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23 次なる復讐へ

 第一の復讐を終えた翌日、アメリアは懐かしくも、今となっては忌まわしくもある夢を見ていた。


「懐かしい夢を見ましたね……」


 アメリアは目を覚ますと、そんな声と共に体を起こした。アメリアの見ていた夢、それは彼女が王太子の婚約者として決定した事を祝した夜会の時の出来事の夢だった。

 第一の復讐を終えた夜に見た夢があの時の夢とは何とも皮肉が効いている。まるで、自分の内にいる何者かが、早く次の復讐を、と急かしている様だった。

 そして、あの時の夜会の夢を見たアメリアが思い出すのはデニスがディーンに向けていたあの忌々しい者を見る様な視線だった。


「もし、もし、あの時……」


 もし、あの時のデニスが向けていたあの視線を見間違いだと思い込まずに、視線の意味を知りたいともっと強く思っていれば、もしかしたら何かが変わっていたかもしれない。あの時の夢を見たアメリアはそう思わずにいられなかった。


「伯父様、どうして……」


 アメリアは自分の両親を裏切った者がいる事は分かっていた。しかも、それが彼女の両親に非常に近しい者だという事まで考えていた。そして、推測を続けていく内に、両親を裏切ったのではないかという一人の人物が浮かび上がっていたのだ。

 そして、その推測はガストンの記憶を覗いた時に確信へと変わった。


「どうして、お父様やお母様を裏切ったのですか……?」


 そう、アメリアの両親を裏切った者、ガストンが自分達の派閥に寝返らせた者こそ、彼女の伯父であるデニスなのだ。

 ガストンはユーティス侯爵領の金山を接収した後に得られる利益の一部や前の派閥と同等以上の待遇という約束と引き換えに、デニスに自分達の派閥への寝返りを持ち掛けた。

 その話を聞いたデニスはディーンを裏切りガストンの派閥へ寝返る事を約束していたのだ。


「どうして……」


 推測であったなら、まだ確証はないと否定できたであろう。あの優しかった伯父が自分の弟を裏切る様な真似をするはずがないと心の何処かで言い訳をできていたであろう。だが、アメリアはデニスが裏切った事の確信を得てしまった。その為、デニスはアメリアの復讐対象へと完全に変わってしまったのだ。


 だが、アメリアには一つだけどうしてもわからないことがあった。それは動機だ。何故、デニスがディーンを裏切ったのか、その動機だけがアメリアには分からなかった。無論、金山の利益の一部を得られるという動機なら頷けなくもない。しかし、アメリアにはそれが動機だとは思えなかったのだ。何故なら、デニスは貴族派閥の第二位を率いるユーティス侯爵の兄という事で側近といってもいいほどに近い立ち位置だった。しかも、当時にしてみれば派閥はこれから更に発展するという状態だ。それが、金山の利益と同等以上の待遇という二つの条件だけで裏切るだろうか?

 ディーンの派閥に残っていても同じ程度の利益は間違いなく甘受出来ていたであろう。リスクとリターンを天秤に掛けてもこの条件では寝返る気には到底ならないだろう。


 ガストンも、何故デニスがこれほど簡単に寝返ったのかが疑問だった様だ。ガストン自身、最終的にはもっと好待遇を用意してもいいと考えていたらしい。そして、あまりにも簡単に寝返ったため何か裏があるのではないかと思ったガストンは、密約を結んだ後、デニスを監視していた。だが、裏切る素振りを全く見せない為、ガストンも裏切ることは無いと最終的に判断した様だ。


「……」


 何故デニスが寝返ったのか、その本当の答えは、あの夜会でデニスがディーンに向けていた視線、あの視線にある様な気がしていた。

 結局、彼女にはあの視線の意味は今でも分からない。だが、復讐心に囚われている今のアメリアにはデニスの向けていたあの視線に籠められた感情が薄々ながらも察しがついていた。

 あの視線に籠められた感情は、自分の中にある復讐心に近しいもの、負の感情だ。

 しかし、アメリアにはどうしても兄弟仲が良好だったはずのデニスがディーンに負の感情が込められた視線を向ける意味が分からなかった。


 そしてもう一人、デニスと同じくアメリアを裏切った者がいる。


「ルナ、どうして貴女も私を裏切ったの? 私だけじゃない、お父様とお母様まで裏切って貴女は一体何をしたかったの?」


 もう一人の裏切り者、それはアメリアの妹であるルナリアだ。ルナリアが裏切ったせいで、アメリアの周りにいた者、侍女や護衛達が少なからず死ぬ事になった。ルナリアが裏切らなければ、アメリアの周りにいた侍女や護衛達ももう少し残っていたかもしれない。

 結局、ルナリアが裏切った理由もアメリアには分からない。唯一分かっている事、それはルナリアが今はデニスと共にいるという事だ。両親の処刑と共にユーティス侯爵家が取り潰された後、ルナリアはデニスに保護という扱いで養子にされたらしい。


「……ここで考えているよりはあの二人に直接聞いた方が速いですよね。そろそろ行きましょうか」


 ここで考えていても埒が明かない。感傷に浸るのはここまでにしよう。どんな理由があろうともアメリアの目的は変わらない。彼女の目的はただ一つ、復讐、ただそれだけだ。疑問があれば二人を直接問い詰めればいい。あの二人が答えなくとも、今のアメリアは記憶を覗ける。そこからでも十分に答えを得られる筈だ。


「デニス、ルナ、次は貴方達の番です。報いの時はすぐそこ。さぁ、今こそ復讐劇の第二幕を始めましょう」


 そして、アメリアは次なる復讐の舞台へと赴くのだった。



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