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ぐだぐだ異世界転生  作者: 猫宮蒼
四章 立場はある意味二軍落ち

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82/219

そのフラグは無効です



「えぇと、何これ」

 ホールにででんと積まれた財宝を見て、ユーリは思わず声を引きつらせていた。

「持参金だ」

「じさんきん」


 フォンセが告げた言葉を思わずオウム返し。持参金。言葉は知ってる。意味は何だっけ?

 いや知ってるはずなんだけど、脳が今理解する事を拒否してるせいでどうにも別世界のお伽話かな? と思ってしまうのが現状だ。


「嫁入り道具はこちらでは特に持つ風習はないゆえに」

「嫁入り道具、誰か嫁ぐんですか?」

「俺が、お前に」

 自らを指でさして、次にユーリを指す。


「サフィール! サフィール!! 今すぐ来てー! ちょっと頭の病気かもしれない人がー!」


 ユーリは咄嗟に叫んでいた。腹の底から声を出す。こんな大声を出したのはここ数日で一番ではないだろうか、という程に。人生で一番、とまではいかなかったがそれでも響いたその声に、近くにいた数名がなんだなんだと顔を出す。



 ――ところで既に季節は春を迎えている。

 そう、すなわち原作開始の時間軸へ突入したというわけだ。あと数日でユーリも15を迎えるし、そうなればこの世界では晴れて成人となる……のだが。


 原作開始時間軸前に色々とやらかしたからなのか、色々な所で原作とは違う変化が起きていた。


 その一つがまずこれだ。

 仲間の大量加入。


 隠れ里にあった開かずの家という名の星見の館から、王都の星見の館へ来た時点でフォンセのテンションは爆上がりしていた。

 女神が創った世界最古の遺跡――魔族の間では星見の館はそう呼ばれているらしい。そしてそこに遺跡好きな魔王が足を踏み入れたらどうなるか。

 テロスが捕獲してはいたが、それはもうキラッキラな目であちこち移動して見て回ろうとする始末。

 散歩の時に飼い主の言う事を無視してあっちこっちふらふらする犬のようだった。


 あっという間にアナトレー大陸へ到着したので、そこでパトリシアとポチは目的地に到着したも同然。

 この時セシルとパトリシアが出会い色々あった流れでパトリシアとポチが仲間入りした。

 元々パトリシアはゲームでも仲間になるキャラではあったが、仲間にする条件はいくつかの手順が必要なキャラでもあったのでセシルのおかげですんなり仲間に出来たとも言える。

 ゲームではいなかったポチの加入もセシルがいたからなのかもしれない。


 星見の館に来たついでに、サフィールが調合したポーションをシュウに持たせた。彼女のポーションは市販のやつよりも効果がある。

 オルテンシアへ戻る前にぐいっといった事で、彼の体調もほぼ完治に近い状態となった。

 そうして館経由で彼らをデュシス大陸、商業都市オルテンシアへ。


 ここで彼らとはお別れだと思っていたのだが。

 気付いたらクロフォードがまずいつの間にか館の中にいた。


 何でいるのか、と問うよりも先に彼は言った。

「ちょっと長期休暇とりすぎて時間持て余してるんだよね。暇だから何かやる事ない?」

 そう言われたので遠慮なくアイテムボックスの中に入れたまま放置状態だった魔物の解体を押し付けた。

 彼は一日解体室にこもり、ひたすら魔物を解体していた。

 返り血を浴びてなお真夏のスポーツ飲料のCMに出てきそうなレベルの爽やかな笑顔を浮かべるクロフォードに、ユーリは何も言えなかった。

 ちなみに解体はとても上手だった。

 アイテムボックス内の魔物全てを数日かけて解体してくれた事は有難いが、暇をしているからといって何故ここにやって来たのか。暇だからしばらくこっちに手を貸す、という事は言っていたが具体的にいつまでいるのかは聞いていない。


 その数日後くらいにクロフォードに連れられてシュウが来た。

「色々あって警備ではなくアカデミーの方に異動する事になったのだが、正式に勤務するまでまだ時間があってな。暇だと言ったらクロに誘われた」


 よくわからんがこき使っていいならという事でウォルスと引き合わせてダンジョンの方に突っ込んだ。

 そしてそこから三日後くらいに、カリンが来た。

「初めまして、実は折り入ってお願いがあって来ました!」

 ゲームでしか知らないし実物とはここで初めて出会ったわけだが、カリン曰くサフィールに弟子入りしたいそう。治癒魔術を専門にやっていたものの、それ以外はパッとしないし薬草調合とかもっと本格的にやるべきだったな、と思っていた矢先にサフィールのポーションをシュウから差し入れされたそうだ。


