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命知らずは信頼の証

「どうやってこちらの存在を傑に伝えるかだな。」

「作戦を伝えて終わりならあの時みたいに紙ヒコーキで良いのでは?」

「まだワカメ女の能力についてはっきりしていないこともあるし、確実性を高めておきたい。それに俺はワカメ女がチートを発動したところを実際には見ていないからな。」


 俺はワカメ女と紫から逃げている最中に紫につかまった。その時点では実際にワカメ女はチートを発動していなかった。結果的に空間断絶であっていたらしいが、それだけの情報では少し物足りない。

 傑が疑問に思ったことを話してくれれば何か見えてくるものがあるのかもしれない。


「やっぱり佐々木君は凄いですね......」

「そんなことは無いよ。ただ全ての人は同じじゃないってだけだ。俺には出来ないことが山ほどある。小日向さんもそれは分かってるだろ?」

「そこは素直にありがとうで良いんじゃないですか?」


 小日向さんが頬を膨らませながらむすっとした顔をしている。やっぱり俺は人の心が分かるイケメンにはなれないみたいだ。


「小日向さん。準備して。」

「は、はい。」


 俺は小さい石を拾ってポイっとそのあたりに放り投げる。山なりの軌道を描いてカラカラと音を立てる。

 敵もそのことに気が付いたみたいだがその真の理由に気が付いたのは傑だけのようだった。

 傑はジリジリと後ろに退却しながらこちらの方に歩み寄ってくる。


「よくここから投げたって分かったな。結構あの石小さかったろ。」

「まぁ、訓練の賜物ですな。」


 そんなテキトーな軽口をたたいて再会を確認しあった後、俺が欲している情報を貰う。


「その時、あの紫のやつカバンを突き抜けやがったんだ。別に手で持っても問題なかったけどな。」

「大体分かった。」

「ならよかった。アイツらも俺の動きに不信感を持ち始めたところだ。」

「というか完全に気づかれたな。」


 ワカメ女が腕を振り下ろす前に俺は叫んだ。


「小日向さん!」

「はいッ!」


 世界を静寂が支配した後、俺達は当初の予定通りある場所へと向かった。


 --------------------


「ここ、屋上ですよね。」

「そう......だよ......ハァハァ......」


 一気に走ってここまで階段を駆け上がってきた。俺の体力がここまで貧弱じゃなければこんなことになることもない。旧校舎のドアの立て付けが悪いのは予想外だった。当初の予定よりも時間が無い。


「ありがとう......小日向さん。」


 ここから先の計画は伝えていない。

 ここから先の行為を話してしまったらきっと小日向さんは自分を止めてしまうだろうと思ったからだ。

 でも話さなければいけないだろう。


「俺はここから飛び降りる。」

「......!? じ、自殺!?」

「違うって! 俺がそんなことするわけないじゃん! いや、一歩間違ったら結果的にそうなるけど。」

「やっぱり自殺じゃないですか!?」


 少し危険だ。失敗したらどうなるか分からない。

 でもこれが一番相手の拘束には簡単な方法だ。もっと工夫すれば別の方法もあるかもしれないが、そのために二度手間になるのはとても嫌だ。俺にはとても時間が無い。クラスメイトに危機が近づいているのも感づかれたくない。体育祭がおじゃんになるのはとても嫌だ。普段頑張らない俺がこれだけリレーで頑張っているんだ。だから一刻も早くもっとも簡単な方法で片付ける。


「俺は信じてるから。みんなの事。だから大丈夫。」

「......分かりました。もう何も言いません。好きなようにしてください。」


 小日向さんがむすっとした顔でぷいっとそっぽを向く。

 どうやら怒らせてしまったのかもしれない。


「でも、死んだら絶対許しません。寝覚めがとても悪くなります。だから、絶対死なないで下さい。」

「......分かった。」

「では......頑張って下さい!」


 小日向さんはニッと笑った。作り笑いだった。

 そんな作り笑いを見せられてしまったら。


「失敗なんて出来ないし、しないよ。約束する。」


 俺は屋上の欄干に手をかけた。ミシッと小さくサビた鉄が悲鳴を上げた。


「それじゃあ、ちょっと行ってくる。」

「行ってらっしゃい。」


 俺は飛び降りるように下に落ちる。

 落ち行く景色をしっかりと見据える。中腹まで来た辺りで時間停止が解けた。


「自分が取り込んだものは自由に操ることが出来るチート、借りさせてもらうぞ!」


 自分の体が消えていく。その消えた体で網を作った。とても一本一本が細いが、網の間からは砂粒一つ出ることが出来ないだろう。彼らに覆いかぶさるように上からのしかかる。ワカメ女の体を取り込みかけたところで吸収が止まる。


「紫か!?」


 紫に俺の体が吸収され始めている。だがそのことは想定済み。チートを借りるならタイマンで負けることは一番予想していなければならない。

 だから俺の目的はそこじゃない!


「俺の目的は()()()()()取り込むことじゃない! 俺はお前たちを拘束できればそれでいい!!」


 俺の体で出来た網が彼らの体を突き抜けて地面と激突する。

 土は俺の体の中に吸収されていく。俺は土の中を落ち続けた。遅れてワカメ女たちが俺の上から落ちてくる。


「傑!」

「呼ばれなくても行くっての!」


 傑が俺の体を掴んだとほぼ同時に俺の中に取り込んでいた土が一気に噴き出た。傑は噴き出た土をパンチの風圧で穴の外まで押し上げて、同時に穴の底を蹴った。俺達の体は穴の底から急浮上する。


 穴の底にはワカメ女と紫が取り残されていた。


「下手に出ようとすれば穴の外側が崩れ落ちる。警察が来るまでここからは出られない。お前たちの負けだ。」

「い、一体、何者よ! アンタ!!」

「俺はダメチーターだ。」


 そう一瞥しながら俺はぐーさんの携帯電話に電話をかけた。

 しばらくすると会場に来ていたらしいぐーさんがこの場に駆け付けた。


「お前、厄介ごとに巻き込まれ体質だな。良い性格してるよ、ホント。」


 ぐーさんは知り合いに電話を掛けながら穴を下まで一気に駆け降りる。ワカメ女の攻撃を片手間に躱すと的確に顎を殴って気絶させた。紫にはポケットから出した黒い布をかぶせる。

 ぐーさんはさも当然という風に穴の壁に足をかけて3mの深さはある穴の底から二人を抱えたまま地上まで登ってくる。


「あの人一体何者だよ。」

「俺のやる気を出すコツを教えてくれた師匠だ。どっかで武道の師範もやってるらしい。」

「アレは間違いなくバケモンだろ。」

「でも俺のダメチートが発動してないから完全に生身だよ。」

「チートじゃなくてもバケモンだ。」


 かくして俺達の長い長い戦いは終わりを告げた。

vs紫、ワカメ女これにて終了です!

でも体育祭自体はもう少しあるのでどうぞ付き合って下さい!!

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