男の決闘
1800年ごろ決闘は、ヨーロッパを中心に多く行われていた。
そして紳士の国イギリスでは、好きな女性を射止める為に上流階級に多かった。
一方が決闘を申し込み、相手方が受諾すれば決闘が行われる。
決闘の申し込みは手袋を投げるか、相手の顔を手袋で叩くことによって行い相手が
手袋を拾い上げれば決闘が成立する。武器は剣、或いは拳銃が主だった。
朝森浩介は決闘に関するの本を読んでいた。よし、これだと頷いた。
その相手は朝森の恋敵である夕林公介である。なぜか俺と他人じゃないような名前だ。
同じコウスケに朝と夕、森に林だ。やはり何か因縁めいたものを感じる。
そうなのだ。二人は同じ一人の女に惚れてしまった事だ。
朝森と夕林は一年以上に亘って、城乃内麗子を巡って争って来た。
だが肝心の麗子は、どちらにも傾かず二人をはぐらかすばかりだ。
二人はある日、麗子にどちかを早く選択してくれと迫った。
「そうねぇ、二人とも男らしいし優しいし包容力もあるし申し分ないわ。でも二人と結婚する訳にも行かないし、私だって困っているのよ」
「それなら、男らしく夕林と俺とで決闘で決めるのはどうだ」
「駄目よ。そんなの怪我でもしたらどうするの」
なんと優しい女だ。すると夕林公介が口を挟んだ。
「いや、男なら好きな女を取る為には、死ぬ気くらいの気持ちで戦うのが男だ」
「よく言った夕林。それで依存はないな」
「あーいつかは恋敵であるお前と、こんな日が来ると思っていたよ」
「よし分かった。それで俺は決闘について本を読んだのだが、ルールがある」
「ま! まさかナイフを持ってやるのか・・・・・」
「まあ、それ位の覚悟がなくて決闘とは言えないだろうよ。死ぬまで殴りあうとかな」
「ねぇ二人とも止めて! 私の為に危ないことはしないで。お願い」
麗子はまさに名前の通り容姿端麗な女性だ。言うことが違う。
「よし、俺も男だ。朝森が望むなら死ぬつもりで戦うさ。命を賭けて戦う価値がある麗子のなら俺はいつだって死ねる・・・・・」
「そうだよ麗子、俺だって麗子の為に命賭けて戦うさ。それが男ってもんさ」
「生き残った者が麗子と結婚して、敗れた者への墓参りをするのさ。まぁ墓に眠っているの朝森だろうがな。クックク」
「二人とも冗談が過ぎるわ。勝ったって一人は刑務所行きよ。それが私ヘの愛なの? 違うでしょう。もう少し二人とも冷静になってよ」
「分かってるさ。ちょっと夕林も俺も麗子の事になると熱くなるんだ」
「じゃあ朝森、どんな決闘をするってんだ・・・」
「それは後で決めよう。そこで麗子に頼みがあるんだ。決闘には立会人が必要なんだ。出来れば麗子の他にも必要なんだ。そうだな多いほどいい。本来なら敗れた者は処刑されるのだ今の世の中はそうも行かない。大衆の前で恥をかく事だな。恥よって恥辱を味わうのだ。そして二人の前には二度と現れないルールはどうだ」
「よし受けた。そうだな決闘は高田の馬場の公園がいい」
「ほう、あの18人切りの堀部安兵衛が決闘をした場所だな」
「そうだ。俺たちの決闘にふさわしい場所だ。では明日正午、真昼の決闘だ」
「OK、ゲイリークーパー主演の映画だな」
「夕林、いちいち細かい説明はいいんだ」
そしてその日がやって来た。噂をどこで聞いたか野次馬が数百人も集まって来た。
レスリング会場リングのように、四角形のロープが張られていた。
麗子は心配そうな顔で、その時を待っていた。
やがて二人は、そのリング中央で決闘開始のゴングが鳴るのを待ちばかりだ。
二人は真夏にも関わらず手袋を持っていた。
「二人とも気持ちは嬉しいけど怪我をしないでね」
なんとも優しい麗子だろうか。
朝森が白い手袋で夕林の顔を張った。観衆がざわつく。
それを不適な笑み浮かべて夕林が拾いあげた。
これで決闘は成立した。観衆から拍手が沸きあがる。
「ねえねえ、あれはどう言う意味なの?」
「なんでも、貴族はあれで決闘を申し込む儀式だってさ。死ぬまで戦うらしいがな見ろよ、あいつ等の殺気、どっちが負けても良くて病院行きだな」
「いいぞ! 二人とも男の中の男だ」 二人は観衆に軽く手を振る。
「よし! 夕林、覚悟はいいな」
「お前こそ朝森。いくぜ!」
二人は上着を脱ぎ去りランニグシャツ一枚になった。
観衆がヤレーヤレーと叫ぶ。そして世紀の決闘が始まった。
「くたばれ夕林!! ジャンケンポ〜〜〜ン」
観衆はアングリと口を開いたまま動かない。
「バッカかぁ、あいつ等は! 帰ろう帰ろう」
「ハッハハハ。夕林!! 俺の勝ちだ。麗子は貰ったぜ」
夕林はガツクリと膝をつく。一方の朝森は喜び勇んで麗子に駆け寄った。
「麗子! 勝ったぞ。俺のプロポーズ受けてくれるな」
「な、なによ! 貴方達の決闘ってジャンケンであたしを決めたの? 呆れたぁジャンケンで決められるほど安っぽいの。二人共お断りよ。さいなら!」
「そ、そんなぁ麗子。君は言ったじゃないか怪我をするなってあれは嘘なの・・・・・・」
了
これはオチだけを考えて書きました。
さて見事にオチたでしょうか。それは読者に委ねる。