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とりあえず書いたシリーズ

パワー系侯爵令嬢は結婚したくない


 月明かりの下、焚火の炎がゆらゆらと燃えて灰色の煙が空へ昇っていく。


 その傍には4人の屈強な男達が剣を抜いて1人の女性を取り囲み、対する女性は両手を胸の前に構えてファイテングポーズを取っていた。


「へへ。大人しくしないと綺麗な体に傷がついちまうぜ?」


 ゲスな表情を浮かべた男達は女性が着るワンピースの下にある肢体を想像しつつ、剣先を向けて主導権を握ろうと凄んで見せる。


「…………」


 しかし、女性の表情は変わらない。悲鳴も上げず、それどころか真剣な表情で男の挙動をじっと観察していた。


 すると、次第に馬の走る音が聞こえてきた。


 5人の男と1人女性に向かってやって来るのは馬に乗った貴族風の男が2人。片方の茶色の髪を持つ男の後ろには獣人の侍女服を着た者もいて、彼女が「お嬢様です!」と大きな声を出す。


「貴様等ッ! その女性に触れるなッ!」


 たった今到着したばかりの貴族風の男性1人が、顔に焦りを張り付けながら馬上から声を上げる。


「私はフェディシア王国第二王子リディ・フィディシアであるッ!」


 男性は少しでも時間を稼ごうとしたのだろう。己の身分を晒し、相手の注意を引いた。


 この第二王子が取った行動は正解だった。女性を囲む男達は名乗りを聞くと身を固めた。


 何故この場に王子が? そう疑問を感じたのだろう。


 男達が女性よりも王子に気を向けたのも頷ける。フェディシア王国の第二王子といえば騎士団長並に剣の腕が立つ者だと有名だからだ。


 女性を囲んでいた男達は一斉に王子へと顔を向け、次に剣を向けた。


「へへ。動くなよ? この女がどうなってもいいのかよ?」


 この時代、男数名で女性を囲めば女性側は大した抵抗も出来ずに負けてしまうと考えるのが常識である。


 女性の抵抗などたかが知れている、ましてや品の良い貴族令嬢のような女性であれば猶更……そう考えたのだろう。


 しかし、彼女に限ってこの常識は当てはまらない。目の前にいる女性から視線を外すのは、最も愚かな行為であった。


 何故なら、彼女は――か弱き貴族令嬢ではないのだから。


「フッ!」


 軽く息を吐いた女性はファイティングポーズのまま、目の前にいる男の懐に飛び込んだ。


 彼女にとって絶好の間合いに侵入すると、左足を前にして、腰を捻り、右脇に右腕を絞って。


「ハァッ!」


 奥歯を噛み締めながらの一撃。繰り出したのはボディブローで、この女性が最も得意とする攻撃であった。


 仕掛けられた男は女性の行動を目で追うが体が反応しない。それほどまでに女性の踏み込みと殴り込む動作が早かった。


 明らかに素人ではない。明らかに()()()()ではない。


 ドゴン。


 強烈なボディブローが男の脇腹に突き刺さる。拳が壊れぬよう荒縄を巻いて握った拳が放つインパクトは、脇腹の肉を貫通して骨へと至る。


 この場にレントゲン写真を写す機械があったのならば、女性の拳が男の下部肋骨を粉砕して腹の中にある臓物をシェイクする瞬間が激写されただろう。


 しかし、中身を映さぬとも、その強烈な一撃の威力はこの場にいる全員がすぐに知る事となる。


「アパアアアアア!!??」


 ボディブローを喰らった男はくの字に体を曲げながら吹っ飛んでいき、地面を何度かバウンドしてようやく止まる。


 見舞った女性以外の全員が、男が飛んで行く様子を口を半開きにした状態で唖然として見送っていた。


「次ッ!」


 そう叫び、未だ唖然とする男の懐に潜り込む女性。


 一体彼女は何者なのか。一体これはどういう状況なのか。それを語るには数日前まで遡らなければなるまい。



-----



 温かい日の光が差す庭のベンチに座りながら本を読む美しい女性がいた。


 太陽の光を反射させてキラキラと輝く長い銀髪。着ているシルクのワンピースと同じく綺麗な白い肌。


 唇には薄く口紅が引かれ、本に書かれた文字を追う瞳はサファイヤのような美しい青。


 本を持つ手は細く、ワンピースの裾から出る足も同年代の女性が見れば羨むほどに仕上がっている。手足が完璧であれば、スタイルも同様に素晴らしく。


 貴族家の女性が見たら「完璧で誰もが理想とする貴族令嬢」と言うだろう。男性が見れば「物語から飛び出して来たようなお姫様」と言うに違いない。


 そんな美少女の名はアリシア・サーディアス。


 ここ、サーディアス侯爵領を治める侯爵家の長女であり、今年で17になる彼女はあまりの美しさから『妖精姫』と異名を持つ女性であった。


「お嬢様。着替えの準備が出来ました」


 侯爵家の庭で本を読んでいたアリシアは、侍女のリム――灰色の尻尾と狼耳を持つ獣人少女――に声を掛けられると音を立てずに本を閉じた。


「ありがとう」


 そう言って立ち上がったアリシアの表情は無表情に近い。彼女は妖精姫の異名を持つほど美しいが、昔から顔に感情が出ない事は有名であった。


「はい。お部屋に参りましょう」


 と言っても、彼女の家族や彼女が生まれた頃から共に過ごす同年代の侍女リムを筆頭に家の者達はあまり気にしていない。


 アリシアの顔に表情が有ろうが無かろうが、彼女と彼女の家族を敬愛する従者達にとって些細な問題。


 長く共に過ごした時間が長く、アリシアが感情を表現せずとも従者達全員が彼女の気持ちを理解できていた。


 自室に戻ったアリシアはリムの助けを得ながら服を着替えた。


 真っ白のワンピースから汚れても良い服に。


 白い長袖シャツを着て、紺色のオーバーオール。最後に麦わら帽子を被れば完成である。


「行きましょう」


「はい!」


 元気よく返事したリムと一緒に部屋を出て、屋敷の中にいた他の従者達に声を掛けながら外に向かう。


 外に用意されていた侯爵家所有の馬に跨り、彼女達は屋敷の敷地を出て、街に固まって作られた商業エリアや住宅エリアを抜け、街の西側にある門から街の外へ。

 

