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後日談13 ルナリアの最期

皆様、お久しぶりです。

色々ありまして暫くの間、筆を置いていましたが新作の宣伝も兼ねてプロットに残っていた最後の後日談の内の一つを投稿します。

どうぞお楽しみください。

 アメリアの復讐によるエルクート王国の崩壊とその後に起きた隣国からの侵略。

 その影響はエルクート王国の一領土であるカストル伯爵領にも及んでいた。

 アメリアの復讐から暫くの後、エルクート王国を侵略してきた連合軍の内の一つがカストル伯爵領に攻め込んできたのだ。

 

 隣国からの侵略という事もあり、カストル伯爵領に住まう者達も必死に抵抗をした。しかし、隣国の攻撃は激しく、伯爵領の領兵たちは籠城戦を強いられることになってしまった。

 籠城戦は長く続いたが、王国そのものが崩壊した為に国からの支援が無い伯爵領は次第に困窮していく。その果てに伯爵領は隣国に降伏宣言をせざるを得ない状況に追い込まれるだった。


 そして、伯爵領が制圧された翌日、この地を攻め込んで来た兵士達を率いていた将軍は街の広場に姿を見せていた。


「ふむ、これが、か……」

「はい」


 そして、彼等は広場の中心に目線を向ける。そこにあるのはかつてルナリアであった石像だった。また、その隣には彼女の養父であったデニスの石像の姿もある。

 隣国の将である彼からすればこんなものをここに置いたままには出来ないだろう。


「移動は出来ないのか?」

「ええ、試しましたが全くと言っていい程、動く様子を見せませんでした」

「そうか……」


 そして、将軍は考え込むような仕草を見せた。だか、そんな会話をする二人の側で彼等の会話に困惑を隠せない者がいた。

 それは石像と化したルナリアだった。彼女の意識は石像と化した今でもアメリアの手によってその中に封じ込められているのだ。


(なに!? 何なの!?)


 ルナリアが心の中で困惑の声を上げる。見慣れない服を着た同じく見慣れない謎の男達が謎の会話をしているのだ。困惑するのも当然だろう。


「それで、こちらの石像はどうなさいますか?」

「流石にこれをここに置いておくわけにはいかないだろう。しかし、移動出来ないとなれば、残る方法は一つしかなかろう。破城槌を持って来い」

「はっ」


 そして、将軍から指示を受けた兵士はこの場を去っていく。


(破城槌っ!? 一体、私になにをするつもりなの!?)


 しかし、ルナリアのそんな疑問に答える者がいる筈もない。

 そして、それから暫くすると、巨大な破城槌がルナリアの石像の前まで運び込まれてくる。

 その杭の大きさはそれこそ彼女の全身に匹敵しかねない大きさだ。

 すると、兵士達は早速破城槌の準備を始めた。そして、その破城槌を目にしたルナリアは内心が恐怖一色に染まる。


(まさか、それを私に向けて打つつもりなの!? いやっ、やめてっ!!)


 だが、彼女のその声が外に届く筈もない。破城槌の準備は着々と続いていく。


「よし、破城槌を放て!!」


 そして、準備が終わったのを確認した将軍がそう指示を出したその直後、勢い良く破城槌が放たれる。


(いやっ、いやああああっ!!!!)


 だが、ルナリアの恐怖とは裏腹に石となった彼女の体は無駄に丈夫で破城槌の一撃を防ぎ切っていた。

 しかし、それを見た彼等はそれを予想していたのか、第二射、第三射と続けて破城槌を放っていく。


(やめっ、やめてっ!!)


 その一方、ルナリアは何度も放たれる破城槌に怯え切っていた。

 だか、それも仕方がない事だろう。自分の全身ほどの大きさがある破城槌が何度も何度も体に打ち付けられるのだ。

 恐怖を感じるなという方が無理がある。痛みを感じないのは彼女にとっては唯一の幸運だったかもしれない。

 そして、破城槌が数十度に渡って打ち込まれたその時だった。破城槌は遂に彼女の体を貫通し、直後ルナリアだった石像は無数の瓦礫の山へと変わった。


「「「おおっ!!」」」


 その光景を見ていた兵士達は喜びの声を上げる。同時に唯一無事に形をを保っていた頭部がゴトンという音と共に地面へと落下する。

 そして、その次の瞬間だった。


(いやっ、私がっ、消える!!)


 彼女に残されていた意識がまるで水に溶けるかのように少しずつ希釈され始めたのだ。

 そして、その時、彼女は本能的に理解する。もし、このまま意識が消えればもう二度と元に戻る事はないと。意識を失えば自分という存在は生まれ変わる事もなく、この世から完全に消えてしまうという事を。


(いやっ、いやっ!!)


 少しずつ意識が消えていく恐怖から彼女は必死に心の中で叫ぶ。だが、彼女がどれだけ叫ぼうが、その声が外の人間に伝わる筈もない。

 そして、彼女が最期に思い出すのは憎かった姉であるアメリアの事だ。


(っ、お姉様、お姉様さえいなければこんな事には……!!)


 彼女はこの状況を作り出したアメリアに憎しみを募らせる。それによって、ルナリアは消えゆく意識をなんとか繋ぎ止めていた。

 だが、そんな抵抗も虚しく、彼女の意識は少しずつ消えていく。


 そして、意識が消える直前、彼女は今迄の人生をまるで走馬灯の様に思い出していた。

 時を遡るかの様に次々と浮かんでは消えていく今迄の人生で積み重ねられてきた無数の記憶たち。


 そして、彼女がその最期に思い出したのは幼い頃の記憶だった。


 まだ、彼女が幼くアメリアへの憎しみがそこまで募っていなかった頃の事だ。

 幼い頃、彼女は階段から転びそうになった事があった。そんな時、その身を挺して自分を守ってくれたのは姉であるアメリアだった。


「お姉様、どうして私を……?」


 自分の代わりに怪我を負ったアメリアに向けて、ルナリアはそう問いかけた。そして、返ってきた言葉を彼女は思い出した。


「大切な妹を守るのは姉である私の役目よ」


 あの時、姉であるアメリアは確かにそう言ったのだ。

 その記憶を思い出した瞬間、ルナリアは今までの様にアメリアを憎む事が出来なくなってしまった。


(あっ、ああっ……!!)


 どうして、自らの身を挺してまで自分の事を守ってくれたあの優しいアメリアを憎む様になってしまったのだろう。

 最期の最期で彼女はそれが分からなくなってしまったのだ。


(おねえさま……。お、ねえ、さ、ま…………)


 そして、その言葉を最期にルナリアの意識は完全に消え去るのだった。



近い内に投稿すると言っておきながら、数年間もお待たせしてしまい申し訳ありませんでした。


この作品が面白いと思っていただけたら、是非ともブクマや評価をよろしくお願いいたします。


続けて新作の宣伝です。


『白銀皇女の覇道譚』


https://ncode.syosetu.com/n1814ko/


こちらになります。

内容としましては、簡潔に書きますと侵略国家に生まれた皇女が覇道を進む物語となります。

この作品には本作や前作のノウハウやエッセンスを込めた為、本作を気に入って頂けた方には気に入っていただけると思います。

一応、十万文字弱は書き溜めており、既に予約投稿済みです。

こちらの方は五話まで読んでいただけるとこの作品の方向性が大体分かって頂けると思います。

もし、気に入って頂けたら、本作と合わせて新作の方にもブクマや評価を頂けるとありがたいです。(あまりにもPVを含めた全てが伸びなさ過ぎて泣きそうなので、読んでいただけるだけでも本当に嬉しいです)

是非ともよろしくお願いします。

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