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他人を信頼することが人付き合いの近道だ

「疲......れた。」

やはりやる気を出すのは疲れる。

出来ることなら出したくない。

こう...もっと波風立てない生き方が良いのだ。

大きな山がある訳でもなく、その代わり谷がある訳でもない。

なだらかな人生...が...好き...

「あぁ、駄目だこりゃ。完全に死んでるよ。」

「いつも、こんな感じなんですか?」

「んー。今回は特別かな?この頃はそんなにさせたこともなかったし、そんなにやる気、長続きするタイプでもないしねぇ。まぁ、これぐらいは大目に見てやって。」

「それは、もちろん、そうなんですけど...なんか悪いことをしてしまったような気がして。今更なんですけどね...」

「あぁ、それは無いよ。絶対。アイツはやろうと思った時にしかやる気は出ないんだ。本心からそのことをやろうと思ったことに変わりはないさ。ただ、オンとオフの差が激しいだけなんだよ。」

ご飯も食べ終えたし、突っ伏していると背中に日が当たって心地いい。

いっそ、このまま、寝てしまおうか。

「みんな食べ終わったみたいなので、次は体育館に行きますよー!オリエンテーションが始まりますからねー!」

いっそ、このまま...

「佐々木君も起きる!ハイッ!」

「うるさ...うる...やめ...」

背中をチョンチョンとつつかれている感じがする。

「起きてー、ほら、起きてー、ハイッ!ハイッ‼」

「うるさーい!!!行きますよ!もう!...はぁ...」

「ふふふ。起きましたね。では、早速お楽しみのオリエンテーションに行きましょう!」

「めんどくさ...」

「あ、そんなこと言ったら駄目ですよー。先生怒っちゃうんだから。」

「ふふ、先生可愛い。」

「小日向さんまで!?先生を馬鹿にするなーー!」

ガーッと口を開けて起こる先生はなかなかシュールだった。

本人は本気で怒っているのだが、その怒りがまるで伝わってこない。

何かの動物の威嚇にそんなものがあった気がする。

何だっただろう。

まぁ...良いか。

そんなことを思いながら先生についていくことにした。


改めて、ここは敷地が広い。

山の中だからだろうか...そんなことはどうでもいい。

移動するのになぜこんなに時間がかかる...

俺の中で暴れまわる不満の塊が心の壁を破って出てきてしまう。

「やっと...ついたぁ...のかぁ?」

その建物にはツタが絡みつき、まるで廃墟を思わせる。

壁の塗料もところどころはがれている。

要するに......ボロ臭いのだ。

「さぁ、入って入って!中でみんな待ってるんだから!」

一歩踏み入れた瞬間に感じる熱気。

外観からは感じられないほどの人数がすっぽり入って、なおかつ運動ができそうなほどの馬鹿でかい広さである。

正直に言って驚いている。

オリエンテーションというからにはそれなりの運動はするのだと思っていたが、まさかここまでとは思っていなかった。

サッカー場と同じぐらいの広さはあるんじゃないか?

そんなことを思いながら俺は自分のクラスが並んでいる列の後ろに並んだ。

何をやるのかは知らないが、ヘイトを集めないようにそれなりで良いだろう。

前の教壇に中年の男性が立つ。

少しほっそりとした男性で眼鏡の中からは眼光鋭い瞳がのぞく。

「コホン。君たちと会うのは始業式に次いで二回目だが改めて自己紹介だ。日下部健次郎だ。学年主任を務めている。ご入学おめでとう。」

一言一言に威圧感のある人だ。

聞いているだけで背筋がピシッとする感じがする。

「今回、生徒諸君にはオリエンテーションに取り組んでもらうわけだが、目的を知っているのと知らないのでは話が違う。今回取り組む目的は君たちのチームワークを向上させることだ。コミュニケーションや相手を信頼すること、実力を見極めることが自分達の高校生活をより良いものにすると考えてもらっていい。」

なかなか良いことを言う先生だという印象を受けた。

しかし目力も相まってなんだか何を言われても怒られているような気がしてならない。

「君たちに取り組んでもらう競技は、『棒倒し』だ。健闘を祈る。」

それだけ言って教壇を降りた。

ん、棒倒し?


棒倒しとは、自分のチームと相手のチームのそれぞれが一本の棒を持ち、相手が持っている棒を倒せば勝ちというゲームである。

かの防衛大学の文化祭でも恒例行事として行われており、攻め守りのタイミングを決めて一気に落とすのが勝負の決め手になるため、チームワークが重要視される今回のオリエンテーションにはぴったりの競技だといえるだろう。


といった知識はあるものの、これまでそういう機会なんて一回も無かったので今回が初めてである。

走って前に行ったり後ろに下がったりしなければならないのは当然だが、ほとんどが数の力に頼るため後ろでさぼることがなかなか許されない。

ボールが来た時に防衛に回るという適当なサッカープレイで体育の授業を乗り切ってきたようなこれまでとは訳が違うのだと感じる。

悪い予感がする。


今回はトーナメント戦だった。

優勝するためには最大で三回も勝ち続けなければいけない。

なるように...なるのか...?

負けたら負けたで少し悔しい。

しかし、勝ったら三回も試合をしなくてはならない。

面倒臭そうだと思いながら目を閉じて天井を仰いでいた。

次回は棒倒し編です。

佐々木宗利達はこの試練にどう立ち向かっていくのか、立ち向かわないのか!?

まだまだ目が離せないかもしれません!

明日も18:00に投稿です!

乞うご期待!

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