 汚れても良い服に着替えたアリシアがリムの共に目指した場所は、街のすぐ隣に作られた農業地であった。


「私は挨拶してきますね」


「ええ」


 それぞれ馬を降りると、リムは畑から少し離れたところにある小さな家へと向かう。


 一方、主であるアリシアは畑の傍にあった道具小屋から鍬と農作業用の長靴を取り出すと、その場で靴を履き替えてから手袋をはめて鍬を肩に担ぐ。


 ついでに首にタオルを掛ければ完璧だ。


「…………」


 彼女は表情を変えぬまま畑に入ると自然な動作で鍬を振るった。


 繰り返しになるが、彼女は侯爵家の令嬢である。


 侯爵家の領主ともなれば他国との国境を守護するべく、国境付近の都市を守護していたり。もしくは貿易の要になるような土地を任される事が多い。


 王国経済、もしくは国防の要を任せられる家の発言力は王都でも高い。


 アリシアの家であるサーディアス家も、他国との国境線を守護せよと国王から命を受けている名家の1つ。


 東側にある帝国の壁となり、サーディアス家が所属するフェデシア王国国防の要ともあって王都では大きな発言力を持っていた。


 この重大任務を代々受け継ぐ家はサーディアス家も含めて4家あるが、中でも特に国民からの人気と王家からの信頼を得ているのがサーディアス家である。


 その理由は、東にある帝国が王国を侵略しようとした時のこと。


 帝国軍はサーディアス侯爵領に侵略を開始し、領土を蹂躙して真っ直ぐ王都を目指すつもりだった。


 だが、帝国の目論見は早々に瓦解。サーディアス家の先代当主、アリシアの祖父にあたる人物が見事に侵略を阻止したからだ。


 正確に言えば、この帝国の侵略を阻止したのはサーディアス侯爵軍と周辺貴族軍の混成貴族軍であったのだが……。


 特に帝国軍の首を獲ったのがサーディアス侯爵軍というワケである。


 内訳は侯爵家所属の騎士が5万、領土内に住む平民の立候補によって組織された義勇兵が10万と少し。


 正規兵の2倍を越える義勇兵が集まったのは侯爵家が昔から善政を敷き、領民から愛されている証拠だろう。


 愛し、愛され。領民の力を得た先代サーディアス侯爵は共に力を振るい、帝国軍の多くを殲滅。後詰として控えていた周辺貴族軍も加わって帝国軍を退けるといった結果に終わる。


 この活躍が王都にも轟き、サーディアス侯爵家は領地だけではなく王都でも絶大な人気を誇るようになった。


 のだが……。

 

 ザック、ザック、と鍬を振るい土を耕すアリシアの姿は、とてもじゃないが大人気侯爵家の令嬢とは思えないだろう。


 しかもその軽快な動作は、とてもじゃないが素人には思えない。


 鍬を下ろしてその場を耕し、背後に顔を向ける事無く真っ直ぐ一歩後ろへ下がる。そしてまた鍬を振るう……と、単純ではあるが素人にありがちな斜めに体が進んでしまうといった事は無く。


 ザック、ザック、と真っ直ぐ端まで耕したら折り返し。また真っ直ぐ耕したら折り返し。


「ふう」


 小さい畑ながら、一枚終わらせるのに20分と掛からなかった。若さ故の体力だけが理由とは思えない早さである。


「お嬢様~!」


 アリシアが鍬を下ろし、首に掛けてあったタオルで汗を拭っていると家の方向からリムの声が聞こえてきた。


 顔を向けるとリムは家に住む老夫婦と共にいて、アリシアへ手を振りながら笑顔を浮かべていた。


「アリシア様、もう始めていたのですか」


「いいえ。大丈夫よ」


 この老夫婦は元々侯爵家に勤めていたが今は引退した夫婦であった。引退後はこうして畑を世話しているが今でも侯爵家との交流は深い。


 とはいえ、作業をしていたアリシアを見るなり「アリシア様に申し訳ない」と慌てて農具を取りに行こうとする老人だったがアリシアが手で制す。  


「いや、しかし……。アリシア様に農作業をしてもらっているだけでも申し訳なく……」


「いいえ。2人にはお世話になっているもの。街の男性がお父様と魔物退治に出てしまっているのだから、私が皆を助けるのは当然だわ」


 なぜ彼女が農作業を手伝っているかというと、この老夫婦の畑を共に世話する農夫達がアリシアの父と共に魔物退治へ向かってしまったからであった。


 街から西へ向かったところで大繁殖した魔物が発見され、侯爵騎士団を投入するも片付けや魔物の死体から獲れる素材運搬が間に合わず。


 一時的であるが街の若い衆の手を借りるという事態になっていた。


「領主の仕事は領民が安全に暮らせるようにする事よ。でも、今は家の力不足で領民の手を借りてしまっているわ……」


 その余波で老夫婦の畑作業が終わらないとなってしまい、領主家が原因であると言ってアリシアは先週から周辺の畑作業を手伝っていた。


 栽培していた野菜は収獲を無事に終えたものの、次の種まきに向けて畑をそのままにしておくわけにもいかず。


 収獲が終わった後も畑に来ては耕すという作業を続けているのが現状だ。


 勿論、いつもはアリシアと共に魔物退治に向かわなかった農夫達も作業しているが、今日はアリシアが午前中に予定があって時間がズレてしまっていただけ。


 1日くらい参加しなくても、と老夫婦に言われたものの、アリシアはそれを良しとせず終わるまではキッチリやると決めていたようで。


「訓練にもなるし丁度良いわ」


 未だ遠慮する老夫婦に向けて、少しだけ口角を上げたアリシア。付き合いが長い者が見れば彼女が笑っていると気付く。 


 すると、彼女の手を取ったのは腰の曲がった老婆。彼女は口をむにゃむにゃとしつつ、優しい笑顔を浮かべた。


「ええ子じゃ。ほんに、アリシア様はええ子じゃの」


「本当にご立派ですぞ。先代様も褒めて下さっているに違いない」


 まるで孫を見るかのような笑顔を向けて老夫婦はアリシアに感謝した。


 きっと彼等はアリシアが農作業を手伝わなかったとしても文句は言わなかったろう。魔物の恐ろしさを知っているし、魔物から獲れる素材は領民を潤すと知っているからだ。


 それでもやはり彼女が手伝ってくれるのは嬉しい。作業が進むからではなく、老夫婦にとってアリシアは侯爵家令嬢でありながら孫のような存在と思っているからに違いない。


 3年前に病でこの世を去った先代当主から意思と想いを受け継いで善政を維持し続ける現当主。


 そして、アリシア。


 サーディアス家は今でも領民に愛され続けている、といったところか。


「ほほほ。さぁ、爺も頑張りますぞ」


 アリシアと同じく鍬を持った老人は畑に入り、草刈鎌を持った老婆も雑草取りを開始する。


「じいやもばあやも無理しないで」


 アリシアもまた鍬を持ち、老夫婦と共に作業を始めた。



-----



「アリシア様。今日は終わりましょう!」


 畑を耕していると少し遠くにいた老人が声を上げると同時に腕を振る。


 静かに頷いたアリシアは最後に鍬を振り下ろすとタオルで汗を拭って畑を出た。その足で老夫婦のいる小屋の近くに掘られた井戸まで行くと、リムが汲んでくれた水桶に両手を突っ込んだ。


