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新年は小説とともに

「新年、明けましておめでとー!!」

「明けましておめでとうございます。」

「おめでとう。」


 日付が変わった瞬間に挨拶をする。内心はしゃぐ俺達を微笑む眼で父さんたちが見つめる。


 こたつで一家団欒というのは良いものである。現代文明に沢山の暖房器具はあれど、単体でも中毒性のあるこたつに付加価値を付け加えるばかりはおろか、熱を閉じ込めるという発想が生んだ魅惑的な物体。

 その中で一家が集まれば和やかな雰囲気にならない訳が無い。


「今年も一年、頑張っていきましょー!」

「ういうい。」

「本当に頑張る気あるの? 」

「頑張らなくて上手くいくならそれが一番良いんだけどな。」


 頑張るのは嫌いだ。できるだけ体力は使いたくない。


「ということで俺は寝る。おやすみなさい。」

「えー、もう寝るの? おにーちゃん、いっつもオールしてるじゃん。」

「今日はそういう気分なんだ。」


 俺はそう言うと足早に自室に潜り込む。常夜灯の電気をつけベッドの中に潜り込む。まとめて置いてあるラノベの本が今は俺の手の中にある。その事実が俺の心を掻き立てる。


 俺はラノベが大好きだ。ラノベに限らず、自分の心を掻き立ててくれるものが大大大大大好きだ。

 俺は面白いものが好きで、そういうものでしか自分の心は変えられないと思っている。他に俺の心を変えてくれるものがあるとすれば窮地か、もしくは小日向さんぐらいのものだ。


 俺はパラリとページをめくる。

 ライトノベルを彩る挿絵の数々が目を惹く。美男美女がさも綺麗に描かれている。その美しい絵は自分を速やかに物語の世界へと誘う。

 知らない物語、先の分からない話、余計な詮索をするよりも早くページをめくる。先が分かってはつまらない。だから俺は小説を読むときは出来るだけ色々な事を頭から排除して読むようにしているのだ。そっちの方が物語を楽しめる。

 先のページをめくるたび知らない光景が目に浮かぶ。一言一句見逃さぬように頭の中をフル回転させ、頭の中に情景を生み出す。

 まるで小説の登場人物と並んで歩いている感覚。その会話の中には混ざれなくとも、後ろからついて歩き周りの風景を見渡しているようなそんな感覚だ。


「ふつくしい......」


 これが小説の世界である。久しぶりに実感するこの感覚。一つ一つの物が現実の世界の様に見える。

 飛び交う魔法、交差する剣先、それらがわずか鼻先で音を立てているような気がする。戦場の中で交わされる熱い情熱に心を動かされる。

 または異世界を旅しているような気にもなる。その土地の食べ物、風の匂い、人々の人情、時に醜くあさましく。色々な見たことが無いものを見ることが出来る。その土地に惹かれ、それでも別れを惜しまなければならない時が来る。そしてまた新しい土地を旅するのだ。

 または、隣に名探偵が居るような気にもなる。時に常人離れしたその人間たちに俺は心を動かされる。いつもはのほほんとした人間でもひとたびその時が来れば鋭い一面を見せることもある。犯人たちの動機、狡猾なトリックに舌を巻き、それを鮮やかに暴き出す知恵者に感心する。


 俺はぱたんと本のページを閉じてベッドの傍らに本を置いた。

 窓からは朝日が覗いていた。奇しくもこれが俺の初日の出だった。

 かなり眠たくなってきた。興奮はまだ冷めないがそれでも眠気はやってくる。もともと俺は夜型ではなく朝方なのだ。だからこういうことはあまり慣れていない。徹夜をするのも一年に一回、この時だけである。

 だが、今日は少し嘘をついている。

 俺が一人で読書する時間を他人につぶされないために今日は寝ると言ってしまったのだ。

 だから俺は今寝ていることになっている。朝には初詣、それからあいさつ回り、他にもいろいろある。

 耐えなければ。

 ここが正念場だ。しょうもない。本当にしょうもない正念場だ。自分が欲を抑えきれなかった結果だ。


「しっかり......しなきゃあな。」


 その時の俺はまだ自覚していなかった。

 俺の心が再燃してきていることを。


新年あけましておめでとうございます!

元日ちょっと忙しかったので今回も少なめです......加筆するかも?


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