40 悪徳貴族
三章を始めたいと思います。今後もお付き合いよろしくお願いします。
※感想で頂いた例の第一章の六人の末路に関してですが、一度書いてみたのですが、出来があまり良く無かった為、三章終了後の閑話にもう一度書いてみる事にしました。ご了承ください。
エルクート王国で発生した貴族が相次いで行方不明になるという大事件、それは急激な速さでエルクート王国内の貴族社会全体へと広がっていった。
ファーンス公爵達に続き、カストル伯爵までもが行方不明となったこの事件は貴族社会を震撼させてもいた。自国の貴族が相次いで行方不明になったのだから、それも当たり前だろう。更には、カストル伯爵の行方不明にもアメリアが関わっているという噂まで流れ始めていた。
そして、例の夜会参加者達は、自分達がアメリアの恨みを買う様な真似はしていないか、と自らの行ってきた事を振り返っていた者まで現れ始めた。
更に、その貴族の中の一部は、アメリアの復讐に関する事について記して、警戒するように、と知り合いの貴族に注意を促す手紙を送る者もいた。
そんな手紙を受け取った内の一人が、マルチーノ子爵家の当主であるディラン・マルチーノだ。彼は、自領の屋敷にある執務室で送られてきた手紙を読んでいた。
ディランと仲の良い貴族から彼の元へと送られてきた手紙には、アメリア・ユーティスの復讐に関する事、自分が彼女に恨みを買う様な事を仕出かしていた場合には警戒を厳にする事を勧める、などの内容が記されていた。
だが、手紙を読んでいた当のディランはその内容を鼻で笑った。その顔には呆れの表情が浮かんでいる。
「はっ、アメリアの復讐だと? バカバカしい。何の力もないあの小娘に一体何が出来るというのだ?」
ディランは、アメリアが宣戦布告したあの夜会に運悪く、或いは運良く参加していなかった貴族の一人だった。その為、今のアメリアの力を全くと言ってもいい程知らないのだ。故に、今貴族社会で広がっているアメリアの復讐という話を根も葉もない噂だと断じていた。
普通に考えれば、侯爵家という力を持たないアメリアは只の小娘だ。そんな小娘が貴族の連続行方不明事件に関われるはずもない。
アメリア・ユーティスの復讐などという噂は、どうせ何処かの誰かが政敵を排除したいが為に作り上げたカバーストーリーか何かの類だと思い込んでいたのだ。そうする事で、『主犯は行方不明となっているアメリアに罪を被せたいのだ』とディラン考えていた。
実際、ファーンス公爵達やカストル伯爵がいなくなったことで利益を得る事が出来る勢力もいる。その内の一人が行方不明事件の主犯だろうというのがディランの見解だった。
手紙の内容をそう結論付けたディランは立ち上がると、机の引き出しから鍵束を取り出し、執事に顔を向けた。
「いつもの地下室へ行く。その後の処理は、何時も通りお前に任せるぞ」
「はい、かしこまりました」
そして、ディランはこの屋敷に隠されている地下室へと向かうのだった。
ディランが向かった地下室、そこはまるで牢獄を彷彿とさせるような場所だった。地下室には五つ以上の牢屋があり、その中には無数の少女たちが囚われている。
彼女達の手と足には錠が付けられており、着ている服もボロボロで、体や髪にも煤が見えた。何も知らない者が彼女達の姿を見れば、間違いなく奴隷と勘違いするだろう。
無論、彼女達は元々奴隷などではない。彼女達は、マルチーノ子爵の屋敷に奉公に来ていた少女たちなのだ。だが、特別な仕事があるとこの地下室にディランに呼び出されて、この牢屋に閉じ込められ、今は奴隷のような生活を強いられているのだ。
そう、ディランは典型的な悪徳貴族であった。更には、質の悪い事に彼はこういった明るみに出来ない不祥事を隠蔽する事に関して、とても長けていたのだ。
そして、その集大成とも呼べるものが、この地下室に捕えられている少女達だった。
ディランは女性に暴力を振るい、屈服させる事に快楽を感じる異常者だった。この地下室は、そんな自分の性質を満足させる為の女性を捕えておく為の場所なのだ。そして、ディランに暴力を振るわれ、死んでしまった少女達も数多くいる。だが、彼はその全てをうまく隠蔽しており、その事実は全く公になっていないのだ。
「さて、今日もお楽しみを始めようか」
ディランはそう言うと、加虐的な笑みを浮かべた。そして、閉じ込められている少女達に次々と視線を合わせて、今日のターゲットを物色していく。彼はいつもこうやってその日のターゲットを物色しているのだ。
「今日は誰にするか……」
「「「ひっ!!」」」
ディランが視線を合わせるだけで、少女達は体をビクンと振るわせる。当然だ、もし自分が彼のターゲットとなれば、ディランの暴力を一身にその身に受けなければならない。だが、その少女たちの震える姿ですら彼の加虐嗜好を満足させるものであった。
そして、ディランは一人の少女にターゲットを絞った。その少女を凝視した後、歪んだ笑みを浮かべる。これが、いつものターゲットとなる少女を見定めた時の合図だ。
「ひぃっ!!」
見定められた少女は、今迄以上に怯えた声を出した。ディランは、少女の怯え声に満足げな表情を浮かべると、懐から鍵を取り出して牢の扉を開けた。そして、牢の中へと入り見定めた少女に手を伸ばす。
「さて、今日の獲物はお前だ。私を満足させてくれよ。前みたいに、すぐに死ぬとこちらも興醒めだからな」
「っ、いやっ!! お願いです!! あの痛いのはもう嫌なんです!! もう許してください!! 家に帰してください!!」
「っ、無駄な抵抗はするな!! いいから来るんだ!!」
「いやっ、いやっ、いやっ!!!!」
だが、錠で手足が縛られた年端もいかない少女では、大の大人であるディランに抵抗する事などできない。少女の方も、これから自分の身に襲い掛かってくる暴力を知っているが故に、必死にディランの手を振り払おうとする。しかし、抵抗空しく力強く手首を握られた事で、とうとう少女は諦めの表情を浮かべた、その時だった。
「……まさか、貴方がここまで愚かだとは思ってもいませんでしたよ」
「っ、誰だ!?」
突如、聞こえてきた声にディランはその声が聞こえてきた方へと振り向いた。そして、そこには不敵な笑みを浮かべたアメリアが立っていたのだった。
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