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チーターの能力には底が無い

「あら、異能反応は合ったみたいなのに、ぼうやは異能を発動していないのね。それに見かけない女の子も居る。お嬢ちゃんも異能者なのかしら。」

「捕獲 命令 二人」

「多いに越したことはないでしょう? 何人居るのかは知らないけれど、全員捕まえてしまえば良いだけの話だわ。」


 トシの他にもう一人捕まえるつもりだったのか。トシは紫色の物体の中に取り込まれてしまった。何とかして助けなければならない。俺達の勝利条件はあのソフトボール大のアレを雨姫さんがチートを使った位置にぴったりと合わせる事。

 その時に紫に長時間触れてはいけないし、ぴったりな位置にするためには自然に誘導するだけではどうにもならない。


「俺がやらなきゃ誰がやるって話だよな。」

「良いわねぇ。私、イキってるガキを見るの、すごく好きなの。その顔がどんどん苦痛に歪んでいくのがとてもとても好きだから。」

「嫌な性格してるね、おばさん。」

「二人で良いのならぼうやは殺しても構わないわね。」


 直前に自分が言った言葉を忘れてしまったのだろうか。人数が多ければ多いほど良いと言っていたではないか。

 チーターは身勝手だ。トシに会う前の昔の自分と同じだ。こういうのを見るとダメだった自分を見てとても嫌になる。トシの言うダメチーターとは全く別の意味でダメチーターだ。


「隣に居るお嬢ちゃんはどういう関係かしら。異能者以外には興味は無いのだけれど。」

「私も......異能者です。」

「あらそうなの? てっきり隣のぼうやのガールフレンドか何かだと思っていたわ。」


 小日向さんはなぜ自分がチーターであることを言ってしまったのだろうか。いや理由は分かっている。この場から退場させられないためだ。


「異能者と言うのなら発動させてみれば良いじゃない。それとも発動できない理由でもあるのかしら。」

「相手の前で無暗にそんな能力を使うのは愚策ではありませんか?」

「それもそうねぇ。うふふ。」


 小日向さんが時止めの能力を悟られないようになれない言葉を使いながら精一杯背伸びをしている。相手に気取られないと良いがと思っていたが、多分あの表情はバレている。


「お嬢ちゃんは愚策と言ったけれど、私は遠慮なく使わせてもらうわねッ!!」


 女が大きく腕を振りかぶる。咄嗟にその動きに反応してチートを発動させる。一連の流れが飲み込めておらず戸惑っている小日向さんをかばいながら地面に倒れ込むように伏せた。俺の頭上を何かが掠めて通り過ぎ去って行った。


「相変わらずそこのぼうやは速いわね。」

「今さっきの、殺す気だったろ。」

「そんなことないわよ。少し減らず口を叩きなおしてやろうとおもっただけ。それに生きていればどんな形でもいいもの。そんなに簡単に人間死んだりしないわ。」


 あの攻撃の場所から察するに、小日向さんの左足の付け根の部分だった。足一本取れば常人なら痛みでショック死することもある。それで耐えても手当てが遅れれば必ず失血死する。治す方法はあるのだろうが、無茶だ。

 俺は相手に悟られないように小声でつぶやいた。


「小日向さんは機会を見て逃げるんだ。あとは俺が何とかする。」

「え、でも......」

「あとは俺が何とかする。こういうのは俺の仕事だ。小日向さんは自分に注意を引かせることで俺をもっと戦いやすくしたいのかもしれないけれど、そこも何とかする。それが俺の役割だ。小日向ちゃんの役割はもっと別のところにある。」


 トシは参謀、俺は斥候なら小日向ちゃんは最後の決め手。最後の一押しは取っておかなければいけない。俺にはその程度の考えしかないけれど、小日向さんはここで働くべき人ではないことは分かる。


