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婚約破棄を告げられ、処刑されかけた悪役令嬢は復讐令嬢になりました ~古代魔術で裏切り者達を断罪する復讐劇~  作者: YUU
第一章

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18 ガストンの企み

「さぁ、私に教えてください。お父様とお母様の処刑にどんな企みがあったのかを。貴方の記憶にはその真実がある筈なのですから」


『汝が記憶、全ては我が掌中にあり』


 アメリアは記憶干渉の魔術を行使しガストンの記憶の中へと潜っていく。


「なにをするつもりだ……。あぐっ、がああああああああああああああああ!!!!」


 その瞬間、ガストンの頭に、彼が今迄感じた事が無い類の激痛が走った。今、彼を襲っている激痛はアメリアが彼の記憶に干渉しているため起きている物だった。

 人間の繊細な脳に他者が干渉すればそれ相応の負担がかかる。その負担の全てがガストンに降りかかっているのだ。


「がああああああああああああああああああああああ!!!!」


 その未知の激痛でガストンが絶叫を上げ続けるが、それをアメリアが気にする様子は無い。それどころか、それ自体が一種の報復になると思っている節もあるのだろう。アメリアは容赦なく記憶への干渉を続ける。


「ひぃぃ、あぐっ!! もうっ、もうやめてくれぇぇぇぇ!! もう私には耐えられ……、あがああああああああああああああああああああああ!!」

「少し静かにしていてください。集中出来ないではないですか」


 アメリアはガストンの絶叫と必死の懇願に対して辛辣な言葉を突きつけた。それを見て唖然となるのはこの場にいる残り二人の貴族、ヴァネルラント侯爵とアッカーソン侯爵だ。ファーンス公爵と同じく『永劫の鎖』で拘束されている彼等は、次は自分達があんな絶叫を上げる程の激痛を感じる事になるのかと戦々恐々としていたのだ。


「見当たらないですね……。もう少し別の場所を探してみましょうか」

「もう、もうやめてくれ、限界が……、がああああああああああああああああ!!!!」


 はたから見れば、アメリアがガストンの激痛に気を良くして、彼で遊んでいる様にしか見えないだろう。

 だが、当の本人はいたって真剣だった。何故なら、齢を重ねている者ほど、蓄積された記憶は膨大なものになる。その中から目的の記憶を探すのは容易な事ではないからだ。ある程度の条件で記憶が絞れる為、流石に砂漠の中から目的の一粒を、とまではいかないだろうが、それに近いのは間違いがない。

 そして、ガストンの記憶を探っていく事、数十分。アメリアはやっと目的の手掛かりとなりそうなキーワードを見つけた。


 ――――婚約破棄、国家反逆罪、金山、処刑。


「ふふふっ、やっと、やっと見つけましたよ。さぁ、私に全ての真実を教えてください」


 ガストンは未だ激痛で叫び声を上げ続けているが、アメリアは気にする事なく目的の記憶を覗いていくのだった。






 それは、アメリアがヴァイスに婚約破棄を告げられる一月前の事だった。

 その日のガストンは、王宮にある宰相の執務室で自分の子飼いの密偵から送られて来た報告書を読み上げていた。


「なっ、ユーティス侯爵領にて金山が発見された可能性があり、だと?」


 報告書では、この情報は信憑性も十分であり、既に確定的な情報といってもいいであろうという推測が成されている。更には、その埋蔵されている量は今の予測時点でも王国内でも最大級だとも記載されていた。


 だが、その報告書を読んだガストンは焦りを隠す事が出来ず、歯噛みしていた。


「くそっ、まずい、まずいぞ、非常にまずい、最悪だ……」


 ユーティス侯爵家は、この国の貴族達の派閥で言えばガストンが率いる派閥に準ずるほどの力を持つ第二位の派閥の筆頭だ。つまりは、ガストンの一番の政敵であるとも言える。

 ただでさえ、ユーティス侯爵家の令嬢であるアメリアが王太子であるヴァイスと婚約している事に警戒をしていたガストンだったが、この金山の報告を聞き、その警戒が焦りに変わったのだ。

 このままでは、ユーティス侯爵家は富と権力という貴族社会では最大の武器を同時に二つも手に入れる事になる。

 いずれはユーティス侯爵家率いる派閥が自分達の派閥より力を持ち、派閥第一位の座を奪われるのではないか、そんな焦りがガストンを支配していた。


 そんな時、彼の元に一人の来客が現れた。その人物は明らかに高位の身分と分かる人物で、宰相であり公爵家の当主でもあるガストンに怖気づく様子もない。それどころか、上辺だけとはいえガストンはその男に敬意を払っていた。


