第5話 『冒険者ギルド』
アンファングに無事、到着した。私は商人のおじさんに礼を言って別れ、街へと入っていく。
人が多いのは知っていたが、思っていた以上に多く、冒険者然な装備をした人もいれば、商人や街で暮らす人。さらには王都では、あまり見かけない亜人も多くいる。王都シュタールの華やかさとは、また違った趣の賑わいだ。個人的には、王都の華やかさよりも、こういう雰囲気の方が性には合っている。これがモンノワール地方の玄関口として知られている街。アンファングだ。
まずは、冒険者ギルドで情報収集しますか。街の中心にある一際、大きな建物が冒険者ギルドだ。
冒険者ギルドは大陸全土を股にかける冒険者を管理統括する組織で、冒険者制度を使えば、一般人よりも国境越えがスムーズになったり、国に囚われずに冒険するにはもってこいの制度で一獲千金を求めて、なり手は尽きない職業のひとつである。その仕事内容は幅広い。一般市民からの些細な依頼、商人の護衛や魔物討伐、ダンジョンなどの調査発掘まで内容は多岐に渡る。ただし誰もが、その依頼を請け負うことができるわけではない。
冒険者ギルドでは冒険者の実力に合わせてランク付けがあり、基本的に自身のランク以上に設定されている依頼は請け負うことはできないようになっている。実力以上の依頼でむやみやたらに死者や怪我人などが出すのを防ぐためだ。
そのランク付けはS級を頂点にして、上からA、B、C、D、E、Fと設定されいる。私は五年前まではB級冒険者として登録されていたのだが、長年、依頼をこなしていないので降格は免れないだろう。その説明も受けるためにも、冒険者ギルドに行かなくてはならないし。宿屋や借家などの街の情報なども仕入れるにも有効なので何か困ったら冒険者ギルドに訪ね相談するというのが定番なのだ。
「ここが、アンファングの冒険者ギルドね。やけに立派ね」
ギルドの建物に感心しながら冒険者ギルドに入ると、正面には冒険者の待ち合わせ場所として簡素で小さなテーブルと椅子がいくつか設けられている。そして、右にはカウンターがあり、そこではギルド職員たちが色んな業務に追われてせわしなく働いていた。左の壁には大きなボードがあり、そこには冒険者への依頼書が書かれた紙が貼りだされており、冒険者はそこから依頼を選んで、受付で依頼を請け負うというのがルールとなっていた。
冒険者としての現状を把握するためにも、とりあえずギルド職員に確認を取るために窓口に向かう。
「冒険者ギルドにようこそ。担当のリュネットと申します。今日はどういったご用件でしょうか?」
リュネットと名乗ったギルド職員は、眼鏡をかけ、ややほほがこけた細身の男性職員で、絵に書いたような真面目で几帳面そうな風貌をしていた。
「以前、冒険者として登録し働いていたんだけど。5年ぶりに冒険者に復帰しようかと思って――」
その他にも私の名前などの手掛かりになる情報を伝えると、リュネットは私に断りを入れて一度、席を外す。
しばらくしてリュネットが戻ってきた。
「お待たせしました。ルイズ・シャサールさん」
私の情報が書かれているだろう書類に目を通しながらリュネットは説明を続ける。
「仰る通り、5年前までB級冒険者としてランク付けされていらっしゃいました。ですが、最終依頼から5年経過しているので、2ランク降格扱いになって、ギルド依頼の仕事を受けていただいて改めてランク付けを判断するということになりますね」
「――となると、私は今、仮のランクはD級扱いってことなのね」
「そういうことになります」
「そのギルド依頼の仕事っていうのは?」
私が質問を投げかけるとリュネットは眼鏡をクイっと直す仕草をした。
「はい。ギルドが発注元という形で依頼を出している案件でございます。D級扱いの依頼としては――」
リュネットは、そう言うと幾つかのD級扱いのギルド依頼の仕事を紹介してくれた。
「これにするわ」
私は、その中から霊峰モンノワールの、とある祠の調査依頼というのを受けることにした。
野生の大森林を通っていくもので、肩慣らしにはちょうどいいと思って、それにした。するとリュネットは、その依頼の留意事項を説明してくれた。
「あ、そうそう。あと、家も借りたいんだけど」
私は予算と間取りなどの要望をリュネットに伝える。
「なるほど、承りました。今回、受けていただいた依頼報告の時までに、幾つか候補を見繕っておきますので」
リュネットは、そう答えると再び眼鏡をクイっとさせ、D級の認識票を差し出した。
私は、それを受け取ると席を立って窓口を離れる。
「ありがとう。じゃあ、また来るわね」
そう私が挨拶すると、リュネットは無言で頭を下げて答える。
私は依頼書に目を落としながらをギルドの入口に向かって歩き出した。
(依頼内容は野生の大森林で魔物討伐、野営技術、遺跡調査、一人前の冒険者としての実力を計るにはちょうどいい形で構成されているわね。)
ドンっ!
どうやら依頼書を見ながら、歩いていたので、目の前にいる男性冒険者が立っているのに気付かずにぶつかってしまったようだ。
「あ、ごめんなさい。ちゃんと前をみてなくて」
私は相手の顔も見ずに反射的に謝罪の言葉を口にする。
「いや、気にしないでくれ。こっちも入口付近で立ち止まっていたのが悪かった」
私は依頼書に目を落としていた顔を見上げ、男性冒険者は私に向き直るために振り返った。ちょうど2人同時に互いの顔を認識する形となった。
「「え!?ええーーーーっ!!」」
2人が顔を突き合わせた瞬間、互いが同じように声を上げた。
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