36 第一の断罪
最近、ブクマが減るのが本当につらいです……。
アメリアには復讐を始める前に、まず最初にしなければならないことがあった。それは、今も気を失っているこの妹の事だった。
「さて、最初にもう一人の演者の目を覚ましましょうか」
気を失われていては復讐どころではない。だからこそ、彼女の目を覚ます必要があるのだ。
そして、アメリアが指を鳴らすと、気を失っていたルナリアが唐突に目を覚ました。それを見たデニスは慌ててルナリアへと声を掛ける。
「ルナリアッ、大丈夫か!?」
「伯父様っ!? ここは一体……?」
「ふふっ、ルナ、お目覚めの気分はいかがですか? ここは伯父様の屋敷の執務室ですよ」
「ひっ!! お、お姉様!? っ、こ、この鎖は一体!?」
ルナリアは鎖で縛り付けられている自分の事に気が付いた様で、その鎖から逃れようと必死に体を動かすが、一切微動だにしない。
それを見たアメリアは満足げな笑みを浮かべた。そして、彼女は復讐の為の最後の準備を始める事にした。
「貴方達への復讐を始める前に、まずは舞台を整えないといけませんね」
「舞台……?」
「ええ、貴女達の罪を裁くにはそれ相応の舞台が必要ですから」
アメリアは目を軽く瞑り、パチンと指を鳴らす。すると、何処からか魔法陣が現れた。そして、魔法陣が輝くと、そこに現れたのは人一人分以上の大きさがある木で出来た十字架だった。その全容はまるで処刑に掛けられる罪人を拘束する為の十字架を彷彿とさせるものだ。
「そして、もう一つ」
アメリアはそう言うと何かを薙ぎ払う様に手を横に振った。すると、二人の体を縛り付けていた鎖が消え去った。かと思うと彼等の体は突如として宙に浮き上がった。
「こ、これは!?」
「きゃっ!! な、なに!?」
突如、自分の体が宙に浮かび上がった事で二人は動揺の声を上げる。だがその直後、二人の体は本人の意思とは無関係にまるで先程現れた十字架に吸い寄せられるかの様に移動していく。
そして、二人の体が十字架と密着した直後、何処からか鎖が現れ、二人の手足と首元を拘束してしまった。
今の二人の姿は傍から見れば処刑寸前の罪人にしか見えないだろう。
「なんだっ、これはっ!!」
「やめっ、離してっ!!」
十字架に囚われ、鎖で縛り付けられた二人はこの場から逃れようと必死に足掻くが、アメリアの作った鎖はそんな程度で壊れるほど軟ではないのだ。これから何をされるか全く想像がつかないが、それがろくでもない事だけは確かなのだ。
そんな二人の様子を見てアメリアは彼等を安心させる為の言葉を彼等に言う。
「大丈夫ですよ。安心してくださいな。私は二人を決して死なせたりなどはしませんから」
だが、アメリアのその言葉は二人の無事を保証するわけではない。
「さて、これにてすべての準備が整いました。ここに貴方達の罪を暴く為の裁判を開廷いたしましょう!!」
そして、ここにアメリアのアメリアによるアメリアの為の復讐裁判が開廷されるのだった。
「さて、裁判といえば、まずは罪状を述べなくてはなりませんね。貴方達の罪をそれぞれ順に暴いていきましょう。ああ、虚偽の反論に関しては一切認めるつもりはありませんのであしからず」
そして、アメリアはまるで罪状を読み上げる裁判官の様に高らかに二人の罪を述べていく。
「まず伯父様、貴方の罪は私のお父様とお母様を裏切った事、二人を処刑に追い込んだ直接の原因を作った事です。
この点について何か反論があるようでしたら是非どうぞ?」
「それ、はっ!!」
だが、アメリアの言う罪状に対してデニスも反論しようとするがアメリアはそれを一切認めない。それどころか、反論しようとした彼の口の周りの鎖が現れた。その鎖はまるで猿轡の様にデニスの口に纏わりつき、彼は一切声を出せなくなってしまったのだ。
「言っているでしょう。貴方達の虚偽の反論は認めないと。貴方が内心でどのような事を考えていようと、私は伯父様がお父様とお母様を裏切ったという事実は確かなのです。その点に関してはどう言い繕う事も出来ない筈です」
「ぐっ!!」
デニスはそれでも何とか声を出そうとするが、口に纏わりついた鎖でそれもままならない。そんな状態のデニスを横目に、今度はアメリアはルナリアの方に向き直る。
「そしてルナ、貴女の罪は私を教会に売った事、私が教会の騎士に捕まるように事前に手引きした事です。
この点に関しての反論があるなら是非どうぞ?」