「俺が立ち上がったら後ろに逃げるんだ。」

「分かった。」


 俺は少しタイミングを刻んですっくと立ちあがる。小日向さんが走り出したのを確認して前に向き直る。

 タイミングを同じくして紫が触手を一直線に小日向さんに伸ばした。俺は全身の筋肉をフルに活用し、背筋をしならせるようにして打ち出した最高速の手刀で触手を断ち切った。


「お前の能力、吸い込むのに少し時間がかかるだろ。吸い込まれる前に切ってしまえばいい。」

「理論 可能 現実 不可能」

「実際できてるだろうが。」


 紫色の声が少し震えているように聞こえた。


「こっちも本気で行くぞ!」

「あら、これよりも上があるの? 楽しめそうね。」

「当たり前だ! これでもチーターだぞ!」


 息をゆっくりと整え、やってくる痛みに耐えるため歯を食いしばる。


「phase3『怪物狩り(スレイヤー)』。」


 全身の筋肉が膨れ上がり皮膚を破る。皮膚を再生させては増強を繰り返し、血を噴き出している傷口を新しい皮膚で塞ぐ。頭の中をかき乱す痛みに耐えながら骨格を変形させると、俺の視点が少しだけ高くなる。俺と同程度の身長だった女を見下ろす。


「ぼうや、って感じじゃないわね。」

「楽しませる暇なく終わらせてやる。」


 落ちていた小石を広い全力で投擲する。その小石は女の顔のすぐ横を通って消えていった。


「どこを狙っているのかしら。」

「速すぎて何も見えなかったのか?」

「通信機」

「......なかなかやるじゃない。」


 俺は女の耳飾りを壊した。女がソレに向かって話しているのを何度か見かけたからだ。正確に言えばどこに向かって話しているのかは分からないがそのまま顔も動かさず口をパクパクとさせていた時があったから壊してみたのだ。どうやら判断は正しかったみたいだ。こういう勘はトシより当たる気がする。


「さっさと終わらせる。」

「殺す気で行くわよ。K9」

「殺害」


 その瞬間、無数の触手がはじき出された。触手を素早く撃ち落とすと地面スレスレを這うように駆ける。途中飛んできた空間の断絶を体を捻りながら跳躍して速度を落とすことなく乗り越える。地面の中に足をめり込ませながらさらに加速する。


「オラッ!オラッ!!食らいやがれ!!」


 空間の断絶による連撃は非常に厄介だ。攻撃は見えないし、感じ取ることしかできない。フェイントに気づけなければ即アウト。多少のかすり傷が増えるのは全く問題ではないが、腕一本持っていかれるのは流石にマズイ。部位欠損は治せない。

 空間の断絶は肉による強靭さをいとも簡単に貫通する。空中に血が浮いている。傷が出来て血が噴き出した瞬間に体はその場からいなくなる。だから血だけが空中に浮かんだまま遅れてポタポタと地に落ちる。


「『熊狩り(ベアスレイ)』!!」


 女の攻撃が止まった瞬間に触手を全て弾き飛ばす。攻撃の間隙を縫うように体をよじって紫の入ったバッグを目指す。

 バッグが目と鼻の先に迫り、思わず気が抜けてしまった。


「何時から私が手を振った場所にしか空間を切り取れないと思っていたの?」


 危機感を感じて勢いを止めようとするが、勢いの付いた体はそう簡単には止まらない。自分の伸ばした手が断絶した空間の中に飲み込まれていく。急いで引っ込めるが指先が少し空間に切り取られた。


「クソッ!」

「だから言ったじゃない。イキってるガキの顔が苦痛に歪むのが好きだって。」


 指先から少しだけ血が垂れる。

 この女の能力、一体どういうもの何だ!?

相変わらずのイケメンムーブですね。そして強キャラはやはり強キャラと言ったところでしょうか。ワカメ女はまだ何を隠しているのでしょうか。そして12月に入ろうとしているにもかかわらずまだ続いている体育祭を作者は綺麗に終わらせることが出来るのでしょうか!?

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