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グループ行動で大事なことは喜びを分かち合うことである

11時半ぴったりに全員帰ってきた。

先生が居るカウンターの前でそのまま落ち合う。

他のグループは既に調理に取り掛かっていた。

ペース的には少し……というかかなり遅い。

原因は…自分にあるのだが…これを話題にしてはいけないようにも思った。

まずは成果発表。

「はー、1時間走りっぱなしは疲れるぜ。こんなに走ったのはあの頃以来だよなぁ、トシ。」

「あの頃を話題に出すなッ!それより成果発表だ!」

「へいへい。それに見合うだけの成果はあったぜ。牛肉、じゃがいも、白菜、後は唐辛子だな。」

「唐辛子は入れないぞ。白菜は…まぁ入れても良いや。」

というか何があるか分からないな…

「俺は玉ねぎ、大根、にんにく、しらたき、ワンタン、しめじ、食パンだな。何だその目は、」

「なんか、こう……そんだけ集めたんだったらもう少し良いのもあっただろ。使えるの玉ねぎぐらいじゃねぇのか?それ。」

うるさい、と一言。

「それで、小日向さんは?大体のものは揃ったから別に良いんだけど……?」

ここに来た時から小日向さんの元気がない。

「それが……1枚しか見つけられなかったのですが……これなんです。」

2人で小さな色紙を覗き込む。

そこに書いてあったのは、

「「タイ!?」」


「はーい!本日のアタリを引き当てたのは、彼らでーす!新入生で()()()()、なんちゃって……」

「は?」

「ヒィッ!!!そんな顔しなくても良いじゃないですか!は、早く、調理に取り掛かって下さい!」

どん、と背中を押された。

どんな顔をしていたのかは知らないが、きっと身の毛もよだつほど安らかな顔をしていたに違いない。

ただ時間が無いのも事実だ。

急いで調理場に向かい、食べ物をドサッと広げた。

「こうして改めて見ると凄い量ですね。」

「そう、だな。」

こんなにものがあれば、とりあえず食材には困らない。

作らないものもありそうだ。

……というか頑張れば普通の鍋が作れるんじゃないか?

そんな気もするがルーがあるのでやはりカレーにしよう。

そうなるとやはり使わなくても良い食材がある。

「唐辛子、しらたき、食パン、は確実にいらないな。他は入れても大丈夫……か?」

「鯛も…要りませんよね。ハハハ。」

「いや、要る。絶対要る。」

「トシにしては良い判断じゃねぇか。」

「トシにしてはってどういうことだよ。」

「冗談、冗談。」

傑は笑いながらそう言った。

小日向さんがモジモジとしている。

「あの、鯛なんて使わなくても良いんじゃないですか?もう30分弱ですよ…?」

「そのためのチートです。な?傑。」

「ん、おう。そうだな。チートは()()()()()()を出来るかもしれないに変える。まぁ、能力によるけどな。小日向さんはどんな能力なんだ?」

「時を止められます……ってえぇ!新崎さんも知ってたんですか?」

「いや、知らなかったよ。ただトシと仲良いみたいだったから薄々そう思ってただけ。トシはやる気出さなきゃ人付き合いも出来ないからね。」

「お前は一言余計なんだよ!……まぁ、そんな所です。小日向さんの能力があれば出来なくもないでしょう。」

「でも私、そんな、魚を調理した事なんか……」

「そのための俺です。やりましょう。使うのは今です!」

「じゃ、じゃあ……」

小日向さんがふぅっと息を吐く。

両手を胸の前に持ってくる。

「いきます!」

パンッ!!

手が打ち鳴らされると同時に、周りの喧騒も風の囁きも物音1つ消し去って全てが留まった静寂の世界が訪れる。

「それでは、始めましょう!」

「はいっ!」


「小日向さんは野菜を切って!ザク切りで良い!大きさは一口大!要するに気にしなくても良いって事です!」

「はい!りょ、了解しましたっ!」

さてと、

俺は目の前に立ちはだかる巨大な敵に立ちはだかった。

コイツを、捌くッ!


まず表面に触れる。

ざらついた手触り。

包丁を斜めに立てて尾から頭にかけて何度も動かす。

流石にこの大きさになると鱗も多いッ!

ガリッガリッと引っかかる。

包丁の腹を指でなぞって張り付いた鱗を落とす。

裏返して鱗を取る。

やっと終わったッ!


次に頭を落とす!

鯛の骨、異常に硬い!

この大きさにもなるとこんなにも太いものなのかッ!

全体重をかけて切り落とす。

「ッセイ!」

ドスッと頭と胴体が2つに別れた。

息をついてる場合じゃない!

肛門にかけて切り、内蔵を取り出して中を水で洗い流す。


ここで周りに喧騒が戻った。

時間の流れが早すぎるッ!思った以上だ!

「野菜は傑と手分けしてくれ!牛肉は筋を切ればもうそれで良い!鍋にブチ込んで煮込んでくれ!」

「相当追い込まれてるな…了解だ!」

傑が状況を理解する。

頭の回転が速いのはとても助かる。

ここから鯛を3枚におろす。

意識を集中させる。

骨のギリギリまで削ぐように切る。

丁寧に、けれども素早く、ギリギリを攻める。

「いったッ!」

もう片方も同じように捌く。

慎重に、機敏に。

それらを鮭の切り身のように分けたがそれでは少し大きすぎるのでそれを半分に。

後は、鍋の中に放り込むッ!

出来たッ!

「こっちも全部切り終わって鍋に入れました!」

「良かった。残り時間は?」

「15分です!」

ギリギリ全部に火が通りそうな時間だ。

グツグツと煮立ったカレー。

多少焦げ付いても仕方あるまい!

「間に合え……!」


俺達がライスにカレーを盛り付けて席に着いたのは12時ギリギリだった。

「よし、全員席に……着きましたね!各自色々な思いがあるだろうけどそれではいざ実食です!いただきます!」

「いただきます…」

目の前のカレーは具材が山ほど乗ったカレーだった。

見た目のボリュームだけなら確実に他の追随を許さない。

自分で作っておいて何だか…気が引ける。

「うん。普通に美味しいぞ。これ、」

「そうですね。普通、というか結構?美味しいですよ!佐々木くんも1口どうぞ…?」

2人が俺の表情を伺っている。

パクッと1口。

…………

「うん。なかなかだな。」

そう言って少し口元が綻ぶ。

中々、上手くいったみたいだ。

「やったぁー!」

小日向さんの顔がぱっと花が開いたように明るくなる。

こういうのはみんなが満足してこそである。

かくして、俺達のカレー作りは無事に終わりを告げたのだった。

カレー作りが無事に終了しましたが、もちろん宿泊研修がこれだけで終わるわけがありません!

次回も連続投稿!

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