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エッセイシリーズ

友人がマルチ商法にハマった件

作者: 夢野亜樹

正直言って今は動揺を隠せない。信頼していた友人がマルチ商法をしていて、僕にサプリメントを買わせようとしていたことにだ。生憎僕は大学で医療を4年間学び、論文などを読み漁っていたし、それなりの情報もあったのでサプリを買うには至らなかった。しかし、洗脳をされている友人が僕にブラインド勧誘をしたこと、友人が不動産投資で3500万円使ってビジネスをすると言っていたことから騙されている彼が可哀想だと思ったし、高校生の頃に1番信頼していた人が友達でなくなるのが悲しかった。



彼から久しぶり(5年以上経っている)に連絡が来たのは8月のことで、「近々会わないか」と言われた僕はそれが嬉しくて会うことにした。

会ってみると、彼は細身で顔も整っていて彼は相変わらず彼だったし、今度結婚するという彼の報告や近況トークなどで僕たちは盛り上がった。

勧誘をされたのはその約1ヶ月後の9月だ。8月に彼と久しぶりに会い、色々な話しもできたので、次会って話すことも特にないように思っていたが、彼と話すのは嫌でもないし会うことにした。


二回目の彼と話した最初の違和感は、これまでと違い、僕の意見を全て否定してくるな、ということだ。

「コロナでビジネスは大きく変わるよね」と僕は話をした。

僕は人と人とが会うビジネスはどんどん肩身が狭くなると思っていて、マッサージや風俗なんかはなくなっていくのではという見解だった。

しかし、それなりに頭の良い彼はそれを否定して、違うの一点張りだった。まぁ、これは僕の予想も含まれているし結果ではないので、経済はいつも通りだよと言われても、そうかも知れないと思うこともできる。

しかし、「米株のハイテク株は上がってるよね」という話で、彼が事実までも否定したことで、僕の言葉を受け取りたくなく、兎に角否定したいのだろうと察した。


その後僕は彼の話を聞くだけに徹したのだが、彼の話したいことはすごく偏っていた。時間で言うと1時間以上。会話の約80%がサプリを買わないかという話だった。

彼は4冊のパンフレットを机に出して、そのサプリがどのくらい栄養があるかと、他社のサプリがどれだけ身体に悪いかを話した。

「だからお前も飲んだ方が良いよ」

「へぇ」僕は適当に相槌を打った。

「水ある?」

「あるけど」

「今、持ってきてるから試しに飲んでみろよ」と彼は言った。

そこで飲むか飲まないかが一つの境界線だと感じた。具体的にどう進むかは分からなかったが、僕の本能がその境界線に対してとても注意深くさせた。


結局僕は適当な理由をつけてそのサプリは飲まなかった。そして話の折り合いをつけて店を出ることにした。

料金は僕が払うと言ったが、カードしかないからという理由で彼が会計をした。それから僕は現金で自分の金額分を彼に渡したが、その時彼は

「その金を渡すならサプリ買えよ」と呟き千円札を受け取った。

その時の彼の言葉が僕たちの関係の全てだったと思う。


僕が高校生の頃、彼と自転車を2人で乗って見に行った夜の港は美しかった。僕がクラスで1人ぼっちでいる時はコミュニケーション能力が高い彼が仲間に入れてくれたり、いつも彼が話しかけてくれた。その思い出は今も変わらずあるが、その関係を壊してでもお金に変えようとする今の彼は、はっきり言ってクソ野郎だ。


クソ野郎に向けて書く。

君に会えて良かった。それとサプリや浄水器の勉強なんかより、洗脳の勉強や、その会社以外の医療系論文を読んだ方が良い。そうすれば「これって自分洗脳されてね?」とか「このサプリの科学的根拠ってなくね?」と気付くかも知れない。


そして若い才能を食い物にしたクソ野郎に向けて書く。

お前らしょうもないよ。5年10年先のこと、自分が死ぬ寸前のことでも考えてみろよ。お前に何がある?仲間や友達を金としか思えないマルチ商法をやって何のためにに生きてるの?最後に何を思って死ぬの?お前らの一生ってセミの一生より価値ないよ、いやセミに失礼だわ。

彼を返せよ。あいつと僕の青春を返してくれよ。僕の友達を返せよ。お前ら人生舐めんな。

本当にバカだよ。クソだよ。


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― 新着の感想 ―
[一言] マルチは本当に嫌ですよね。 取り締まれないもんなのですかねぇ。
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