「おや、殿下ではありませんか。今日はどうなさったのですか?」


 そう、ガストンの元に現れたのはこの国の王太子であるヴァイス・エルクートだった。


「回りくどいのは嫌いでな、単刀直入に言おう。ファーンス公、俺に力を貸していただきたい」

「……どういう事でしょうか。詳しく話を聞かせていただきましょうか」


 そして、ヴァイスから語られたのはガストンすら唖然とさせる話ばかりだった。

 彼が語るその内容は、『俺は真実の愛に目覚めた』『アメリアがアンナにイジメをしていた』『アメリアとの婚約を破棄してアンナと婚約したい』等、聞く者が聞けば彼の脳内はお花畑なのかと勘違いしかねない程の馬鹿らしい内容だったのだ。

 更に、ヴァイスは一月後に開かれる夜会でアメリアとの婚約破棄を宣言するつもりだという事まで言い始める始末だ。

 唖然としているガストンに対してヴァイスは話を続ける。


「ファーンス公に助力していただきたいのは、その後だ」


 ヴァイスの言う助力とは、アメリアとの婚約破棄後、アンナとの婚約を公に認めてほしいという物だった。ガストンもヴァイスがアンナという男爵令嬢に入れ込んでいたのは知っていたが、ここまでとは思わなかった。


「俺は真実の愛に目覚めたのだ。アンナと結ばれる為ならどんな労も惜しまない。だから、ファーンス公にも力を貸していただきたい」


 つまり、それはヴァイスがガストンへ借りを作る事も厭わないという事だ。

 宰相としてはヴァイスを諫めるべきなのであろうが、ガストン個人としてはヴァイスがアメリアと婚約破棄をするというのは賛成だった。このまま無事に婚姻が成されて、政敵の力が増すよりは、そちらの方が遥かに良い。王太子妃の座に男爵令嬢が収まるとなれば、手の打ち様はいくらでもあるからだ。

 そして、突如としてガストンの脳内に一つの企みが思い浮かんだ。それは瞬く間に形を成していく。それが完成した時、ガストンはヴァイスへの助力を約束していた。


「……分かりました。殿下への助力を約束しましょう」

「そうか!! 貴殿の助力に感謝する。この借りはまたいずれ」

「ええ」


 助力の約束を得られた事に満足したヴァイスは、最後にガストンと握手をした後、執務室を立ち去っていく。

 そして、一人執務室に残ったガストンは周囲に誰もいない事を確認すると、高笑いを始めた。


「くくくく、あははははっ、殿下、貴方のおかげでこの素晴らしい計画が思いつきましたよ!! これであのユーティス侯爵家を排除できる!!」


 ガストンの言う計画、それはユーティス侯爵家に国家反逆罪の冤罪を着せ、更には侯爵領にある金山を接収しようという物だった。

 普通なら、そんな計画は考えた所で実行は不可能に近い。

 だが、王家との婚約が破棄されるとなればユーティス侯爵家やその派閥にも多大な、それこそ年単位で対応に追われるレベルの混乱が生じるだろう。更に、大切な娘の婚約がヴァイス個人の思惑で破棄されるとなれば、ユーティス侯爵家が王家に歯向かおうとする動機としても十分すぎる。

 混乱の隙を突けば、様々な手を打つことだって可能だ。それこそ、ユーティス侯爵家にとても近い者を予め自分の派閥に取り込んでおけば、混乱に乗じて国家反逆罪の冤罪を掛けることだって難しくは無い。取り込んだ者にユーティス侯爵を諭させてもいい。その為の恰好の人物の目星も既についている。

 そして、国家反逆罪となれば、ユーティス侯爵の処刑は確実だろう。そこに娘の婚約破棄という動機もあれば、罪状は不動のものになる。

 その後にユーティス侯爵領に自分の手の物を送り込む事で、事実上の接収をすればいい。


 また、婚約破棄をするヴァイスの方もどうとでもなる。アンナの実家は男爵家だ。物理的、政治的問わずに排除する方法は無数にあると言っても過言ではない。男爵家を没落、取り潰しにさせれば、自動的にアンナは貴族ではなくなる。

 幾ら寵愛を受けているからといっても、貴族の実家の後ろ盾の無い者に王太子妃は務まらない。アンナは絶対に王太子妃になる事が出来ないのだ。

 そして、空座になった王太子妃の座に娘のマーシアを据えればいい。マーシアも王太子妃の座を狙う事には乗り気だから問題は無いだろう。


 ユーティス侯爵領の金山からの富、王太子妃の輩出、その二つを合わせれば自分の権勢は間違いなく不動のものになる。それどころか、この国を裏で操る事すら不可能では無いかもしれない。


「あはははっ、これではまるで私こそがこの国を裏から支配するべしと、神に祝福されている様ではないか!! あはははははははははははははは!!!!」


 神から祝福されているかの様に、全て自分に都良く進んでいる。そんな風に感じたその日のガストンの心中では、高笑いが収まらなかったのだった。




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