術と魔術の粋が集められていた。王国の軍事も強大であった。にも関わらず、その王国は一夜にして灰となった。



 たった一頭の竜によってである。




 その竜の名はロキ。



 この世に一頭しか存在しない皇帝竜カイザー・ドラゴンである。



 私の友人たちは、その竜を《暴君ロキ》と呼ぶ。

 ずいぶんと不本意な呼び名である。



 皇帝カイザーに対して、暴君であった。


 もっと、崇高な呼び名で呼んで戴きたい物だ。



 王国が滅ぼされて以来、人々の竜に対する恐怖は増した。竜を畏怖し、忌み嫌うようになった。

 もっともそれ以前も、竜は恐れられ嫌われてはいた。だが今回の件は、流石にやり過ぎであったようだ。



 人々は竜を討伐する為に、竜撃ギルドと言うものを組織した。



 今では何億もの人間がギルドに集まり、竜を脅かす存在へとなりつつあった。



 それまでは人間が何人、束になろうとも竜達に取っては痛くも痒くもなかった。ところが最近では、幾頭もの竜が人間たちに撃たれている。

 それと言うのも、竜撃船の存在が大きい。




「おい、姉ちゃん。竜撃船に空きが出たようだ!!」



 竜撃ギルドの窓口の男が、魔力盤ボードを見ながら叫ぶ。

 私は彼の目の前にいるのだから、叫ぶ必要性は見当たらなかった。実に不快であった。だから、人間は竜に滅ぼされるのだ。



「それは、何と言う名の船だ?」

鯨噛丸けいごうまるっちゅう名前の船だ。かなりのサイズの船だから、見れば直ぐに解るだろう!」




 ――鯨噛丸。



 最近、良く耳にする名の船だった。

 多くの竜が、この船に撃たれている。

 もしかしたら、この船に乗れば或いは――。




「出発は三十分後だ。場所は火山。獲物は火竜ファイヤー・ドラゴンだ。乗るかい?」

「あぁ、乗せてくれ」



 即答であった。



「なら、決まりだ。三番ドックに行きな」



 奥にある通路を指差しながら、男は此方こちらに笑みを投げる。

 全く、いけ好かない男だ。



 もっとも、人間の大半はいけ好かない。

 私は鯨噛丸に乗り込むべく、男を背に向け歩き出した。



「アンタ、まさか……ヴァリアンテの生き残りか!?」



 服の背の刻印を見たのだろう。

 滅びた王国の名は、ヴァリアンテ。



 私が滅ぼした王国である。



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