秋が終わりを告げれば次は冬
そんな体育祭が終わってから俺には様々な事があった。
まず初めに、俺が体育祭のリレーにの時に跳んだのを見て陸上部からの声掛けがあった。もちろん俺にそんなことが出来る訳がない。一回断ったら呆気なく帰っていった。それはそれで悲しいのだが。
もっと大変なことになっているのは傑の方だ。
「もう良いですか?」
「いや! あんなに走れる人間は他には居ない!! ぜひ、ぜひともうちの陸上部にっ!! 君なら日本一、いや......世界も夢じゃない!!」
「いやいや! サッカー部にぜひ! 君の脚力は世界でも通用する! 俺達のチームを全国に連れて行ってくれ!」
「野球部なんてどうですか!? 私達の野球部には走力が足りないんです! 私を甲子園に連れて行って下さい!」
「全国とか世界とか、そういうの良いんで。」
そう言って傑はユニフォームを着た人間たちの取り巻きから逃れてくる。
あんな風に足蹴にするのもちょっとかわいそうである。圧倒的な才能とかを見せつけられて絶望したのでやめますということになってしまわないだろうか。心配だ。
「勧誘なんてキツイわー。」
「そういえば俺達、何で部活入ってないんだろうな? ほかにすることも無いのに。」
「うーん......めんどくさいから?」
「そんな気がする。」
昔、ぐーさんに「学生生活は出来ることをしておいた方が良い。」と神妙な面持ちで言われたことがある。そのころの自分は「そんなの自由だろ」と言ったが、何もしない一年と言うのは何だか長いようで短いような気もした。
「何か部活やってみるかなぁ......」
「お! トシはやる気になったか!!」
傑は俺に合わせてくれているのだろうか。だったら何か申し訳ない気もする。入りたい部活も無いのに勢いだけでしかもこの時期から部活を選ぶなんて少し辛いんじゃないだろうか?
「いっそのこと部活でも作るか!」
「何部?」
「チート部。」
「作れるわけないだろ。」
傑が俺の下した結論に文句を垂れている。普通に考えてそんな部活作れるわけないだろうが。申請が通らない。チートを使えば申請も通ると思うがそんなことにチートを容易に用いるべきじゃない。
「あら、何か始めたいのなら、生徒会なんてのもどうかしら。やることがないなら内申点を上げるつもりでやってみても良いかもしれないわ。」
そう話しかけてきたのは新浜さんだった。
リレーの時以降、少し仲が深まったような気がする。
「生徒会なんて向いてないよ。そういうのは新浜さんがやれば良いんだ。」
「もちろん私は立候補するわよ。多分当選すると思うわ。貴方が立候補してもそうなるかは分からないけれどね。」
「お、言うねぇ。」
新浜さんが煽るようにそう言ってくる。なんだか前よりも話しやすい雰囲気になったような気がする。もとより俺だけに話しにくい雰囲気を作っていたのかもしれないが。これ以上考えるともっと悲しくなってしまう気がしたので、今は新浜さんが前より少し気を許してくれたことを素直に喜ぼう。
「生徒会のことを先輩に聞いてみたけれど、私が思っている物とはあまり違わなかったみたいよ。だとすれば生徒会は中学の時もやっていたし、そんなに杞憂するものではないわよ。」
「でも生徒会長がアレだしな。」
「どうかしたの?」
俺はなぜ生徒会長がダメなのか説明しようとしたところで思いとどまる。
あの会長は実は生徒を全員催眠して学校を意のままに操っていた悪い生徒会長なんだ!
......なんて言えるわけないだろう。
会長も今は退院して学校に復帰しているらしい。後から調べてみたところ、あの生徒会長はまだ2年らしい。この様子だともう一回ぐらいは生徒会長になるのではないかと容易に想像できる。
「いや、まぁ......生徒会には入らないよ。気を付けてね。」
「そう。まあ良いわ。」
それだけ言うと新浜さんは席に戻って行ってしまった。ちょっと寂しそうだった気もするけど......気のせいか。
「トシって、なんだかんだ言いながら女の子と結構縁があるよな。」
「その言い方は何だ。」
「いえ、別に何でもないですよ?」
傑が不貞腐れている。確かに言われてみれば縁だけはあるような気がする。
小日向さんとクリスマスに出会い、雨姫と梅雨の時期に出会い、真夏の炎天下ではユウさんと出会った。そしてそれ以外にも色々な人と縁がある。
「そう言えばもう一年にもなるのか。」
そう、小日向さんと出会ってはや一年になろうとしている。時が経つのは俺が思っているよりもずっと速いらしい。
寒さがそこまで近づいて来ていた。
次から冬です。やっと季節感追い付いた感じがします。




