後日談4 少し先の未来で
ありがたい事に、放置している間にも評価やブクマ、感想を沢山いただきました。時間が無いので、感想の返事は出来ていませんが全て目に通してあります。本当にありがとうございます。
頂いた感想を読んで寝ると、その夜にアメリアさんに夢で「続きを書きなさい」と言われた気がしたので、久々の更新です。
アメリアがこの村に辿り着いてから、数カ月が経過していた。
この村の人口もアメリアがこの村に来た時とは比べ物にならない位に増えており、村の運営も安定し始めている。
今日のアメリアはこの村の現村長として村中を見回る予定だった。
「さて、と。そろそろ行きましょうか」
外に出る準備を終えたアメリアは自分が暮らす屋敷から村へと出る。
そして、アメリアが村に姿を現した、その直後だった。
「あー、村長だー」
「アメリア様、おはようございます」
「お嬢、今日も元気そうですね」
「おはようございます、お嬢様」
村人たちは屋敷から出てきたアメリアの姿を見るなり、次々とアメリアに声を掛けてきたのだ。
「ふふっ、おはよう。皆は今日も元気ね」
そして、アメリアも自分に声を掛けて来る村人たちに笑顔で手を振って返事を返していた。
アメリアは未来の王妃として育てられてきた。それ故、平民とは比べ物にならない程の高度で多種多様な教育を受けて育っている。だからこそか、アメリアは隣村やこの辺りを治める役人たちとの交渉を担当していたのだが、そんな事をしている内に気が付けば彼女はこの村の村長のような立場になっていたのだ。
そんな彼女の事を単に村長と呼ぶ者もいれば、お嬢やお嬢様と呼ぶ者もいる。特にアメリアの事をお嬢様と呼ぶのは彼女の昔からの顔見知りが多かった。
何故、この村にアメリアの昔からの顔見知りがいるのか、それにも理由がある。アメリアの実家であったユーティス侯爵家が取り潰しになった時、その影響で職を失い、新しい就職先を見つける事も出来ず、今も旧ユーティス侯爵領に留まっていた者が大勢いた。アメリアはそんな者達を見つけ出し、彼等に声を掛け、この村への勧誘をしたのだ。
そして、その話は嘗てユーティス侯爵家に仕えていた者達の間で広がっていき、気が付けばそういった境遇の者達がこの村の住人の半数以上を占める様になっていたのである。
また、人手を欲していた村側も素性がある程度はっきりとしていた彼等を快く受け入れていた。
「村長、こんにちはー」
「アメリアさまー。こっちです、こっちを見てくださーい」
アメリアの姿を見つけた村人たちは全員が笑顔を浮かべながら、彼女に向けて大きく手を振っている。それだけで、どれだけ彼女がこの村の人々から慕われているのかが分かるだろう。
「ふふっ、相変わらず本当に皆は元気ね」
元気過ぎると言っても良い村民たちの様子を見ながら、アメリアは笑みを浮かべる。すると、その時だった。
「アメリアさまー!!」
そう言いながら一人の少女がアメリアの元まで走ってくると、勢いそのままに彼女の体に抱き着いた。その少女の名前はマイ。あの時、アメリアが助けた少女達の一人だ。
「マイ、突然どうしたの?」
「確か、今日は見回りの日ですよね。私と一緒に回りましょう!!」
「はいはい、分かったわ。行きましょう」
アメリアにしても自分を慕ってくれている子達を無碍には出来ない。特にマイはアメリアの事を良く慕っており、時間があればこうしてずっとアメリアの傍に居たがったりする為、アメリアはマイと特に仲が良かった。
そして、アメリアはマイに手を引かれながら村を回っていく。
村は順調そのものだ。村の人口も増え続けており、村の拡張計画も検討段階に入っている。折角なので、この機会に村の名前を新しく付けようという話も出ていたりもしている。
また、この村には嘗てユーティス侯爵家に仕えてきた者達がまだまた集まってくる予定になっている。この村の未来は明るいだろう。村長として村の未来を想い、アメリアは思わずクスッと笑みを浮かべる。
「アメリア様、どうしたんですか?」
「ふふっ、いいえ、何でもないわ」
そう言いながらアメリアは優しくマイの頭を撫でた。マイもアメリアに頭を撫でられて嬉しそうに微笑んでいる。
「じゃあ、そろそろ次の場所に行きましょうか」
「はいっ!!」
そして、次に見回る予定の場所に向かおうとしたその時だった。
「た、大変だー!!」
そんな事を叫びながら一人の男がアメリアの元まで駆けてきたのだ。
「お、お嬢様っ!! 大変です!!」
その男はこの村で門番を務める男であった。嘗てはユーティス侯爵家に仕えていた騎士の一人だった為、今もアメリアの事をお嬢様と呼んでいる。
「そんなに慌てて、一体どうしたの?」
「そ、それが、突然村の外に客人が……」
だが、門番の言葉はそこで遮られる。一台の馬車が大きな音を立てながら、村の中へと勢い良く入って来たからだ。
「……っ」
その馬車を見た時、アメリアは思わず息を飲んだ。その馬車は明らかに一般に流通している様な物では無く、貴族が使用する様な高級品と思われる代物だったからだ。こんな辺鄙な場所にある村にあのような高級な馬車が来る事自体、可笑しな事だからだ。しかも、アメリアの記憶が正しければ、事前の連絡等も無かった筈である。アメリアの脳裏には嫌な予感が過ぎる。
だが、そんなアメリアの様子とは裏腹に、その馬車は村の中央にある広場で止まったかと思うと、その直後、馬車の扉が勢い良く開く。
そして、その馬車の中から明らかには平民とは思えない身なりの整った一人の男性が降りて来るのだった。
もう少しだけ続きます。
【作者からのお願い】
もう少しで拙作の評価が2万ポイントに到達します。個人的に2万の大台に乗ると作者的にもかなり嬉しいのでブクマ、評価がまだという方は是非この機会によろしくお願いいたします。
(まぁ、拙作はブクマ数に対しての評価ptの割合が本当に意味不明な事になってるので、もう入れたという人が大半かもしれませんが……)