 両手で掬った水で顔をバシャバシャと洗うと、リムが新しい真っ白なタオルを彼女に渡す。


 丁寧に自分の顔をタオルで拭くと、すぐ近くには老夫婦の笑顔。釣られてアリシアの口角が少し上がった。


「アリシア様。ありがとうございました。後は我々で何とかなります」


「本当? 無理しないでいいのよ?」


 老人の体を気にしているのか、アリシアは「明日も来る」と提案するが老人は笑顔で首を振る。


「いえいえ。本当に大丈夫です。残りはあと2枚ですし、種撒きは数日先ですから」


 その頃には他の農夫も戻って来るだろう。そう言って、老夫婦は揃って頭を下げる。


「困ったらいつでも言ってね。また手伝うから」


「私もお手伝いしますよ!」


 アリシアと尻尾をぶんぶん振りながら言うリムに老夫婦は嬉しそうに笑い、老婆は彼女達の手を優しく握った。


「ええ子じゃの。ほんにアリシア様もリムもええ子じゃ」


「本当だなぁ。ああ、そうだ。これをお持ちになって下さい」


 老人は「リムちゃん、持てるかい?」と言って彼女に籠に入った野菜を手渡した。


 どうやら先日獲れた野菜らしい。料理長に渡せば喜ばれるだろう。勿論、アリシア達も美味しい野菜を受け取って嬉しそうであった。


「ありがとう」


「ありがとうございます!」


 アリシアとリムも礼を言うと道具を小屋に仕舞って靴を履き替えてから馬に跨った。


 2人は老夫婦に別れを告げて、来た道を戻って屋敷を目指す。


「おや、アリシア様。畑は終わったのかい? 気を付けてお帰り下さいね!」


「アリシア様にリムちゃん、こんばんは!」


「アリシア様、こんばんは! ……やった! 手を振り返してくれたぞ!」


 帰宅途中、街の人から何度も声を掛けられるがどれも好意的なものばかり。


 青果店を営む女女将、メインストリートを歩いていた大工の親方、仲間と共に荷運びをする青年。年齢性別問わず、誰もがアリシアに声を掛けて気さくに手を振る。


 対するアリシアも口角を上げながら挨拶と一緒に手を振り返して。


 別の街から来た者が見れば「侯爵家とお嬢様は愛されているんだな」思うに違いない。領主と民、お互いの信頼関係がよく分かる1コマだろう。


 侯爵家に到着すると馬を係の者に預け、リムが開けた玄関を通って屋敷の中へ。


「お帰りなさいませ、お嬢様」


「ただいま戻りました」


 帰宅を知ったメイドと執事達が揃って出迎え、アリシアはいつも通りに帰宅の挨拶。


 メイドと執事に挨拶をするのは勿論であるが、外から帰ったら欠かさず行う儀式があった。


 それは亡くなった母への挨拶だ。屋敷の廊下に飾られた母の肖像画の前で「ただいま、お母様」と小さな声で言いながら、絵の中にいる母に語り掛ける。


「お嬢様……」


 リムを含め、その姿を見守るメイドと執事達はいつも心がハンマーで叩きつけられるような思いをしていた。


 アリシアの母は4年前、アシリアの弟を出産した際に亡くなったのだ。


 待望の世継ぎ(男児)が生まれた事は喜ばしいが……。失った女性の存在も大きい。


 同時にアリシアがあまり顔に表情を出さなくなったのも母が亡くなってからである。恐らく彼女は聡明だった母の代わりになろうとするが故に心を律して感情を制御しているのだろう。


「ねえさま」


 母に語り掛けるアリシアと彼女を見守る者達がいる間に、廊下の先から早歩きでやって来たのは彼女の弟。


 自分と同じく母から受け継いだ綺麗な銀髪。容姿は母と父の良いとこ取りをしたようで、今の年齢では美少年にも美少女にも見える。


 どちらにせよ将来はとんでもなく美青年となって、侯爵家に相応しい跡取りとなるだろうと使用人達の間では熱の籠った感想が語られていた。


「ただいま。エドワード」


 アリシアは弟を抱き上げるとぎゅっと抱きしめる。抱きしめられた弟も大好きな姉――母親代わりとなる姉を笑顔で抱きしめ返した。


「とうさまは?」


「お父様はまだ仕事中なの。しばらく家を空けると言っていたでしょう?」


 屋敷にいない父がどこに行ったのかと問われ、アリシアは弟に誤魔化さずしっかりと聞かせた。


 そっかー、と笑った弟に笑い返し、柔らかい頬にキスをする。


「おなかへったね」


「ふふ。もうすぐ夕食よ。お姉様はお風呂に入って着替えて来るから待っててくれる?」


「うん!」


 弟をメイドに預け、自身は風呂場へと向かう。体を綺麗にした後に弟と一緒に夕食を食べる。


 食後に弟とお話をした後、彼女は一緒にベッドに入ると彼が眠るまで隣にいて、愛する弟の寝顔を見つめていた。



-----



 妖精姫と異名を持つアリシアの朝は早い。


 彼女は決まって朝の5時に目を覚ます。まるで自立型のゴーレムかと言われてもおかしくないくらい、毎日正確に目を覚ますのだ。


 起床後は部屋に置かれたベルを押して「チン」と鳴らす。すると、外に控えていたリムが入室してきて朝の挨拶。 


「おはようございます。お嬢様」


「おはよう、リム」


 アリシアは寝間着を脱ぐとリムが用意してくれたシャツとズボンに着替えた。更に靴はブーツを履いて、今のアリシアが身に着けるのは「運動が出来る恰好」とよく例えられる服装一式である。


