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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ハッピー☆はっぴー!Symphony

作者: 咲良雪菜

※ブログにも同時公開しています。

挿絵(By みてみん) 

 ここは平和な平和な森の中。そんな森の中にある一つの村。

 何があるわけでもない。何もないんだけれど、そこに居るのはちょっと不思議な人たち。

 夜が明けて、朝の爽やかな空気が森の中に広がり始めた。


「んふ……」


 もそもそっとベッドの上で寝返りをうっているのは、ふわふわな桃色の髪をした、年はまだ若い……少女。

 姿こそニンゲンと同じようだけれど、でもひとつだけ違っているところがあって。

 それは。

 

 ――ケモノの耳が生えているということ。


「んん……」


 寝返りをうっては何かを言っている。だけど起きる気配はなかった。

 寒くはなく、だけどなにもないと肌寒い。

 彼女は軽めのタオルケットのようなものに包まれていた。


「みみっ」


 そこで突然聞こえたのもまた少女の声だった。

 姿は……今ベッドに寝転がっている少女とそっくりだ。

 彼女もまた、桃色のふわふわの髪をしており、その耳には……。ケモノの耳。


 そんな彼女がぺたぺたとベッドに歩み寄ってきた。


「みーみ、朝だよ」


 寝言をこぼす少女を「みみ」と呼び、体をゆさゆさと揺さぶる。

 揺れる体に、ふわふわの髪もふわふわと反応する。

 

「はうっ……?」


 5、6回揺さぶったくらいに、ようやく間の抜けた声をあげたベッドの少女。――目を覚ました。

 しかしぱっちりとではない。ぽやっとした様子で夢から戻ってきたようだ。


「……ん……?」


 ゆっくりと瞳を開いていき、その顔を枕に埋める。

 寝ぼけはなかなか覚めない。


「みみ、早く起きないと……揉むよ?」


 後半の声のトーンが1つ、いや2つ下がって、疑問形で聞いておきながらその答えも待たずにもう一人の少女はベッドに上がっていった。

 軋む音がかすかに聞こえる。

 

「へっ……? あっ……え? ちょっと、リルっ……いひゃん!」


 その瞬間凄い速度で意識を戻したのか、艶のある声を上げた少女だった。


「おー、やわいもんだねぇ。それに他のとこも……うん、やわい」

「ちょっと、待ってどこ触ってんの……や、ん、あはは! や、やめて、おねが……おねがい」


 その手を起用に動かして、ベッドの少女の体を弄るもうひとりの少女。

 うずくまって必死に自分を守っている被害者。


「やめなーい」

 

 手を休めることをしない、確実に獲物を捉えるその手付きはもはや芸術。

 しばし捌かれ息が上がっているベッドの少女。


 さて、今ほどいじめられていたのはケモノの耳をもつ少女、みみこ。

 そして、今ほどいじめていたのは同じくケモノの耳をもつ少女、リルーシャ。

 二人はケモノミミが住む森に暮らす、同じケモノミミの双子の少女だった。


「リルぅ、もう少し優しく起こしてくれないかな……?」


 リルーシャにあちこち触られ、服も乱れながらむーっとした顔でリルーシャをみるみみこ。その目には涙が浮かんでいるのが見える。


「みみが悪いの。早く起きないから。てゆか、みみ、本当に朝が弱いね」

「え、うん……だって、お布団気持ちいいから」


 二人は双子ながら性格は真反対。ぽえぽえ天然パワーを放っているのは姉みみこ。そして朝は弱い。

 一方の妹リルーシャは、やや気が強く顔つきもみみことは違ってキリッとしている。そして何より。


「まぁいいんだけどさ。早く起きないからいっつもみみのムネ触れるし」


 みみこに対してはとてつもなく自由に行動を起こすのだ。結構みみこのことが好きのよう。


「ちょっ……もう! 寝込みを襲うのやめてっていってるのに……」


 顔を赤くしてぷんすこするみみこ。でもお花が飛びそうな形相で怖くもなければなんでもない。


「やめてほしかったらあたしより先に起きてね」


 にひひと笑いながら、手をわきわきとするリルーシャ。目がキラリと輝いていた。

 その顔に布団をかぶる仕草をするみみこはぷるぷると首を横に振っていた。


「……まぁいいんだけど。とりあえず、ご飯出来てるから食べよ? 起きて顔洗っておいで」


 なんだかお母さんのようなセリフをさらりと出して、それにはーいと返事をするみみこ。

 いたずら好きなリルーシャだが、意外としっかりした性格でもあり、二人の生活の家事を難なく行っていた。

 もちろんみみこもできない事はないのだが、なにぶんその天然さゆえの動きの緩さに、どうしてもリルーシャの方が先に手を出してしまう。

 今日の朝ごはんも、そんな早起きをしたリルーシャが手際よく用意をしていた。

 

「わぁ、美味しそう」


 どことなく間延びした声のみみこ。

 そんなみみこの目の前のテーブルに並ぶのはトーストとスクランブルエッグ、ウィンナーと野菜の朝の軽食といった具合だった。

 なかなかしゃきっとしないみみこに、ビシッと洗面所に指差しするリルーシャ。その勢いにそのままふらふらっと洗面所に歩いていくみみこ。ぽやぽやな姉を見送って、キッチンではミルクコーヒーを準備していた。

 この説明だけ聞けば、どっちが姉でどっちが妹やら。森ではいつも反対に見られているのだが、それも頷ける。

 

 どこかお姉さんを想像させる妹リルーシャ。

 どこかほっとけない妹を想像させる姉みみこ。

 

 そんな二人だけど、いつも幸せそうに過ごしているのは、誰から見てもわかることだった。

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