「ねぇ、違うの!! 違うの、お姉様!!」
「何が違うというのです? 貴女は私を教会に売った、それは確かな事実の筈です。あの時にそう言ったのは貴女じゃないですか。そこにどんな反論があるというのです?」
「それ、はっ……」
だが、ルナリアは言葉に詰まってしまう。あの時、彼女自身がアメリアに対して裏切ったのだと言い放ったったのは事実だ。その点に関してはどう言い繕う事も出来ないのだ。
「二人とも真面な反論が無い様なので、次のステップに進みましょう。さて、ここに二人の罪が明らかになりました。
そして、それらの罪の根源は貴方達が心に抱えた嫉妬心です」
そう、彼等の罪の根源は突き詰めれば嫉妬心だ。ディーンに嫉妬するデニス然り、アメリアに嫉妬するルナリア然り、双方ともその心の内には激しい嫉妬心を抱えている。
「だからこそ、そんな嫉妬心に塗れた貴方達に相応しい罰を用意しました。
さぁ、今こそ貴方達の罪状に対する判決を言い渡します。貴方達には自らの罪の報いとして私からの私刑を受けてもらいましょう!! 最初の断罪を始めましょうか!!」
ここに二人に対するアメリアの私刑が確定する。そして、アメリアの最初の断罪が始まった。
「嫉妬、それは元来、炎に例えられてきました。例えば、嫉妬の炎、だとか、嫉妬心を燃え上がらせる、だとか。それらに共通するのは炎という単語です。だからこそ、嫉妬心に塗れた貴方達にはこの罰こそが相応しいでしょう!!」
そして、アメリアは地面に置かれた一本の縄を手に取った。その縄は、途中で二つに分岐し、それぞれがデニスとルナリアが拘束されている十字架の下へと巻き付いている。
それを見た二人はアメリアの事を訝しげな表情で見ていた。なにをしたいのかが全く分からなかったからだ。
「なにを……するつもりだ……?」
「それは……、こうします」
アメリアはそう言うと人差し指を立てた。すると、その指先から小さな炎が現れる。
「この縄はですね。実は、凄く燃えやすい素材で出来ているのです。更にはもっと燃えるように予め油に浸してあります。
そして、貴方達を今拘束している十字架、それもかなり燃えやすい材木なのです。更にはその材木も予め油に浸してあるので本当によく燃えるのです。
……ここまで言えば私が何をしたいのか、分かりますよね?」
アメリアのその言葉で彼女がこのあと何をするのか理解した二人はその表情に恐怖が浮かんでいく。燃えやすい素材、予め油に浸してある縄と材木、そして、アメリアの指先に現れた炎となれば答えは一つしかないだろう。
「まさかっ、まさかっ、まさかっ、まさかっ!!」
「嘘っ、嘘っ、嘘っ、嘘よねっ!!」
「あははは!! 貴方達の想像通りですよ!! さぁ、貴方達への第一の私刑、それは火炙りの刑です!! ぜひ楽しんでくださいな!!」
アメリアは最後の仕上げと言わんばかりに何処からか取り出したバケツ一杯に入った油を二人の体にぶっかけていく。
そして、最後の仕上げを終えたアメリアは指先の小さな炎を縄の先に近づける。すると、縄の先が勢い良く燃え上がった。燃えやすい素材で出来た縄は、その炎の勢いを強めながら、段々と縄を伝い二人が拘束されている十字架へと近づいていく。
「「ひっ!!」」
縄を伝って来たその炎は、十字架の元まで到達すると今度は二人を拘束している十字架に燃え移る。燃え移ったその炎は一気に十字架の全体を燃やし、油が掛かっている二人の体の表面すら燃やし尽くしていく。
「があああああああああああああああああああ!!!! 熱い、熱いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!」
「熱い、熱い、熱い、熱い!!!! もうやめて、やめてええええええええええええええええええええ!!!!」
二人は燃えながらも必死に叫ぶが、それにアメリアが取り合うことは無い。それどころか、彼女は何処かこの光景を楽しんで見ていた。
「折角、私が手間暇かけて準備したのです。是非とも、最後まで楽しんでくださいませ!!!! あはははは、あはははははははははははははははは!!!!」
そして、アメリアは二人の叫び声が響き渡る中、炎が消える最後の瞬間まで二人を嗤いながら只々眺めているのだった。
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