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ゴミと天使

 俺はゆっくりとゴミの山の中から立ち上がり服の裾を払った後、道を歩く一人の女性と目が合った。

 まるで天使に讃えられたような顔立ち。バランスの取れた立ち姿。何事もなくただ歩いているだけで、人としての良さが現れて、事の端々に見える所作にまで天真爛漫な雰囲気が漂っている。

 小日向さん、いつ見ても美しい。


「どうも、小日向さん。新年あけましておめでとうございます」

「あ、佐々木君。あけましておめでとうございます。どうしてこんなところにいるんですか?」


 なぜこうなったか。自分でも疑問に思ってしまう。

 だがここで会えたのはまさに僥倖と言うべきか。まるで神が自分の事を見ながら全ての赤い糸を手繰っているかのようだ。


「まぁ、色々あってね。ここで会えるとは運命の導きか......」

「......? ちょっと雰囲気変わりました?」

「そんなことは無いよ。ただ少し周りの見える風景が変わったというだけでね。」


 小日向さんが何やら難しそうな顔をしたままこちらを凝視している。

 困った顔も可愛いな。ホントにどこを取っても絵になる女の子だ。嫁にしたい。小説のキャラはすぐにそう言うことまで発展できるのに俺がそうなれないのは単に日和っているからに違いない。

 なんだか今ならいける気がする。

 いや待て。

 このペースに流されてしまってはなんだかまずい気がする。こういうのはもうちょっと場所を考えてだな。


「ホントにどうかしました? 何か悪いものでも食べました?」

「いえ、そんなことはないですよ。ただ、小日向さんの可愛さに少し自我が暴れ出しそうになってしまっただけです。」

「......ホントに変ですよ。」


 そう言いながらも少し照れている小日向さん。その小日向さんが可愛いのだ。ずっとそのままでいてくれ。

 そして会えた今日という日を感謝する。


「小日向さんはなぜこんなところに?」 

「朝のドタバタが終わったので新年のあいさつに伺おうかと思ったのですが......ここで会えたので別に行く必要なかったですね。」


 あはははは、と苦笑いしている。自分はそんなことを考え付きもしなかったのになんだこの天使は。この可愛さにこの心遣い。天は二物を与えずとは誰が考えた言葉なのか。これが二物でないとすれば一体何だというのか。俺はもはやこの可愛さに限界オタクとなるしかないとでもいうのか。


「ん? どうして朝忙しかったんですか?」

「あれ? 言ってませんでしたっけ? 私の父、神社の神職なんですよ。だから新年の朝には参拝客がそれなりに来るので、それの対応に駆り出されるんです。」


 初耳である。まさか俺の知らない小日向さんのそんな一面があるとは。

 もしかしたら気品漂う立ち振る舞いもそういう所から来ているのかもしれない。新年のあいさつ回りだって子供がするのは珍しい。それに俺達は家族の付き合いということもないからここまでしないのが一般的である。

 そうか。小日向さんは神社の手伝いをしていたのか。それはなんともまぁ立派な......

 待てよ。


「つまり、小日向さん。もしかして今朝は、巫女装束だったということですか。」

「まぁ、そう言うことになりますね。」

「見たかった。とても見たかったぁ! 明日もその手伝いをしているんですか!?」

「いや、してないです。忙しいのは初日だけだしそんなに大きい神社でもないので。」

「みたかったなぁ。小日向さんの巫女服。絶対可愛いだろうなぁ。」

「恥ずかしいのでやめてください! 佐々木君、今日変ですよ!?」


 可愛い女の子の可愛い姿が見たいのは当然の事である。どこがおかしいというのか。

 来年は絶対見に行ってやる。


 しかし、小日向さんの巫女服姿が見れなかったのはとても残念である。

 だが、このことは逆に良い事でもある。来年は小日向さんの巫女服姿をみることができるかもしれない。神様はこのことも分かっていたというのか。会えただけでも感謝しないといけないのに、まさかこんなめぐりあわせまであるなんて。

 神様が縁結びの神様であったならば、百度参りしても感謝し足りないぐらいである。と言うか小日向さんの神社が近くにあったとしたら、小日向さんの巫女服姿がラッキーで見られることを期待しながらむしろ百度参らさせてもらいたいぐらいである。


「ねぇ、今日、何かおかしいですよ。いつものどんくさい佐々木君はどこに行ったんですか!?」

「褒められている気がしないのは気のせいか」

「すいません......」


 小日向さんの悲しい顔は好きではない。

 何だかこんな顔の小日向さんを見たのは初めてのような気がして、少し心に何かがつっかえた。


「いえ、気にしてないですよ。いやちょっと気にしてます」

「どっちなんですか」

「どっちもです」


 そう言って笑ったら、小日向さんが少しホッとしたような顔になった。悲しい顔よりもやはりこちらの顔の方が好きだ。

 にしても何故悲しい顔になったのだろうか。どんくさいのはもしかして誉め言葉だったのか? どんくさいから自分と笑って話してくれるのか? そう考えたら何だか自分が悲しい気持ちになった。帰ってラノベを読もう。


 あ、そうだった。うちの家には今、鬼が居るんだった。

 帰りたくない。でもこのままじゃ傑が不憫だ。このまま帰れば間違いなくあの荷物は処分されてしまうだろう。それはマズイ。自分的にも非常にマズイ。これでラノベが読めなくなるのは不味すぎる。自分で買えと言う意見は認めない!


「急用があるので本日はこれで!」

「あっ、ちょっと待ってください! 私も行きます!」

「何故ですか!」

「佐々木君からいけないオーラを感じました! 今さっきの佐々木君を二倍に濃縮したような感じです! このままだといけない気がします!」

「めんつゆみたいですね! 行きましょう!」


 流れに任せてついてくることを許してしまった。そもそもいけないオーラって何だ。そんなに顔に色々現れるタイプだろうか。

 冷静に考えてもそういうタイプだ。小日向さんのこういう時は信頼できるような気がするので別にそのままでも良いだろう。

 とりあえず今は家を目指そう!

むしろお前がそのまま行く方が駄目なんですよねぇ。

ということで何故か小日向さんも同行して新年早々全力疾走です!

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