序章 第1話 『ただいま営業中』
ここは街から少し離れた場所にある小さな大衆食堂だ。従業員も私――ルイズ=シャサールとエーデルの2人のみで、私自身は元宮廷料理人としても腕を振るったこともある。
店内は、ギルドの依頼を達成し盛り上がる冒険者、畑仕事などのひと仕事終えた街の住民、様々な客でオープン早々に満席になり、今まさにピークタイムを迎えつつあった。
「こっちに麦酒を3つくれ」
「スープとパンのおかわり」
「メインを追加で2つ」
店内は客がオーダーを告げる声、それに応じる私たちスタッフの声、そして、客同士が飲み食いして笑い合う声が幾重にも重なり合う声で、賑わっている。
そんな中――
「ルイズ、今日も盛況じゃな」
賑わう店内の声に掻き消されそうだったが、なんとか私に声をかけられたのに気付くことができた。その声の主は馴染み客のコメルじいさんがカウンターに座った所だった。
「あ、いらっしゃい!」
私は軽く挨拶をして、いつも通りに麦酒を、コメルじいさんの前に差し出す。うちの店はワインやウィスキーなどの他のアルコールもあるが、コメルじいさんは麦酒しか飲まない。なので、来たのが分かれば麦酒を出すのがお決まりになっていた。そして、コメルじいさんは乾杯相手がいないので、遠巻きに私に乾杯の合図をしてから出されたエールを美味しそうに飲み始める。
「はーい、これ今日のスープとパンね」
そこへ、じいさんの後ろから声をかけてきたのは、うちのスタッフのエーデルだった。エーデルはスープとパンの皿をコメルじいさんの座るカウンター席のテーブルに置いた。それに気づいたコメルじいさんとエーデルは互いに挨拶を交わす。
「お、ありがとな。これが今朝、言ってたご自慢のメニューか」
「そうそう、大変だったんだから」
「じゃあ、ありがたく食べさせてもらうわい」
あとで感想を聞かせてと返事をしながら、他の客に呼ばれたエーデルは、その場を素早く離れた。コメルじいさんもエーデルに軽く手を振って応じる。今は、ちょうど早い時間に来た客が食事を終えてお会計を済ませ帰る客と、コメルじいさんみたいに新たに入ってきた客のそれぞれに対応をしていて、ピークタイムになっている時間帯だった。かく言う私も、新規のオーダーをこなしながら、帰った客の皿を洗うなどに追われている。
「エーデル、これを12番テーブルに、おねがい」
メイン料理の皿を3つをカウンターの上に置いて、合図を送るとエーデルも注文を取りながら、手を振って了解の合図を送り返す。
その一瞬の動きが止まったのを見計らって、コメルじいさんが声をかけてくる。
「それで、今日のメインは、なんじゃ?」
「今日はメイン料理がバイコーンのスモーキーグリル。スープは、そのバイコーンのホルモンスープ。そして、デザートが天使のクリームになってるよ」
「どれもこれも、相変わらず美味そうじゃのう」
「ありがと。順番にオーダーこなしてるから、ちょっと待ってね」
コメルじいさんに、申し訳ないと一言添えて伝えると、構わんよとばかりに首を横に振ってみせた。
うちのお店は他の店と大きく違うところがある。それはうちのメイン食材は、世間では不味いというのが常識と認知されている魔物を使った料理であること。
それが、この魔物料理専門店――ビーストビストロなのである。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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