 着替えたアリシアは屋敷の外へ。


「アリシア様、おはようございます!」


「おはようございます」


 同タイミングでやって来た侯爵家騎士団新兵と朝の挨拶を交わす。


 総勢100名の新米騎士+お嬢様1名。この団体による朝のランニングが開始される。


 ランニングコースは侯爵家の屋敷から街の入り口までの1本道。屋敷が街の奥、少し丘になった場所にあるので街を端から端まで一直線に走るといった具合だ。


「では、行きましょう」


 アリシアはそう言って先頭を走る。その後ろを新米騎士達が付いて行く形である。


「あら。アリシア様、騎士の皆さん、おはようございます」


「おはようございます」


「おはようございます!」


 ランニング中、メインストリートに入ると店の準備をしていた人達に挨拶され、アリシアは余裕の表情で挨拶を返す。


 対し、新米兵士達も揃って挨拶を返すが中には苦しそうな顔の者達もいた。


 ランニングコースを往復し終えると、屋敷の裏庭で5分の休憩。息を整え、体の熱が引かぬうちに裏庭から隣の訓練場へ移動する。


「アリシア様。おはようございます!」


「おはようございます」


 朝修練の準備を終えたばかりの副団長と老騎士数名へ挨拶を交わし、新米騎士達は副団長の指示を受けて修練を開始する。


 剣の素振りや打ち込みなど、騎士として基本となる修練を毎朝繰り返すのだ。


 アリシアも祖父の言い付けを守り、幼い頃から朝修練への参加が毎日の日課だった。


「鋼の精神は鋼の体に宿る」


 口癖のようにそう言って、毎日修練を欠かさなかったサーディアス家先代当主。


 民と共に帝国軍の多くを屠った豪傑の名はトーマス・サーディアス。


 またの名を『剛血拳』と呼ばれた王国の英雄。異名の中に拳とあるように、サーディアス家は己の拳を武器にして戦う者が多い。


 先代、現当主、そしてアリシアも。


 剣を握らぬアリシアは訓練場の片隅に立つと、やや足を広げて腰を落とす。


 そして、握った拳を真っ直ぐ打ち出した。


 1、2、3……と声を出しながら型を崩さず正確かつ丁寧に。守るべき民達、支えてくれる民達を想いながら感謝の正拳突きを200回。


 正拳突きが終わると今度は藁で出来た案山子に革の補強と革鎧を着せた物を用意。


 己の拳が壊れぬよう、祖父からもらった愛用の修練用グローブを装着して。


「フッ――」


 まずは案山子を敵と想定して、軽くステップを踏みながらワンツーパンチ。


 次は正確かつ理想的な正拳突き。


 体の芯が熱を帯びて来るような感覚を感じたところで、アリシアは素早くステップを踏みながらパンチを繰り返していく。


 ワンツー、ワンツー……。そして、最後に右腕を素早く、コンパクトに振ったフックを案山子の顔に見舞う。


 まるでカミソリフックだ。スパン、と顔の皮が切れるように案山子の顔の一部が切れて、千切れた藁がアリシアの前に舞った。


「ふむ。身体強化無しでその威力になりましたか」


 近寄ってきたのは副団長であった。彼は顎を手で摩りながら「打撃音が先代様に似てきましたね」と呟いた。


「ありがとう。でも、まだまだです」


 首を振って否定するアリシア。彼女がそう思うのも当然かもしれない。


 彼女の祖父であるトーマスは身体強化なしで鉄をも貫き、身体強化を纏えばアダマンタイトすらも粉砕すると言われた剛の者。


 帝国軍の侵略時には身一つ、拳一つで帝国軍人を粉砕。両手に装着した手甲は相手の血で真っ赤に染まる。


 故に剛血拳。


「私はエドワードを守らねばなりません」


 母が己の命と引き換えに生んだ弟を。お姉様と言いながら後ろをついて来る可愛い弟を。


 母のように己が命を引き換えにしてでも守らねばならぬ。彼女は母が亡くなった日に、生まれたばかりの弟を抱きながら決意したのだ。


「アリシア様……」


 新しい案山子を立て、再び拳を振るうアリシアの背中を見ながら副団長はきつく口を閉じた。


 踵を返し、元の位置に戻ると彼も木剣を手にして打ち込みを始める。彼の顔はいつになく真剣で、打ち込みの激しさもいつもより増していた。



-----



 朝修練が終わると、アリシアは体を拭いてから弟のエドワードと共に朝食を摂る。


 朝食が終わるとアリシアもエドワードも勉強の時間だ。


 といっても、どちらも本格的な勉強はしない。エドワードは読み書きの練習。アリシアは既に基礎教育と政治や領地運営に関する勉強は教わっている。


 今は来年入学する予定の王立学園で学ぶことの予習をしているが、そちらも既に完璧に近い。


 サーディアス領まで来てくれた高名な文官による確認を毎日しているが「もう教える事はない」と言わせるほどの知識を得ていた。


 アリシアとしては王立学園に入学せず、領地に残って父の補佐をしながら弟の教育をしたい。だが、貴族令嬢は18になると王立学園に入学して貴族としての教養と政治学を学び、同時に結婚相手を探すのが仕来りだった。


 特に後半の結婚相手を探すという部分。これは貴族令嬢にとっても貴族家にとっても重要な事、とされるのが貴族界隈では一般常識。


 余談ではあるが、貴族男子は14歳から学園に入学して様々な知識を学ぶ。貴族令嬢はどちらかというと顔繋ぎや先ほど語った通り婚約者探しといった面が重視されている。


「お嬢様はどんな方と結婚したいですか?」


 リムがニコニコ笑いながらそう問うが、問われた本人は表情を変えない。いや、少しだけ眉間に皺が寄っていた。


「結婚しなきゃダメかしら?」


「えぇ……。お嬢様、結婚しないんですか?」


「結婚相手を探すならエドワードの相手を探したいわ。私が結婚しなくても領地はエドワードが継ぐのだし……」


 だったらエドワードを教育して、準備した方が家にも領地にも領民にも良いじゃないか、と。


「私は今、幸せよ。お父様がいて、エドワードがいて、リムがいて、みんながいて……。それだけで幸せだわ」


「お嬢様! リムもお嬢様と一緒にいて幸せですよぉ!」


 リムが思わずアリシアに抱き着くと、アリシアは「ふふ」と声を漏らした。


「でも、お嬢様が学園に行ったらモテモテでしょうね」


「そうかしら?」


「そうですよ! 妖精姫への求婚が毎日ひっきりなしに来ますよ!」


 リムの言い分も間違いではないだろう。アリシアは本当に美しい。それこそ、王国内で5本の指には入るほどに。 


 思春期真っただ中、盛りの男子にはたまらぬほどの美貌であるのは間違いない。アリシアをエスコートする機会が生まれでもしたら、権利を巡って貴族男子共は血みどろの戦争をおっぱじめるだろう。


