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勇者に告ぐ  作者: 鈴木チセ
8/9

魔王だけが知っている

私は自分の運命を知っている。それは、勇者に必ずどこかで負ける運命だということだ。魔王を倒してもどうせ他の魔物どもは生き延びると思うが、人間はどうも頭が足りないらしい。私を倒しても無駄だとはわからないから何人もの私が何度も死んでいる。私は一度、勇者をぶちのめしてからこの世界の真実を知った。この世界は勇者の人数だけ世界が存在し、勇者が死んだ数だけ時間が巻き戻るらしい。この世界はどこまでも勇者のために存在しているのだ。私達魔物が人間界に何もしないわけではない。だから討伐の対象となるのは仕方がない。しかし私たちは悪の帝国を築こうとしているのではない。人間どもがいうように私たちは人間を惨殺することに喜びを感じはしない。いや、中には快感を感じる危篤な奴がいるのは否定しないでおこう。しかし、人間こそ魔物を惨殺するではないか。お互い様と言って仕舞えばそれまでだが、そうとしか私には表現できない。やっていることは同じなのに世界はどこも勇者のためにある。魔物の世界に幸福は訪れない。少なくとも私には。他の魔物は何度でも甦り、何度でも勇者を殺し続けるだろう。しかし、勇者は生き返る。魔物にとって何の意味もない世界ではあるが、それでも私は魔王の務めを果たさなければいけない。どうせ私たちはこの国から逃げられないのだから。


「来たか、勇者よ。」

勇者は私に向かって剣を構えた。魔王たるもの、堂々とあらねばならない。何度勇者に勝ち、歴史は繰り返されそうとも。わざと負けて宿命から逃げ出すわけにはいかない。勇者が私に刺す剣は重く、痛い。ここまで来るのにどれほどの時間をかけたのだろう。、、、、よくぞここまで。お互いに服はボロボロだ。勇者の装備も限界に近い。しかし私もそれは同じこと。そして、彼には強い味方がいるらしい。彼のもとに光が集まり、そこから伝説の武器が現れた。今度こそ、終わりだろうか。勇者の剣が私の体を貫いた。私は、もう限界だった。体が足元から消えていくのを感じる。来世があるのなら、この世界とは別の場所に行きたい。

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