 カリンは時々自宅であるアパートに戻ったりしているが、基本はこちらでサフィールの助手をしている。

 ちなみに唐突な弟子入り志願にサフィールも困惑していたが、二日で慣れていた。順応性高い。


 ダンジョンから戻ってきたシュウがカリンの姿を見て挙動不審になっていたが、全員大体よくある事ですぐに慣れた。ちょっとここの住人順応性高すぎではないだろうか。


 ちなみにクロフォード経由でレシェも仲間入りである。もう芋づる式ではなかろうか。

 流れでアリエルも来るかと思ったが、彼女はアカデミーの授業があるので忙しいらしい。まぁ普通はそうだよなぁ、と納得したのでそこまで残念ではない。



 そして最後に。

 星見の館の中をもっと見学したい! という理由と、他の大陸にすぐ行けちゃうとかそれって色んな遺跡を見に行けるって事では!? という理由により魔王がやって来た。

 ちなみに彼は最初の段階でテロスが軽く、本当に軽く案内しただけでさっさと隠れ里に戻されたため数日は姿を見なかったのだが根性でアナトレー大陸の王都へお忍びでやって来た挙句、王都の星見の館の真ん前で出待ちしていた。


 この時は外に行こうとしたミリィが遭遇してしまい、何か知らないけどお客さん来たよ……? と中に案内してしまったので相手をする事になったのだが。


 この時点でとても趣味と実益を兼ねた理由で仲間入りしようとしてきたものの、土下座した挙句舐めろというなら靴底舐めるから! と色んな意味で必死過ぎて恐慌状態に陥ったユーリが隠れ里の方へと叩き出した。

 翌日、露天風呂行きたい! という理由で隠れ里に行こうとしたアリスがそっちで出待ちしていた魔王と遭遇。魔王様、三度星見の館へご来館である。


 それが、冒頭の出来事だった。



「そもそも何で嫁入りしようとしてんの? 魔族の結婚観どうなってんの?」

「それボクに聞かれても困るんだけど」

「いや、テロスの方が私より絶対物知りじゃん? 目の前で何かバグった感じの魔王に直接聞くよりいいかなって」

 今の魔王もれなく絶対ロクな事言わない。ユーリの勘がそう告げている。


「部下が、持参金持って嫁入りするって言えばまぁ大体いけるんじゃないっすかね、と言うものだから」

「部下の入れ知恵。それ以前にその部下大丈夫か」


 ユーリの目が軽率に死んだ。魔王の部下とか魔王城に乗り込んだ時に何度か戦った事はある。ゲームで。

 そしてその口調のキャラに心当たりがある。実際に出会う事があるならば、直接言いたい。

 もっと考えて発言しろ、と。お前の発言のせいで魔王が嫁入りとかいうわけわからん事がこんな所で繰り広げられる事になってるんだぞ!? と。


「それから別の部下が、女って大体金とか権力有れば大丈夫ですとか言うから」

「うわぁ、まぁ一部は当てはまるけど全部が全部そうってわけじゃないのに真に受けちゃったんですか……」

「ちなみにあれは個人的に集めた私財なので安心してほしい」

「いやうん、確かに国民から集めた税金ですって言われたら色んな意味で恐怖しかないけど」


 ある日いきなり見知らぬ魔族から俺たちの血税を返せ! とか言われたら恐怖でしかない。下手をすれば人間と魔族で戦争が始まりかねないのでは? 考えたら考えただけ恐怖という感情しか浮かんでこない。この魔王軽率に恐ろしい事をやらかしてくる。

 実は何気に宣戦布告を受けているのではないだろうか、と勘繰っても仕方のない事だろう。


 ちなみに三時間ぐらい粘られた結果、魔王も仲間入りする事になった。近いうちに魔王城の一番近くの星見の館を繋いだ方がいいかもしれない。魔王にも仕事あるし。




「ねぇメル」

「なんじゃ……?」


「魔王って仲間にするのにいくつかのフラグ立てなきゃいけなかったんじゃなかったっけ?」

「そうじゃな」


「それ全部すっ飛ばして仲間入りしちゃったけど」

「そうじゃな」


「むしろマチルダはなんであんな手間かけちゃったの、ってなるよねこうなると」

「ほんになぁ……」



 正直な話、ノーマルエンドを目指すにあたって勇者と魔王の協力は必要不可欠で。

 そのために二人を仲間に引き入れるのは絶対やらなければならない事で。

 それを考えるとこれからが大変だね、なんてメルと話していたはずなのだが。


 必要なフラグ全部すっ飛ばして魔王が仲間入りすれば、そりゃあお互いに遠い目をしようというものだった。

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