「それは面倒だわ……。いっそ、男装しようかしら」


「それはそれで貴族令嬢から……。いえ、男装入学なんて無理ですけど」


 アリシアが男装したらそれはそれで問題だ。きっと世の貴族令嬢達が本物の男子そっちのけでアリシアに迫る未来が容易に想像できる。


「一番は入学しないことだけど、お父様は入学しなさいって言うのよね。婚約者探しも含めて、侯爵家は仕来りを守るべきという考えも理解できるけど……。」


「貴族にとっては伝統的な仕来りですし、そもそも旦那様はお嬢様に幸せな結婚生活を送ってほしいと願っていますから」


「でも、お父様は私に婚約者が出来たら手合わせするって言っていたわ」


 彼女の父は確かに娘の幸せを願っている。だが、腑抜けには渡せないと豪語しており、婚約を交わす際は「拳を交えて、納得できたら」と言っているようだ。


 勿論、彼女の父も祖父と同じく『剛血拳』を継ぐ者として武勇轟く武人である。今頃は大量発生したという魔物を拳一つで粉砕しているのだろう。


 そんな人物と戦っても良いと言える旦那候補は果たして現れるのだろうか。


「あはは……。旦那様の気持ちも分らんではないですが」


 そう言いながらリムの狼耳がへにょりと垂れて、顔には苦笑いを浮かべた。 


 彼女としては無茶苦茶な条件だと思う反面、確かに中途半端な人物にお嬢様を渡せないという想いもある。


 むしろ、侯爵家に仕える者から領民まで皆がそう思っているだろう。敬愛する侯爵家令嬢を泣かせようものなら領民が奮起して泣かせた者の家まで雪崩れ込みそうだ。


「本当にどうしようかしら……。あ、そろそろ修練の時間ね」


 アリシアは立ち上がると再び服を着替えて訓練場へ向かうのであった。



-----



 領主の街から西にある村には1000を超える騎士と街で名乗りを上げた義勇兵が魔物の死体を運び入れていた。


 ここは数日前からサーディアス侯爵家と義勇兵の拠点となっている村で、村の傍にある森に大量発生した魔物を狩っては村に死体を運び入れて解体作業を行っている。


 魔物の死体は利用価値が高い。今回大量発生した熊の魔物も皮から爪、内臓に至るまで全て素材となる。


「お館様。本当に大量ですな」


「うむ。全て素材にして冒険者組合を通して販売しよう」


 森の中で狩りを行い、一時補給の為に村へ戻った侯爵家当主――ウィリアムと騎士団長は運ばれて行く魔物の死体を見送りながら頷き合う。


「今回参加した義勇兵には手厚い慰労金を与えねばな。残りは……。そうだな、領内の街道を整備するか。あとは農地の開墾もせねばならないし……」


 ううむ、と顎に手を添えながら金の使い道に悩むウリィアム。他の領主が聞けば「何とも贅沢な悩みだ」と言うに違いない。


「しかし、この大量発生。何か作為的な物を感じますな」


 騎士団長は目を鋭くしながら森を睨む。


「確かに。ここまで大量発生するのは異常だ。しかもクリムゾンベアだろう?」


 クリムゾンベアとは名の如く紅色の毛を持つ狂暴なクマの魔物である。繁殖をするのは春であると言われ、子熊が生まれても1匹か2匹と高名な魔物学者は語っているが。


 現在、サーディアス領で発生しているクリムゾンベアの大量発生は明らかに通説と違う。


「大陸で異常気象も起きておりませんし、生態系が崩れたような気配もございません。むしろ、これが領内の生態系を崩すものとなりましょう」


「だな」


 当然ながら魔物の生態に詳しい学者を冒険者ギルドから派遣してもらい、共に森にまで入ってもらった。


 討伐と同時に調査を進めても原因は判明せず。学者は「ただ個体が急に増えたとしか判断できない」と口にする。


「帝国の仕業でしょうか?」


「帝国が魔物を操る技術を開発したと? そうも考えられるが……。今は断定する材料が無いな」


 ただの自然現象なのか。それとも敵国の思惑が混じるのか。それは今判断できない。


「サーディアス卿!」


 騎士団長と共に話し合っていると、街道の方向から声が掛けられた。


 顔を向けると2人の青年が馬に乗って村へとやって来るのが見える。青年達の姿を見たウィリアムの目が驚くように見開かれた。


「リディ殿下!? それにバルトリア卿まで!?」


 ウィリアムと騎士団長はやって来た青年2人が大物であると知って、慌てて下馬する。


 1人はウィリアムが口にした通り、第二王子のリディ。


 綺麗な金色の髪と緑色の瞳。母譲りの中性的な容姿も相まって王国女子からは第一王子と揃って大人気の王子様である。


 整った容姿と確かな血筋、それに加えて国の騎士にも負けぬ剣の腕。王子じゃなければ確実に騎士団長に抜擢されていた、と言われるほどの武力を持つ。


 第二王子を護衛するように付き添っているのは王都近衛騎士団副団長であるカルロス・バルトリア伯爵。


 こちらも王子に負けず劣らずの美男子様。茶色の髪と少々切れ長の目。若くして近衛の副団長に抜擢されるほど剣の腕を持つイケメン貴公子と言うべきか。


 王子であるリディは勿論の事、2人共王国ではたいへん有名な2人である。そんな2人が辺境の侯爵領までやって来たのは一体何事なのだろうか。


「サーディアス卿、お久しぶりです」


「閣下、ご無沙汰しております」 


 リディとカルロスも下馬をすると頭を下げていたウィリアムに挨拶した。リディはフランクに手を挙げただけだが、爵位が下であるカルロスは胸に手を当てる騎士礼を取って頭を下げる。


