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46 ディランの別荘で

少し短めです。ご了承ください。

 アメリアがディランに捕まっていた少女達と共に復讐を遂げてから数日後の真夜中、彼女はディランが所有していた別荘の前にいた。


「ここ、ですか……」


 貴族の邸宅とはいえ、別荘だけあって警備をしている者達もいない。

 ディランの記憶通りなら、この別荘には誰もいない筈だ。そもそも、ディランはこの建物を別荘として使用するという目的以外で所有していた。だからこそ、この邸宅には清掃や管理の為の使用人以外の人の出入りを極力制限している。


 アメリアは別荘の正面扉の前に立つと、何処からか数本の鍵が付けられた鍵束を取り出した。そして、その鍵束に付けられているカギの一つをこの別荘の扉に差し込み、そのままカギを捻った。すると、カチッという音と共に扉の鍵が解除された。

 この鍵はアメリアが予めディランの屋敷から拝借していたものだ。ディランの記憶からこの別荘の事を知ったアメリアは屋敷が崩壊する前にこの鍵を拝借していたのだ。


「さて、行くとしましょうか」


 アメリアは躊躇する事無く別荘の中へと入っていき、迷う事なくこの別荘にある筈の書斎へと向かった。


 そして、書斎の中に入ったアメリアは左側の壁に沿うように設置されている複数の本棚、その内の一つの本棚の前に立った。


「確か、この本棚だったはず……」


 そう呟いたアメリアは、その本棚に置かれた本を次々と取り出していく。そして、全ての本が取り出された本棚をディランの記憶通りに移動させると、その本棚の後ろに扉が現れた。


「ここ、ですね」


 その扉を開け放つと、その先には地下に繋がっていると思しき下り階段が目に入ってきた。

 この階段の先はこの別荘の下に隠されている地下室に繋がっている。本棚の裏側という典型的な隠し方だが、それ故に隠し部屋への入口を隠す方法としては、ある意味最適な隠し方でもあった。


「一体、あの男はどれだけ地下室が好きなんでしょうかね」


 アメリアは数日前に分かれた少女達と彼女達が捕まっていた地下室の事を思い出して、クスリと笑うと、地下室へと繋がる階段を降っていくのだった。




 この別荘の地下室にはディランが隠していた教会の不祥事の証拠の数々が隠されている。ディランは教会の不祥事の証拠の数々を自らの保身の道具として隠し持っていた。彼は教会の不祥事の隠蔽に関わっていた。つまり、いつ自分が教会から切られるとも分からない立場とも言える。だからこそ、自らが隠蔽してきた不祥事の証拠の数々をいざという時の切り札として隠し持っていた。また、ディランはこの別荘をそれらの証拠の隠し場所として所有していたのだ。


 だが、これらの証拠はディランにとって諸刃の剣でもある。ディランが隠蔽してきた筈の不祥事の証拠を彼自身が隠し持っているという事を教会の上層部に知られれば、即座に彼は教会に切られ、その証拠の数々も表に出ない様に闇に葬られるだろう。故に、この証拠が隠してある場所どころか、今迄に隠蔽した不祥事の証拠を持っている事すらもディラン本人だけしか知らず、その事を他人にも知られない様に彼は細心の注意を払っていた。だからこそ、ディランはこの別荘には極力、人を入れようとしなかったのだ。


 だが、アメリアはこの別荘に不祥事の証拠がある事をディラン本人の記憶から知った。彼が隠し持っていた証拠の数々は何の因果か、全く無関係だったはずのアメリアの武器となる。


「さて、これですか」


 地下室の奥に置かれていた金庫の中に、その証拠の数々は眠っていた。アメリアは予めディランの屋敷から拝借していた鍵を使って金庫の扉を開ける。その中にはディランの記憶通りの証拠の数々が保管されていた。教会の裏の金の流れが記録された裏帳簿や表に出せない貴族と教会の癒着の証拠となる密約書等々だった。アメリアはその証拠の数々を精査していく。


「……っ」


 だが、そのあまりにも酷すぎる内容にアメリアは思わず絶句しかけた。教会の腐敗がかなり進んでいる事は知っていたが、ここまでとは思わなかったのだ。しかも、最も古いものでは五十年以上前のものまである。ディランもよくここまで証拠を集める事が出来たものだと、アメリアは思わず感心してしまった。

 そして、書類を読み進めるアメリアはとある密約やその詳細が記された書類を目にした時、その手を止めた。


「……これは……」


 その書類はアメリアが魔女として告発された一件の裏の金の流れや密約が記されていたものだった。

 自分が多分に関わっている事件だけあって、アメリアはその書類を細部まで見逃さないと言わんばかりに精査していく。その中にはマーシア公爵令嬢の父であるファーンス公爵と教会上層部との取引や金銭の流れまで、事細かに記されている。


「ふふふふっ、やっと、やっとです。やっと見つけました」


 その書類の中には、アメリアが最も知りたかった情報、教会の上層部で誰がアメリアの魔女の一件に関わっているのか、それまでも記されていた。

 勿論、アメリアはディランの記憶から誰が関わっていたのかを知っている。だが、アメリアが一番欲しかったのはその確たる証拠だった。それも言い逃れできない程の確たる証拠、これを復讐の道具として使う為に、アメリアはどうしてもその証拠が欲しかった。だからこそ、教会関係者の中で真っ先にディランを狙ったのだ。

 更に言うなら、今アメリアが手にしている、ディランが隠し持っていたこれらの証拠全てを彼女は復讐の道具に使うつもりだった。


「さて、これらの証拠を最もうまく使える方法を考えないといけませんね。この証拠で腐敗した彼等を貶める最も適切な方法を考えて考えて考え抜きましょうか」


 そして、その証拠の数々を手に入れたアメリアはもう用は無いと言わんばかりに別荘から立ち去るのだった。




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