「殿下、如何しました? 我が領地へ何か……?」


 一体何の目的で2人はやって来たのか。さらには王子と近衛副団長の2人きりでやって来たというのもウィリアムの疑問に拍車がかかる。


「ああ、魔物の――」


「閣下。ご安心下さい。いつもの病気です」


 リディが訳を話そうとするが、彼に割って入ったのはカルロスだった。


 カルロスはため息を零しながら「病気」と言う。それを聞いたウィリアムも「ああ……」と額を手で抑えながらため息を零した。


「殿下。魔物と戦いたいからといって我が領まで来ないで下さい……」


 ウィリアムは頭痛がし始めたのか、眉間に皺を寄せながら額を抑える。


 カルロスは小声で「申し訳ない……」と謝罪するが、


「良いじゃないか! 私も強い魔物と――」


「よくないッ!」


 もう我慢の限界だと言わんばかりにカルロスはリディの脇腹をぶん殴った。ふぐぅ! と悲鳴を上げて脇腹を抑えるリディと怒りの形相で睨みつけるカルロス。


「申し訳ありません。城を抜け出し、追いかけるのが精いっぱいで。現地に行ったら満足するだろうとここまで敢えて連れて来ました」 


 カルロスはウィリアムに「もう既に討伐は終わっているのでしょう?」と付け加えながら成り行きを語った。


「そうだな。もう粗方終わっている。あとは騎士団の半数を残して引き上げようと思っていたところだ」


「クソ! カルロス、だから途中で休憩しようとか村の様子を見ようとか言っていたんだな!?」


 リディを戦わせぬよう時間稼ぎをする為か、カルロスは無駄に道中で時間を使ったらしい。


「ふん。馬鹿者め。気付かぬ方が悪い」


 2人は同い年で王立学園の同級生ともあってか、たまにこういった軽いやり取りが行われるのは有名だった。


「しかし、お二人ともどうしますかな? このまま見送るのも些か心苦しいので我が屋敷で疲れを取ってから帰りますか?」


 2人の様子を見て苦笑いするウィリアムは、せめて家で休んで行ったらどうかと誘う。


「よろしいのですか?」


 カルロスが問うと、ウィリアムは頷く。


「ええ。ただ、私は部下に指示してから参りますので後を追う形になってしまいますが……」


 指示している間、王子に対して何も持て成す事が出来ないのは心苦しい。ならば先に行ってもらって屋敷で寛いでもらった方が良いだろうと判断したようだ。


「屋敷に到着しましたら、うちの訓練場で一戦交えますか。殿下もストレスが溜まっておいででしょう?」


 ククク、と怪しく笑うウィリアム。


 確かに剣の腕が立つと言われるリディだが、さすがに英雄侯爵の子と呼ばれるウィリアムを相手にするには些か荷が重いか。


 顔を引きつかせるリディだったが、逆にカルロスは満面の笑みを浮かべていた。


「おお! 閣下! 大変うれしい申し出でございます! これで殿下も満足して下さるでしょう!」


 ニッコニコの笑顔を浮かべて、隣に立つリディの顔を見るカルロスは「よかったな!」と彼の背中を強く叩いた。 



-----



 午前中の修練を終えたアリシアはリムと共に街へ出た。


 領主の娘たるもの、街の様子を見て問題が起きていないかを調査する事も大切な仕事である。


 街のメインストリート沿いを歩き、店舗式の店から公園に設営された屋台や露店、街の中央にある巨大市場などの商業関係を見て回る。


 その後、街にある教会や孤児院などにも顔を出して問題が無いかを聞いて回った。


「問題なんてございませんよ。本当に侯爵様は我々の事を考えて下さる」


 皆が口を揃えてそう言うのはサーディアス家が善政を敷いているからだろう。なるべく領民が暮らしやすいようにと道を整え、街を整えて。


 職に困った者には一時的な税の免除、親を失くした子が路頭に迷わぬよう孤児院を建てて、満足な食事が摂れるようにして。


 二月に1度は必ず街の組合長達と会合を開いて状況を確認する。昔から行われてきたやり取りが続いているからこそ、お互いに信頼し合っているのだ。


 故にアリシアがレムだけを連れて街を歩こうと何も問題は起きなかった。


 アリシア達が街を見て回っている間、領民の皆がアリシアを護衛しているようなものである。


 故に……油断してしまったのだろう。いつもと変わらぬ街の雰囲気といつもと変わらぬ日々は心に確かな安らぎを与えるが、同時に慢心と油断を生む。


「ん?」


 街を歩いているとリムの頭に生える獣耳がぴくぴくと動いた。彼女は足を止めると真横にあった路地に顔を向け、じっと奥を見やる。


「リム、どうしたの?」


「なんか、鈴の音が……」


 急に足を止めたリムに怪訝な表情を浮かべるアリシア。どうしたのか、と問うてもリムは明確な答えを口にしなかった。


 そのままフラフラと路地の中へ入って行ってしまう。


「リム!」


 アリシアはリムを慌てて追いかけ、彼女の肩を掴むが歩みは止まらない。


「リム、待って! 一体どうしたの!?」


 虚ろな目をしたリムはアリシアの声を無視して路地の奥へと進んで行った。路地の奥、少し開けた場所に到着すると1人の男がニヤつきながら立っていた。


 領民の顔は大体覚えているアリシアだが男の顔は見た事がない。というよりも、立っている男はフェディシア王国民とは違った顔の造りである。


「はは。こりゃ上物が釣れたな」


 男は手に持っていた鈴をチリンと鳴らすと、リムはふらふらと男に近寄っていく。男の傍にリムが到達すると、男は彼女の肩を抱いていやらしい顔を浮かべた。


「貴方達! 何者ですか!」


「そちらの嬢ちゃんには鈴が効かないか。まぁいい」


 アリシアの問いを無視し、男はリムの肩を抱いていた腕を下ろすと今度はナイフを取り出してリムの喉に突き付けた。


「でけえ声を出すなよ? 大人しく捕まってもらおうか。じゃないと、この獣人の嬢ちゃんは酷い事になっちまう」


 男がアリシアに脅しをかけるとメインストリートの方向から更に4人の男が現れる。中には商人風の恰好をした者もいて、それを見たアリシアは男達が「人攫い」であると察したようだ。


「くっ!」


「おおっと! 動くなよ! ナイフを持つ手に力が入っちまうぜ!」


 男はアリシアへ見せつけるように、ナイフをリムの首に押し当てた。切れ味が良いのか、薄皮が切れたリムの首から一筋の血が垂れる。


「……わかりました」


「それでいい」


 ゲスな笑みを浮かべる男は仲間に「縛れ!」と命じて、アリシアの両手を荒縄で拘束する。


「しかし、上物が手に入ったな。獣人の女が釣れればいいと思っていたが……。まさか噂の妖精姫が手に入るとは」


「こりゃ高く売れるぜ」


 捕まったアリシアとリムは薬剤のような液体が染み込んだ布を顔に押し付けられて意識を失った。



-----



「お嬢様!」


 寝起きのような感覚を覚える中、アリシアの意識はリムの声によって覚醒していく。


「リ、リム……?」


「お嬢様……」


 目を開けると目の前には泣いているリムの顔があった。


 アリシアは意識を失ってしまっていたのだとようやく気付く。


「ここは……?」


「私達は馬車に乗せられて移動しているようです」


 確かに周りを見渡せば帆馬車の荷台のようだ。腕を拘束されたまま寝転ばされ、馬車は街道を走っているように思えた。


「どうして街を出られたのかしら」


 出入りの際は荷物チェックをするはずだが、一体どうしてと疑問を口にするが謎は解けないまま。


 それよりも今はこの状況をどうにかする方が先だろう。


「リム、縄を解きましょう」


「はい!」


 まずはアリシアから解くとリムが言い出し、リムはアリシアに手を向けるよう言った。


 アリシアはごろんと寝ている体勢を変えて、背中をリムに向ける。するとリムは口を使って解こうと縄に噛みついた。


「んぎぎ……」


 悪戦苦闘するも縄を解くことに成功。自由になったアリシアが今度はリムの縄を解く。


 拘束が解けた2人はゆっくりと荷台の入り口に近付いて、閉じられていた帆の隙間から外を覗き見た。


 馬車は街道を移動しているようだ。幸いにして後ろ側に男達の監視は無い。


「リム。貴女が脱出して街まで走って」


「ですが、お嬢様は……!」


 リムは主を置いて行けない、一緒に脱出しよう、と言うがアリシアは首を振った。


「私はそこまで足が速い方じゃないわ。リム、獣人の貴女の方が速い。それに彼等が持っていた鈴を使われたらまた捕まってしまうわ」


 だったら先に逃げてもらい、街まで行って侯爵家の騎士に知らせてくれとアリシアは提案した。


「ですが……! それではお嬢様が!」


「大丈夫。私は戦えるから時間稼ぎにはなるはずよ」 


 さぁ、行って。


 帆を止めていたロープを解き、隙間を作るとリムを送り出した。


 獣人である彼女はヒューマンのアリシアよりも身体能力は高い。その証拠に走る馬車から飛び降りても難なく着地する。


 馬車に残ったアリシアを心配そうに見た彼女だったが、受けた使命を思い出すかのように街道を走り出す。


「お願いね、リム」


 残ったアリシアも小さく呟きながら彼女の背中を見送った。



-----



 夕方を過ぎた頃、馬に乗ったリディとカルロスは街の入り口を目視できる距離までやって来た。


 相変わらず巨大で活気がある、と街の外まで聞こえてくる喧騒に2人は笑顔を浮かべていたのだが……。


「なぁ、カルロス。あれはなんだ?」


「え?」


 リディが指差した先には、東へ続く街道から獣人の女性が走って来るのが見えた。


 その走りっぷりは必死な様子で、転びそうになるも両手で地面を叩くようにして再び走り出す。 


「あの服装、侍女か……?」


 しかも服装が貴族に仕える侍女服のようで。侍女が街の外を懸命に走る事など通常時にあるだろうか。


 怪訝な様子で見ていた2人だが、街の入り口に到達した侍女は入場門を守る騎士に近付くと地面に倒れ込むように崩れ落ちた。


 慌てて騎士達が彼女を支え、支えられた女性は東の方向を指差して何かを叫んでいるようであった。


「行こう」


 ただ事ではない、そう感じたリディがカルロスに言って街の入り口まで向かう。


「どうかしたか!?」


 リディは王家の紋が入った剣を見せ、自分は第二王子であると身分を明かす。


「え、あ!? 王子殿下!?」


「よい。その女性が慌てていたようだが、何かあったのか?」


 リディは慌てて態度を改める騎士達を手で制し、肩で息をしながら荒い呼吸を繰り返す女性――リムを見た。


「ひ、人攫いに……。お嬢様が人攫いに攫われてしまいました!」


「なんだと!?」


「サーディアス家のお嬢様がか!?」


 リムの報告に驚くリディとカルロス。2人は顔を見合せると、真剣な表情をリムと騎士に向けた。


「我々が先行する。貴殿等は侯爵家に伝えて援軍を。見つけ次第、色付きの狼煙を上げる」


 カルロスが腰に装着していたポーチを叩き、中に緊急を伝える為の狼煙筒が入っている事を示す。


「お待ち下さい! どうか、私もご一緒に! ここまで走って伝えに参りました! 道を覚えていますから!」


 どうか、ご無礼の代償は私の命と引き換えになってもいい。だからお嬢様を助けて下さい。リムは祈るように手を合わせながら2人に懇願した。


「無礼などあるものか! カルロス、彼女を後ろに乗せて道案内をさせるぞ!」


「承知しました。さぁ、お嬢さん。私の手に掴まって下さい」


 リムはカルロスの後ろに乗り、2人は街道を東に向かって走り出した。



----- 



 一方、東に向かっていた馬車は日が暮れると街道から少し外れた場所で停車した。


 男達は焚火を作り、どうやらここで一休みする様子。


「お頭。早く帝国領に入らなくていいのか?」


「馬鹿言うな。馬がそろそろ限界だ。少しは休まないと潰れちまう」


 お頭と呼ばれた男は現実的な問題を口にするが、ニヤリと口角を上げて笑った。


「今、領主は魔物討伐で不在だろう。気付いた頃にはもう遅えさ」


「確かにそうか。しかし、妖精姫でしたっけ? すげえべっぴんでしたね。売ったら俺達は大金持ちだ」


「味見できねえのが残念だけどな!」


 ガハハ、とゲスな笑い声が響く。


「おい、まだ薬は効いているだろうけど一応確認しておけ」 


 一頻り笑ったお頭が部下にそう指示を出した。部下の1人が馬車の荷台へと近づき、中を覗き込むと――


 男の目の前には女性物の靴底がドアップで映る。


「ぎゃあ!?」


 顔面を蹴飛ばされた男は後頭部を地面に打ち付け、気を失ったのか動かなくなった。


「どうした!?」


 仲間の悲鳴に駆け付ける人攫いの男達。そこに立っていたのは1人の女性。


 彼女は自身を縛っていた荒縄を腕と拳に巻き付けて、即席の手甲のような状態にしていた。


「薬の効果が切れたのか!? 野郎、不良品渡しやがったな!」


 お頭と呼ばれていた男が見知らぬ者へと文句を言いながら、ボサボサの髪が生えた頭を掻きむしる。


「大人しくしなさい」


 ジリジリと男達に囲まれるアリシアはファイティングポーズを取ってそう言うが、彼女を囲む男達は声を上げて笑った。


「はははッ! そりゃこっちのセリフだぜ! お嬢さんこそ大人しくしな。暴れなきゃ痛くしねえ」


 一斉に剣を抜き、剣先をアリシアへ向ける男達。この世界、この時代では剣という物は男の象徴である。


 女性よりも力が強い男が剣を抜けば、女性は臆して動かなくなる。そう考える者がほとんどだ。


「へへ。大人しくしないと綺麗な体に傷がついちまうぜ?」


「…………」


 だが、アリシアは目の前にいる男をジッと見たままファイティングポーズを崩さない。


 数秒の睨み合いが続くと後方から馬の走る音が聞こえて来た。次第に近づいて来た音はアリシアと男達を見つけると速度を緩め、絶妙な距離で停止する。


「貴様等ッ! その女性に触れるなッ!」


 たった今到着したばかりの貴族風の男性1人が、顔に焦りを張り付けながら馬上から声を上げる。


 アリシアは男から目線を外さないまま、内心で「この人は誰だろう」首を傾げたに違いない。


「私はフェディシア王国第二王子リディ・フィディシアであるッ!」


「お嬢様!」


 まさかの王子様登場であったが、それよりも後に聞こえたリムの声にアリシアの肩だけが反応する。


「よかった。無事に辿り着いたのね」


 アリシアは小声でそう呟くと、拳に巻かれた荒縄を強く握りしめた。


 瞬間、侯爵家の訓練場で毎日行っていたように。祖父と父から習った通りに相手の懐へと飛び込んだ。


 王子の登場に彼女から意識を外していた男にとって、彼女の踏み込みは瞬間移動したかのように思えただろう。


 アリシアにとって絶好の間合いに入る。左足を前にして、右腕を右脇に畳みながら腰を捻って。


 下から掬いあげるようなボディブロー。これこそが、剛拳と呼ばれた二代当主によって訓練されたアリシアの得意技にして必殺技。


 荒縄を巻いた拳が男の脇腹に突き刺さる。インパクトを叩き込んだ瞬間、相手の骨は砕けて内蔵がぐっちゃんぐっちゃんにシェイクされて。


「アパアアアアア!?」


 くの字に体を曲げて、きりもみ回転しながら数メートル先まで吹っ飛んだ。 


「は?」


「は?」


「「「 は? 」」」


 リディ、カルロス、人攫いの男達。揃って気の抜けた声を漏らし、地面をバウンドしながら吹っ飛んで行った男の行方を目で追った。


「次ッ」


「え――ギッ!?」


 アリシアは次に近い男へと間合いを詰めて、男の顎にカミソリフックをお見舞いする。


 男の顎が弾けるように叩かれて、頭蓋骨の中にあった脳がぐわんぐわんと揺れる。


 先ほどのような派手さはないがフックを喰らった男は、糸が切れた人形のように膝から崩れ落ちた。


「え、え、え――おげええええ!?」


 たった今腹に拳を叩き込まれた男は口から胃液を吐き出して膝をつく。腹を抑えながら息苦しそうにする男の横っ面にフックをお見舞いし、男は思い切り地面に側頭部を打ち付ける。


「あ、え、あ? ちょ、ちょっとまって――」


 残り1人となった人攫いは後退りしながらアリシアを見る。


 男の顔に浮かぶのはまるで化け物を見るかのような表情。目には恐怖心が浮かびあがり、体はガクガクと震えて股間に染みが広がった。


「お黙りなさい」


 トン、と飛ぶように間合いを詰めたアリシア。最初の男と同じように腰を捻ったボディブローを叩き込む。


「ヒィ!?――アビャアアアアア!?」


 断末魔を上げた男は宙に浮くほどの衝撃を受け、背中から地面に倒れる。口からは泡を噴き、白目を剥いて動かなくなった。


「ふぅ」


 人攫いの男達を倒したアリシアは、拳に巻いた荒縄を解きつつ息を吐く。まるで「いい汗かいたわー」くらいのリアクションであった。


「な、な、なんという……」


 一部始終を見ていたカルロスの顔には驚愕が張り付く。当然だ。か弱き貴族令嬢かと思いきや、屈強な男達を拳1つで鎮圧してしまうとは。


 威力を見てもまさに剛拳。現当主に負けず劣らずの武力である。


「お嬢さまぁぁぁ!!」


 リムは「わおーん!」と泣きながらアリシアに抱き着き、無事でよかったと何度も口にした。


 アリシアは彼女を抱きしめながら「よく頑張ったわね」と頭を撫でる。


 感動的な再会をしている2人に、先ほどから無言だったリディが近づくと片足を地面についてアリシアへ手を伸ばした。


「どうか、私と結婚して下さい」

 

「は?」


 前触れも無しに行われた突然の求婚にカルロスは気の抜けた声を漏らした。


 対し、目を輝かせたイケメンな王子様から求婚されたアリシアは……。


「ごめんなさい」


「ファアアアア!?」


「ファアアアア!?」


 まさかのお断りである。王家に求婚されたら断る貴族令嬢などいるものか。そういった先入観もあったのだろう。


 リディは単純に断られたショックで奇声を上げながら四つん這いになり、カルロスは「この令嬢は何なんだ」と混乱し、背中から地面に倒れながら奇声を上げる。


 お断りした本人は「一体何なんだ?」と状況を理解しておらず首を傾げるばかり。


「リム、帰りましょう」


「は、はい。お嬢様」 



-----



「ははは! アリシアに求婚しましたか!」


 侯爵家に戻ると帰還したウィリアムが半狂乱状態になっていたが、アリシアが無事な姿を見せると冷静さを取り戻す。


 現当主らしい冷静な支持を騎士団に出し、今はこうしてアリシアとリムを連れてリディとカルロスと共に話し合っていた。


 そう、訓練場の中央で。


 リディが「娘さんを王家に下さい」と言った直後に場を移動し、今は3度目の確認を終えたところである。


 ウィリアムは祖父から譲り受けた手甲を装備し、ガチャンガチャンと両手を叩き合わせながら笑う。


「さぁ、殿下。死合い(デスゲーム)をしましょう。私を越える男子でなければ、安心して娘を預けられませんからな」


 スゥ、と場の空気が一気に冷めた。サーディアス家当主ウィリアムの瞳が怪しく光り、完全に第二王子の(タマ)を殺る気満々の空気が充満する。


 思わず喉を鳴らして震えるカルロス。久々にお館様の本気が見れるのか、と緊張する老騎士達。


「そ、それでも私は諦めん! アリシア嬢を見た瞬間、私の中に電流が走るほどの衝撃を受けたのだ! 私は彼女と添い遂げたいッ!」


 体を震わせながら気丈にも振舞って剣を抜くリディ。気概は一人前、いや王家の一員たる意地だろうか。


「お父様、お待ち下さい」


「おや、どうしたんだい? 私の愛しい大天使アリシアよ」


 この一言からウィリアムがアリシアを溺愛しているのは確実である。


「まずは私が相手になります。私の結婚に関する事ですから、私が相手するのが筋ではないでしょうか」


「ま、まさか! アリシア、お前は殿下と添い遂げたいのか!? アリシアたん、わざと負ける気なの!?」


 娘の言い出した事を誤解したのか、酷く狼狽するウィリアム。彼の顔は今にも泣き出しそうであった。


「いいえ。私もサーディアス家の娘です。お爺様とお父様のように自らの拳で相手の強さを見なければ納得できません」


 何がどうサーディアス家と関係あるのだろうか。少々、この親子はぶっ飛んでいる。そう口にせざるを得ないカルロスだった。


「……よかろう。手を抜いては殿下に失礼となる。本気を出しなさい」


「はい。お父様」


 親子の会話が終わると訓練場に待機していた数名の老騎士がリディへと近寄った。


「何を……?」


「殿下。これを装備して下さい」


 彼等の手に握られていたのはアダマンタイト製の防具である。フルプレート式に近い装備一式を半ば強制的に装着させられた。


「殿下。気を確かにお持ち下さいね」


「大丈夫です。口から内蔵が飛び出すなどあり得ません。飛び出す前に腹の中で破裂します」


 老騎士達は真剣な顔でそう告げた。リディは底知れぬ恐怖を感じ「どうして」とは問えなかった。


 対し、アリシアは祖父に貰った戦用の手甲を装着しただけ。父親と同じように拳を叩き合わせ、金属音を鳴らしながら真剣な表情でリディの顔を見つめる。


「なんて美しい……」


 戦っていた姿も美しかったが、真剣な顔も美しい。リディは思わず感想を漏らしてしまった。恋は盲目と言うが、盲目すぎると言わざるを得ないだろう。


「準備はよろしいか?」


 ウィリアムの問いにリディは覚悟と気合を込めて「応ッ!」と返す。


「開始ィー!」


 審判となったウィリアムが掲げた腕を下ろす。


 すると、リディの数メートル前で構えていたアリシアの姿が「ドン」と地面を爆発させて姿を消した。


「身体強化かッ――」


 この地面が爆発するような現象。これは身体強化によって脚を強化した際の踏み込みであると認識した瞬間にはもう遅かった。


 リディの目の前には美しき妖精姫――の皮を被った修羅が腰を捻って右腕を絞る。   


 剣の腹で防御しようにも間に合わぬ。アリシアの拳がアダマンタイトの鎧にぶち当たるとベッコリと陥没して中心にヒビが入った。


「アパアアア!?」


 リディの体はきりもみ回転しながら宙を舞い、悲鳴を上げながらべちゃりと地面に沈むと「はい、回復魔法唱えるよー」と言いながら侯爵家所属の魔法使い3名がリディに向かって杖を向けた。


「ふむ。アリシア、腕を上げたな」


「いえ。まだです。お爺様はアダマンタイトを粉砕していましたから」


 頬を引き攣らせながら親子の会話を聞くカルロスは「貴族のご令嬢はアダマンタイトの装甲をへこませません」と叫びたくてしょうがなかった。


「フ。本人もまだ嫁には行きたくないらしい」


「いえ、本来であれば閣下が相手になるのでしょう? もっと望みは薄いのでは?」


 カルロスは嬉しそうに笑いながら歩み寄って来たウィリアムに返事を返すが、言われたウィリアムは笑顔を維持したまま告げる。


「いいや。だから私が相手すると言っているのだよ。あの子が相手したら本当に婚約者がいなくなってしまう」


「え?」


「私では身体強化を使ってもアダマンタイト装甲を陥没させるのが精々でヒビは入らん」


 サーディアス侯爵家の序列であるが歴代1位は勿論、先代当主。


 だが、2位は――


「あの美しい娘こそ、現サーディアス侯爵家最強である」


「ふ、ふは……。ははっ……」


 カルロスは頬を引き攣らせながら乾いた笑いを吐き出し、地面でぐったり寝転ぶ王子を憐れに思うのであった。


連載中の物語を書きながら気分転換で書いた短編です。

ワン・ツー、ボディ!


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[良い点] あの惨状見た上で求婚して恐れを振り切って立ち向かうなら本物だわ…
[一言] 某姫の伝説からオールスター大乱闘に出演している魔王みたいなスペックの御令嬢ですね 多分最新版じゃなく、1つ前のforか、もう一個前のXに出てた完全に徒手空拳スタイルのどりゃおじっぽい雰囲気 …
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